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魔法世界の解説者・完全版  作者: ウッド
隻腕の龍戦士編
30/36

1話 「始動!隻腕の龍戦士」

ここは中央大陸中部地方ピアツェンツェア王国の中部にある「地龍王の山」の麓のスカンディッチ伯爵領。


やたらと「中」が並ぶが本当の事なので仕方ない

まあ要するに世界のど真ん中の国のど真ん中の場所だと思って下さい。


実際の中央大陸の位置は赤道より北方20度に位置しているので気候的には東北地方は盛岡市に近く夏はめちゃくちゃ暑くなる時もあれば冬はドカ雪が降る時もある四季の移り変わりを強制的に味わえる自然豊かな領である。


夏と冬は厳しいがその代わり春と秋には文字通り山で山ほどの山菜が取れまくる控え目に言って食の面では最高の土地なのです、ただ海まで遠いのが難点です。


そしてこの領は東方への交通の要所として栄えていて主な産業は農業と林業の長閑な地域だ。


しかし長閑な田舎の領の割には人口密度に全然合っていない新しく立派な建物が立ち並んでいる王都規模の建坪率を誇る不思議な領都を持っている。


これは過去に高出力女神ビームで街が全壊したので地龍達が本気で街の復興したらやり過ぎた為である。

「まてお前達!これはデカすぎるぞ!」

ようやく街の異常性にスカンデイッチ伯爵が気が付いた時は遅かった。


「意味が分からん!」と思った貴方はぜひ前章をお読み下さい(熱い宣伝)

最終話の結末が旧作品とは全然違いますですので。


そんな感じなので住宅の7割が空き家なので、「お好きな家に勝手に住んでね」状態で家賃が無料なので最近は移民もチラホラと来る様になった。


中心の領都からは西、東、南に向かう街道があり宿場町が広がる、北には中規模の山々が連なる人類最大規模の禁足地「地龍王の山」がある。


実はこの領都はその地龍達の前哨基地も兼ねており半数の住民が地龍が人間に化けた者達なのだ。


そして地龍王ゆかりの土地でありながら何故か天龍王を奉る「天龍教」が盛んな領でもある。

ここの地龍達は天龍を異常な程に熱狂的に奉るのだ。


奉られる当の天龍が街に来ると熱烈な歓迎を受けて困惑して挙動不審になるまでが恒例行事である。


「なんかおっかないからあんまり行きたくないです」

前に初めてスカンデイッチ伯爵領都へ来た天朱龍ニームの感想だ。

分かり易く言えば、この街は龍種のアイドルである天龍ファンの巣窟なのだ。


なぜ天龍が龍種のアイドルなのか理由を書くと長くなるので、これも前章を読んで下さいね。


王家の干渉は一切許さない。との建前だったが最近は王家との関係も良好で王妃ファニーがちょくちょくとスカンデイッチ伯爵領へ視察にやって来る。


王妃ファニーのお目当ては大通りから少し外れた小道にあるスカンディッチ伯爵領一番大きな鍛冶屋「トムソン鍛冶店」だ、今日も半年ぶり訪れている。


・・・・・と言うか、なぜこの鍛冶屋には「大型の滑走路」が有るのだろうか?

もしや・・・これは飛空挺か?!ファンタジーお約束の「隠された飛空挺」が有るのか?!

と思ったら「ロケットブースター」の発射用との事だ、うん!意味分からんね!


しかし侮るなかれ!1000年ほど前にこの滑走路から射出された、とある子供のエルフを乗せたロケットブースターが5000km先に有る「天空城」にブッ刺さり地龍王が天龍王に直接謝罪した繋がりで新たなグリフォンの魔王が誕生した伝説が残る由緒正しき滑走路なのだ!


うん!ネタが多すぎていよいよ訳が分からないね!

マジで訳が分からないので話しを本編へと戻そう。

どうしても気になる人は龍騎士イリスを読もう!(熱い宣伝)


王妃ファニーが出迎えた少女に抱きつく。

「シーナぁ久しぶりぃいいい、もう!こんなに可愛く大きくなってしまってぇええ」


「おっお母様、お久しぶりですぅ」


黒髪少女を抱きしめてウリウリウリと頬擦りする王妃ファニー、少女は少し困り顔だが嬉しそうだ。


少女の名前はシーナ、年齢は13歳、王妃と同じ黒髪で青い左目と薄緑色の右目を持つ父親似の大きな瞳がとても可愛いらしい元ピアツェンツェア王国の「元王女」だ。


色々な事情があって今はスカンディッチ伯爵領で平民として暮らしている。

この国の第一王女として産まれたが佞臣達の奸計により王城より放逐され現在に至る。


元凶の佞臣は一掃されたのだが本人の希望でここで平民として過ごしている。

他にもシーナは色々様々な奇想天外な秘密を持つが追々話して行こう。


「それで?シーナはいつ王城に娘として戻ってくれるのかしら?」

シーナを自分の膝に乗せて髪を撫でながら王妃ファニーが本題を切り出す。


「お母様、私は王城には行きませんよ?ここでやる事が沢山ありますから」

王妃に髪を撫でられて気持ち良さそうに目を瞑りながらシーナが答える。


「ぶー」王妃ファニーは不満気だがシーナの髪を撫でるのはやめない。


「まあ今は誰も王城に近寄らん方が良かろうな、王城周辺は少々きな臭い様子ではないか?」

と言うのは店主トムソンこと地琰龍ノイミュンスターだ。


「あら、やっぱり耳がお早いですわね、・・・わたくし共も困っておりますの」

ファニーの表情が少し曇る。


「お母様何かあったのですか?」


「ゴルド王国より使節団が来ておるのじゃ、ピアツェンツェア王国と同盟を結びたいとな」


するとシーナは少し考えて「あまり良い話しじゃないですね、ヴィグル帝国と同盟を結んでいるピアツェンツェア国にはとても迷惑な話しですね」と答えると。


「シーナぁ!なんて賢い!」

ぎゅうううとシーナを抱きしめる王妃ファニー、テヘヘと照れるシーナだった。


「まあ確かにゴルド王国の狙いはそこじゃろうな。

ヴィグルとゴルドと両方ともに同盟を結べばピアツェンツェアはゴラド対ヴィグルの戦いには参加出来んからのぅ」


現在西の大陸ではゴラド王国とヴィグル帝国の戦争が激化している。

自国の北方の国土の全てを北の大陸から侵攻して来た魔族軍に制圧された今のゴラド国は窮地だ。


ここはピアツェンツェア国とは同盟を結んでおきたいだろう。

しかし表向きはゴルド王国に笑顔で接しているピアツェンツェア国王だが内心はゴラド国王事を全然信用して居ない。


理由はゴルド王国の国王の人柄が歴代最高クラスに悪いからだ。


元々、独裁侵略思想の国家なのであまり良い国王は排出されていなかったが現在の国王は良い点が全くない史上最低の国王と言われている


そもそもヴィグル帝国との戦争もゴラド国王の私欲から始まった戦争で、ピアツェンツェア王国がヴィグル側で参戦する事はあっても逆は無い。


そもそも同盟を願いに来た国に屁理屈を並べて1ヶ月も呼んでもいない使節団が王城に居座るのも酷い話しだ。

その為に王妃ファニーのスカンディッチ視察も1ヶ月遅れたのだ。


「これ以上おかしな真似をすると天龍が出て来ると言うに愚かな奴等じゃ」


最近の魔族軍とゴルド王国の動きに合わせて天龍はかなり活発な動きを見せている。

いつゴルド王国に対して天龍が出撃して来ても不思議でない。


ゴルド王国のある西の大陸には天龍の拠点の「天空城」がある、世界の秩序を乱すなら天龍達は容赦しないだろう。


「ユグドラシル様はどう思いますかのぅ?」


ノイミュンスターがシーナに話し掛けると、シーナは目を瞑り少しして目を開けた、表層人格がシーナと同一存在のユグドラシルに変わったらしい。


「ゴラド王国の狙いは地龍達をヴィグルにぶつける事だと思います。

王城に長く留まっているのは何かの工作の為の気がします。

例えばヴィグル兵士に化けたゴラド兵士が地竜狩りをやるとか・・・」

とユグドラシルが答えると、


「こっちのシーナもとても賢いですわ!」

王妃ファニーは、ユグドラシルの頭にウリウリウリウリウリと頬擦りする。

「おっ・・・おかーさん」表情は乏しいが頬が少し赤くなるユグドラシル。


「まぁそこら辺はわたくし共もしっかりと監視してますわ。

彼らには精々毎晩行われているパーティを楽しんで頂き適当な所で帰って頂きます」


「おかーさんやラーナを狙って来るかも知れないから気をつけてね」


「はい、分かっております」優しくユグドラシルの髪を撫でる王妃ファニー。

王妃ファニーもユグドラシルの事を知る1人である。


今までのシーナがユグドラシルだったと聞いた時も「それがどうしましたか?わたくしの子である事に変わりありません」と普通に言い切ったのだ。

溢れる母性愛を持つファニーは、むしろもう1人娘が増えたと喜んだのだ。


ユグドラシルは嬉しいと思ったと同時に娘となった樹龍のアリーセの事を伝えるのは躊躇してしまった・・・

このとても強い母性愛を持つおかーさんに孫の事を伝えたら大変な事になるのでは?と。


まぁ、この懸念は後日大当たりして国や側妃達を巻き込んだお祭り騒ぎが発生するのだが。


ちなみにユグドラシルの同一存在のシーナは自分の事をママ、ママと言ってくっ付いて来るアリーセの事を可愛い妹だと思っている。


アリーセは時折り性格が変わる母親の事を特に不審に思ってないし気にもしていない。

流石は細かい事は気にしない地龍である。


アリーセは現在龍都(地龍の都)に有る学校に通っていて立派な地龍になるために頑張っている。

勉強はまだ掛かり人間社会に出て来れるのはまだ先の話しだ。

将来、大人になりヴィグル帝国の皇后になったアリーセが世界の国々を巻き込んだ、とんでもない大騒ぎを起こすのだがそれはまだまだ未来の話し。


話しをユグドラシルに戻すと先程のノイミュンスターのユグドラシルへの質問は王妃ファニーを前にすると恥ずかしがって出て来ないユグドラシルをファニーに会わせる為だった。


ノイミュンスターも優しいお爺ちゃんなのだ。

しかしこの優しい時間が長く続かないのも今の世界だ。


「とりあえず同盟は断りますがゴルド王国とヴィグル帝国の戦争にピアツェンツェア王国に在籍している冒険者達の契約参戦は認める譲歩案を出す予定です。

わたくしには冒険者がどちら側に付くのか?は全く解りませんが」

そう言ってニコリと笑う王妃ファニー。


ゴラド王国側に付く冒険者は少数派だ、冒険者の大半はヴィグル帝国側に付くだろうとの予想だ。


ここで表層人格がユグドラシルから変わったシーナは考える「冒険者の契約参戦か・・・」と心の中で呟く。


「今はリールとニームがおらんからな、くれぐれも無理するでないぞ」

ノイミュンスターはファニーを諫める。

気に入った人間にはとにかく優しいノイミュンスターだった。


「はい、重々承知しております」ファニーも笑顔でそれに答える。


現在西の大陸にて不穏な空気が流れているので天龍は主力を天空城に集めて警戒している。


佞臣が駆逐され警護対象の王女ラーナの身の危険度が下がり更に地龍の援護が期待できるのでピアツェンツェア王国王城からかなりの戦力を引き上げている。


現在王城にいるのは天龍レンヌを指揮官に若い天龍が2名配属され天舞龍リールと天朱龍ニームは天空城に詰めている。


少々の不安があるが狸宰相エヴァリストが中心になって防御をガチガチに固めているから心配ないだろう。

だがそれでも王妃をスカンディッチ伯爵領に視察で送り地龍との繋がりを更に強化しようとする所はやはり狸宰相だ。


「ふふふふ・・・冒険者の契約参戦かぁ」良からぬ企みをするシーナだった。


王妃ファニーのスカンディッチ伯爵領の視察は結局は丸々1ヶ月に及んだ。

表向きには東方地域の諸国に動きがあるとの理由だか本当の所は、ヤニック国王が胡散臭い使節団と王妃ファニーの必要以上の接触を嫌ったからだ。


ラーナは去年から王立学園の寄宿舎にいるから安心だった。

専属の侍女として天龍レンヌが同行してるので王城より安全とも言える。


のらりくらりと同盟の話しを躱しその癖に工作が出来ない様に連日連夜の歓迎パーティと言う名の拘束に業を煮やした使節団は捨てセリフと悪態をついて帰って言った。


中途半端な味方は敵よりがタチが悪い。


ここでピアツェンツェア王国国王ヤニックはゴルド王国と突如国交断絶を宣言して同盟国のヴィグル帝国側での参戦を発表する。


これによりゴルド王国は魔族軍、ヴィグル帝国、ピアツェンツェア王国の三方面から攻撃を受ける事となり国家滅亡の道を走る事になる


エヴァリスト宰相と王妃ファニーの影に隠れて目立たないヤニック国王。


だが彼の真の姿は思考加速を持つ疾風迅雷の戦略家だ。

参戦決意をすると即断、翌日には使節団がまだ到着する前にゴルド王国に宣戦布告した。


これも内部不和を引き起こさせる戦術だ、「1ヶ月も使節団は何をしていたのだ?!」と誰もが使節団に対して不審に思うだろう。


その上で密かに展開させていた軍団に大陸西側の全ての港を完全に封鎖してゴルド王国への情報、物資、人材の流れを封殺した。


この動きはここ最近、中央大陸からの貿易や援助に依存していたゴルド王国には致命の一撃に等しかった。


戦う事なくピアツェンツェア王国に敗北必至に追い込まれたゴルド王国。

突然裏切られて自国の北方地方を制圧して来た魔族に続きピアツェンツェア王国国王の力量を見誤ったゴルド王国は痛恨の一撃を受けるのだった。



対ゴルド王国開戦宣言の同日、スカンディッチ伯爵領官邸。



「はははは、相変わらずヤニック陛下は動き出したら動きが早いですなあ、正に疾風迅雷ですなあ」国王ヤニックの戦略に心底感心した様子のスカンディッチ伯爵が笑う。


「わたくしには陛下から何のお話しもありませんでしたわ!!」

今回の事を何も知らされていなかった王妃ファニーは不満タラタラで憤慨している。

ヤニック国王から王妃ファニーには何の相談も無かったらしい。


「しかしファニーも知らなんだとはな。

「敵を欺くには先ず味方から」を見事に実践したのぅ、これは我にも見抜けなんだ」


ワハハハハと快活に笑うノイミュンスター、地龍も出し抜いた国王ヤニックの戦略が実に愉快な様子だ。


「天龍と地龍も欺いた戦略はお見事ですな」

今回のピアツェンツェア王国のゴルド王国への宣戦布告と海上封鎖は天龍も予期していなかったのだ。


ここまでスムーズに海上封鎖が成功したのは、ほぼ間違い無く海龍王アメリアが介入しているからだろう。


「うむ、ゴルド王国もファニーとラーナが王城不在の時によもや宣戦布告をしてくるとはそんな愚策をして来るとは誰も思わんかっただろうて」


スカンディッチ視察中の王妃ファニーや王立学園にいる王女ラーナが攫われて人質になる可能性があるので通常の場合は他国への宣戦布告は王妃と王女が帰城してから行われる。


しかしラーナは天龍にファニーは地龍に守られている現状でそんな懸念は不要・・・と言うより王城より遥かに安全な場所に居るので国王ヤニックは思いきった事が出来たのだ。


実際に王立学園の近くで100名程の不審な一団が潜伏していたが天龍レンヌに一掃されている。


湖が有る森の中で気絶している不審者達を見て・・・


「何で不審者は必ずこの森に潜むのかしら?ここは不審者ホイホイ?」


「う!!そうだな・・・」


レンヌと元スペクターのオーバンがすったもんだとした森で不審者を逮捕したレンヌが呟くとバツが悪そうに苦笑いするオーバン。


最近、謹慎期間を終えたオーバンはレンヌの手伝いをしている。

二人共、着実に愛を深めている様子で何よりです。


そしてファニーを誘拐しようと地龍王の山に潜んでいた、なんとか伯爵と私兵は行方不明だ。


その250名の愚か者達は今、龍都に連行されて周囲を200名の地龍の龍戦士に囲まれて地龍王クライルスハイムが直々に尋問中だろう。これは怖い!


なので国王ヤニックの一連の戦略には穴は無く完璧な戦略と言えた。


「今回の事はエヴァリストは知っておったのかのぅ?」


「恐らくはヤニック陛下の独断でしょうな、宰相閣下は北方軍の統括をしてましたから」


「ほほう、その事でゴルドの連中は完全に油断してしまっていた訳か・・・

自分達の目の前で神虎が牙を向いて唸っておったのになあ」


「神虎」・・・地龍達は国王ヤニックの事をそう評している。


ヤニックは「超思考加速」と言うぶっ壊れチート能力を使い、20以上の極大魔法を同時発動させる事が出来る大魔導師だった。

真正面から地琰龍ノイミュンスターとも戦えたであろう人類最強クラスの「勇者」の1人だったのだ。


その事が全く人間社会に認知されていないのは彼が戦っていたのは魔族の最上位の「スペクター」と呼ばれた連中と先代の魔王で、北の大陸の奥深い場所で戦いが行われたせいだ。


その戦いはヤニックや他の勇者達が勝利して今の魔族は相当弱体化している。


ただし勇者達の損害も甚大でヤニック自身も全力で戦う事が出来なくなった、その勇者弱体化が西の大陸での今回の大戦に繋がった最大の理由でもある。


しかし「超思考加速」健在なので緻密な計算の元に今回の作戦を考え出した。

もとよりゴルド王国の狂王如きがかなう相手ではなかったのだ。


ちなみに彼の娘のシーナとラーナにも彼の「思考加速」の能力が受け継がれたのだが、2人の能力は、それぞれ龍王からの加護で人間固有の特殊能力は消滅してしまった。


「神虎?ですか?陛下が?」不思議そうに首を傾げる王妃ファニー。


彼女がヤニック国王と会ったのは、北の大陸での黙示録戦争後でヤニックが力の大半を失った後の話しだ

人類の歴史から隠された黙示録戦争「人魔大戦」を知る者は少ない。


「まあ・・・全てがもう終わった話しじゃ、気にするでない。

夫である国王が頼りになる男だと思っておれば良い」


「はあ?そうなんですね?」不思議そうに首を傾げるファニー





同時刻、スカンディッチ領都に有る冒険者ギルドにて。





「ええ?!ヴィグル帝国に冒険者として戦争に契約参戦したいですって?!」

シーナが突然、今回の戦争参加を表明するのだからメチャクチャ驚いた地龍のエレンが絶叫してしまった。


「はい!」

シーナの顔に冗談言ってる気配は無い。

とても真剣な表情だ。そのシーナの顔を見てエレンも背筋を伸ばして真剣に質問を始める。


「本気なのね?」エレンは再度シーナの意図を確認する。


「はい!このままだと私に伸び代は無いと思うんです!

このままだと龍戦士には絶対に届きません!実際の戦場に出ないと私はただの武芸者として終わります・・・なので今回参戦します!」


「はあ・・・わかったわ・・・なら私も一緒に参戦します」

仕方なしと言ったエレン、シーナの護衛でもあるエレンもシーナについて参戦する事にした。


人間だったら論外の話しだが地龍の価値感で「戦いを決意した者を止める事はしない」のだ。

どうせ言っても聞く事がないのだから、心配して止めるくらいならいっその事一緒に戦場に赴いた方が良い。


「はい!よろしくお願いします!」自分の考えを受け入れられて嬉しそうなシーナ。


「じゃあ俺も参戦するわ、俺もここで平和ボケしてる場合じゃないからな」

修行に余念が無い地龍のガイエスブルクもやはり安全な場所での修行に限界を感じていたのだ。


余りにもアッサリと決まった3人の参戦に呆気に取られるオーバン。

しかし地龍達と一緒に過ごしてだんだんと彼等の事が分かって来たオーバンはこれが地龍の生き様だと理解する。


「残念ですが私はこの街を離れる事は出来ないのでここで皆さんの武運を祈ります」


「ありがとうございます!オーバンさん!」


ちなみにマッテオはアスティ公爵家再興の為に王都で活動中でここ最近はずっと不在だ。


「それでは手向けとして今回は「幻夢のパーティ」としての契約参戦にします、移動の面でかなり優遇されると思いますよ」


「はい!ありがとうございます!」


国内でSランク冒険者のオーバンの名前は捨てた物では無い

その彼がリーダーのパーティ「幻夢」での参戦だと入国や向こうでの配備先などの優遇はされるであろう。


話し合いの結果、王妃ファニーが帰城した次の日にシーナ達の出発が決まった。

親馬鹿で心配症の彼女に娘が参戦する事を知られると、とんでもない大騒動になると確信したからだ。


10日後、王城内の安全を伝える使者と護衛の騎士団が到着して王妃ファニーがお城へ帰る朝が来た。


さすがにシーナ以外の自分の子供達である王女ラーナと王子ロミオが心配なファニーは珍しくぐずる事なく速やかに帰城する事にした。


「じゃあまた来るわねシーナ!」


「はい!お母様!」


ぎゅうううとシーナを5分間ほど抱きしめて王妃ファニーはスカンディッチから王都へ帰城して行った。

護衛団が見えなくなるまで手を振って見送るシーナ。


「でもシーナって王妃似なんだな」シーナの顔をじっと見るガイエスブルク


「え?そうですか?」


「うん顔も性格もそっくりだな。シーナは母親似だよ」


「えへへへ」ガイエスブルクの指摘に照れ笑いのシーナ。


『違いますぅ!シーナは私に似ているんですぅ!』

どこからかヤキモチを焼いた不貞腐れた声が聞こえた気もするが気のせいだろう。


明日はヴィグル帝国へ向けて旅の出発だ!既に旅の準備は終わっている。


ノイミュンスターに参戦の事を伝えると、

「そうか頑張るのじゃぞ」と地龍らしく超アッサリだった。

地龍に言葉の駆け引きなど必要ないのだ、大体のでは事は・・・


出発前に張り切る3人に「良いな?移動許可証だけは忘れるでないぞ」とシーナ達に原子爆弾を投下したノイミュンスター。


ピキーン、・・・エレンが完全に止まった?!

「大変!移動申請を忘れていたーー!!」・・・・・出発中止の決定である。


「何しとんのじゃ?お主は、ほれ、とっとと本国に行って移動申請してこんか」

エレンのド忘れに心の底から呆れたノイミュンスターだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「うう・・・ごめん、ホントごめんなさい」トボトボと山道を歩くシーナ達一行。


冒険者としての手続きは全て終わったが地龍としての移動の手続きを完全に忘れていたエレン。

龍種が他の龍種の領域に入る際は絶対に事前に書類手続きをして許可を得ないといけない。

龍種は書類と申請にはうるさいのだ。


この場合必要なのは天龍と海龍への移動許可証だ。


本国の総務課へ出国申請して天龍と海龍へ入国許可の手続き→天龍と海龍が受けた入国申請の審査→入国OKなら許可証の発行の流れだ、この手続きだけで最短でも最低10日はかかる。


海に住む海龍が書類審査?と思われるでしょうが海龍の入管管理局は地上にある。

大陸から大陸までが船を使っての移動になるので海龍の許可も必要と言う訳だ。


ちなみに天を飛んで西の大陸から中央大陸に来ている天龍達もちゃんと事前に海龍に上空通過の許可申請をしている。

龍種は書類には本当にうるさいのだ。


天龍と海龍がしっかりやっている事なので地龍もちゃんとやらないいけない。

しかし、この移動申請手続きがあるからこそノイミュンスターがピアツェンツア王城に天龍達が居る事を把握出来ていたのだ。


この様に龍種間の連携を取る上でもかなり大事な制度なのだ。

これを疎かには絶対に出来ないシーナ達、幻夢達は出発をあきらめ龍都へ手続きに向かう。


仮にもし申請せず西の大陸に向かうとどうなるか?

その事で天龍や海龍に捕らえられるとかは無いが一切の支援は受けられない。

例えば魔族に捕まり洗脳される事態になっても救出作戦の開始は間違い無く遅くなる。


その様な枠組みから外れた者は「はぐれ者」とされ魔族の優先拉致標的になっている。

自然に竜種から龍種になる者は世界各地の入管管理局の職員達が日々全世界を捜索して保護を行っている。

入管管理局は大変な仕事なのだ


「「んー?そうですねぇ・・・

シーナ様達の場合は年間パスポートの取得がお勧めです」」

シーナ達の申請書類を見て総務課の職員である女性地龍が申請内容を指摘する。


頻繁に各龍種の領域を行き来する場合は毎回の申請が不要になる、仮に帰国となってもスムーズには帰国出来ないのでこの年間パスポートの方が有効なのだ。


これは世界中を飛び回る天舞龍リールも使用している。

手続きには1か月ほど掛かるが何かと便利で次の年度更新も簡略化される。

ヴィグル帝国への出発が1か月後に延期になった瞬間だった・・・


「もう・・・本当にごめんなさい」これにはさすがに凹むエレン。


「しっ仕方ないですよぉ!そもそも私達が自分の事なのに自分でちゃんとしてなかったのが原因なんですから!」必死のフォローのシーナ。


「全くその通りで返す言葉も無い、ごめんエレンお姉さん」

申請の事を知っていたのに流石に自分の馬鹿さ加減に落ち込むガイエスブルク。

その通り!全員が悪いのだ皆さんも行政の手続きは忘れずに!


思わぬ足止めを自分達自らのせいでしてしまったがシーナは少し浮かれていた。


「アリーセちゃん元気かな?」


せっかく龍都に来たのだから樹龍アリーセに会いに学校に向けて歩く一行。


アリーセが居る学校は龍都中心部から南にある森林地帯だ。


龍都が地下都市と言っても、全てが完全な地下と言う訳でも無く巨大な渓谷の下にある巨大な洞窟内部に都市があると思って良い。

龍都の南の地域は地上の渓谷部なので学校周辺は深い森林地帯が広がっている。


その森林地帯の真ん中に高さ50m面積10㎢の学校がある。

高さ50m面積10㎢の建造物とは少し想像するのが難しいと思うがとにかくナニコレ?!デカッ??!!と思って欲しい。


さすがの龍都でもこれ以上の建造物は王宮しかない、それでも地龍基準で2階建てだと言うのだから地龍の体の大きさが解ると思う。


「ママ!ママ!ママー!!」建物の中から人化したアリーセが駆けてくる。


8歳くらいの深い緑色大きな目が可愛らしい女の子。

ユグドラシルの眷属らしく色白な肌に緑色の長い髪に緑色の瞳は上位精霊の「ドライアド」にも見える。


「アリーセ!久しぶりですね!」娘と会うこの時ばかりは表層人格にはユグドラシルが出てくる。


ユグドラシルはアリーセをヒシッと抱きしめて頬にキスをする。


「ママー!ママー!ビエエエエンン!!」

アリーセは久しぶりに母に会えた事に嬉しくて大泣きしている。


エレンとガイエスブルクは邪魔をしない様に少し離れて2人を見ている。


お互いに少し落ち着き「お勉強はどう?進んでいますか?」優しく頭を撫でながらアリーセの近況を聞くユグドラシル。


「あい!今は魔法のおべんきょうしてます!」まだまだ舌足らずな所も可愛らしいアリーセ。


「今日から1か月くらい一緒にいられますよ」


「ほんとですか?!」パアアーと満面の笑顔になるアリーセ。


幻夢の一行はこの学園に居座る気で満々なのだ。

1か月ここに留まりアリーセを構い倒してから直接ヴィグルへ出発予定だ。



「覚えた魔法見せてくれますか?」ワクワクしながら催促するユグドラシル、娘の成長を早く見たくて仕方ない様子だ。


「あい!」

アリーセはヌン!と手を小さな木にかざして「じゅせいじん」と呟くと木がスルスルスルと3mほど伸びた!


「おお!凄い!」思わず声を出すガイエスブルク。


「素晴らしいです!アリーセ」両手を合わせて大喜びのユグドラシル。


「へへへ」ユグドラシルに褒められて嬉しいアリーセがユグドラシルにしがみつく。


「いやこれ本当に凄いわ、さすが樹龍だな」


「創造の魔法でしょ?今の?」


簡単に木を成長させたアリーセに驚くエレンとガイエスブルクの2人。

今のは植物の成長を促したのでは無くて成長した木を作り出したのだ。


力が増せば何も無い荒地に森林を作り出す事も可能になる。

かつてのユグドラシルと同じ事をアリーセはやったのだ。


「偉い偉い良く頑張りましたね」アリーセの頭を撫でるユグドラシル。

自分の力を受け継いでくれた娘が可愛いくて仕方ない様子のユグドラシル、おそらく「樹創世陣」の魔法を使える者は世界にも10人もいないだろう。


「それがアリーセの母親なのか?」


いきなり後ろから声が聞こえる、見ると進化では無くて龍種の両親から産まれたと思われる人化した男の子の地龍が立っていた。


「うー!ドレスデンにはかんけいないです!」


突然男の子に対して唸り声で威嚇するアリーセ。

とは言え唸り声と言っても子猫の「シャー!」の威嚇にしか見えないので可愛いらしいだけなのだが。


「いや関係無くはないだろ・・・俺はお前の教育係なんだから」


「あたしはたのんでないです!」またドレスデンを「フシャー!」と威嚇するアリーセ。


「君が私の娘の教育係ですか?私はシーナです、よろしくお願いしますね」

そう言いながらドレスデンにニコリと微笑むユグドラシル。


「うっうう!はっはじめまして!ドレスデンです」

顔を真っ赤にしてペコリと頭を下げるドレスデン、どうやら笑顔のシーナの美貌に恥ずかしくなった様だ。


「私はエレンよ、よろしくねドレスデン」


「俺はガイエスブルクだ、よろしくな」


「あっ!よろしくお願いします!ドレスデンです」再度頭を下げるドレスデン。


「・・・とても良い子に見えるのになんで威嚇をするのですかアリーセ?」

ユグドラシルはアリーセの頬を両手で挟み目を見て問いかける・・・


「ドレスデンはアリーセをいじめるからです!」


「いじめてない!日課の戦闘訓練をしてるだけだろ?!」


「ドレスデンはアリーセを叩いたりします!」


「戦闘訓練だから隙が有れば叩くしかないだろ?!ちゃんと手加減はしてる!」


「「「ああーー」」」納得言った感じの3人。


樹龍は地龍の一員だが戦闘を好まない種族だ。

地龍にとって普通の訓練でも樹龍的にはとても嫌な事なのだ。


「これは教師の認識不足だね、私から伝えておくよ。

ドレスデン君、樹龍は戦いを好まない種族だから戦闘訓練は無しでね」


「そうなんですか?!」

エレンの指摘に驚いたドレスデン。


「ああ、樹龍に戦闘を強要すると嫌われるだけだからな、魔法の訓練だけにした方がいいぞ」


「そんな・・・」良かれと思ってやっていた事が嫌われている原因だと分かりショックを受けるドレスデン。


「分かりましたかアリーセ?ドレスデンはアリーセを憎くて叩いたりしてた訳じゃないのてす、ドレスデンを許してあげて下さいね?」

アリーセの目を見て優しく諭すユグドラシル。


「うー・・・・・・・・もう叩かないならアリーセはゆるします」


「ね?ドレスデン、明日からはアリーセを叩いたらダメですよ?」


「はっはい!ごめんアリーセ」とアリーセに頭を下げるドレスデン、随分と素直な子だ。


「さすが母親だな」


「まあ、本当に世界の母親だからね」


この数年後に「娘に母親力で負けてる?!」と王妃ファニーがショックを受ける話しはまた別の機会に。


ちなみに深層心理世界からユグドラシルの様子を見ていたシーナは・・・

「ふわー、凄いですねぇ、母親のユグドラシルは」とポヤーンとした事を考えていた。


すると・・・


『あのシーナ?やっぱり私を母とは思えないのですか?』

と、めっちゃ寂しそうな声が聞こえて来た。

最近、母親に目覚めた女神ハルモニアが子供同然のシーナをやたらと構って来るのだ。


「え?うーん?そうですねぇ・・・一応私にもハルモニアだった頃の記憶が朧気に有るんですよねぇ・・・貴女と私はあまりにも存在が近すぎて・・・母親として見るのは難しいですね~。

あっ!それなら私は妹か弟が欲しいです!」


『ええ?!』いきなりの「子供作れ!」のおねだりに驚く女神ハルモニア。


「妹か弟が出来れば私も貴女を母親と認識出来るかも知れません!

さあ!子供を作りましょう!」


『ちょっ?ちょっと待って下さいよぉ~』

この時のシーナのおねだりを拡大解釈した女神ハルモニアが割と大事をやらかすのだが、それは大分後の話しだ。


こうしてユグドラシルとアリーセ、ハルモニアとシーナ、2組の親子の会話は和やかに続いた。


ユグドラシルとアリーセを見て、ハルモニアと話したシーナは、もう1人の父親である地龍王クライルスハイムに会いたくなってすぐに謁見した。


普通なら龍都に到着したら何より先に地龍王に謁見するべきなのだがそこは地龍、お互いに細かい事は気にしていない。


シーナが地龍王に謁見すると聞いたエレンとガイエスブルクはアリーセと一緒に逃げた。

そりゃ自分達の会社の会長に好き好んで会いに行く人は少ない。


「「おお!シーナよ!良くぞ顔を見せに来てくれた!父は嬉しいぞ」」

娘のシーナに会って、ついさっきまで不機嫌だった地龍王クライルスハイムが上機嫌になり、側近の龍戦士が驚いている。


体長が50mを越える地龍王クライルスハイムを見上げるシーナの首はいつも痛い・・・

が今日は何故か下を見ている。

そこには地龍王クライルスハイムが不機嫌だった理由があるからだ。


「はい!ヴィグル帝国に参陣する前にご挨拶に来ました!

・・・ですがお父様一つ質問があります」


「「うむ!なんじゃ?」」


「この人達何をしているのです?」


シーナの目線の先には数十人の人間が一心不乱に床の掃除をしている、人間が龍都に居るのも珍しいがなんで掃除とな?不思議に思うシーナだった。


「「この者達は不法侵入者じゃな、罰としてここの全てを掃除させている」」


「全部?!龍都全部ですか?!」ちなみに敷地面積は400㎢×三層くらいだ。

どんくらいの広さ?と聞かれると「凄え広いですねぇ」としか言えない。


「「そうじゃ建物も全てな」」その内の建物面積は300㎢×3くらいある。

そうですねえ・・・大体60万畳くらいですかね?


「ほへー?何十年掛かるんでしょうか」規模が大き過ぎてちょっと想像出来ないシーナ。


一心不乱に掃除をする者の中に絶賛行方不明中のなんとか伯爵もいた。

なんとか伯爵はさりげなく横目でシーナとクライルスハイムの様子を伺っている。


なんとか伯爵はこのラーナ姫と瓜二つの少女をゴルド王国の諜報員が言っていたシーナ姫だと確信する。


《ふふふふ・・・ようやくだ。ようやく私にも運が来た様だ。

この人の良さそうな姫に取り入りここを脱出して・・・そのままこの姫を人質にゴルド王国へと渡れば大臣にもなれよう》と性懲りも無く考えていた。


しかしシーナは「なんでこの人達は生き恥を晒してまで掃除なんてしているのでしょうか?」と疑問に思っているだけで別に憐れんではいない。


シーナは当然この連中が自分と母親の王妃ファニーを狙っていたのを知っている。

情けを掛けるつもりは毛頭無いし、話しをする気も無い。

何ならただの敵の捕虜だと思っている。


今のシーナはCランク冒険者になっている。

そこに至るまでに盗賊討伐依頼や要人護衛依頼を数多くこなしており命のやり取りなど当然何回も経験している、無垢なお姫様では断じて無い。


シーナは人の姿をしているが正真正銘の地龍なのだ。

人間のお姫様の様な「敵だって人間です」なんて甘い考えなど最初から持ってない。

敵は殺すか殺されるかの対象でしかないのだ。


そもそも龍戦士を目指そうなんて考える者がそんな甘い精神力のはずが無い。

彼女も立派な戦場に生きる武人なのだ、なのでシーナは彼等への興味をすぐに失って・・・


「では!お父様!稽古のお相手をお願いします!」


「「うむ!良かろう!」」と地龍王と共にアッサリと去って行ってしまった。


呆気に取られその場に残されたなんとか伯爵とその一味には残りの人生数十年を掃除作業をするしか道は残されていない。


ちなみに地龍王からは「逃げたければとっとと逃げれば良い」とも言われているが高さ800mの断崖絶壁を昇る必要があり、ここにいる連中には不可能だろう。


シーナ達は普通に降りたり昇ったりして行くのだが、この点からしてもこの連中にどうにか出来る相手では無いのだ。


その後の1か月は地龍王との稽古三昧にアリーセと遊び倒す日々が続き、遂に待望の・・・

「フリーパスが届いたよ!」と、エレンが嬉しそうに部屋に飛び込んで来た!


ようやく天龍と海龍からフリーパスのブローチが届いたのだ。


フリーパスのブローチは金の下地に天龍はサファイア、海龍は真珠が埋め込まれたなかなか見事な一品である。


ちなみに本人以外の他の者が着用してそれを悪用しようとした瞬間に文字通りの大爆発をする。

龍種でも結構なダメージを受ける爆発なのでかなり強烈な爆発らしい。


ちなみにもし盗難とかされたら遠隔操作でも爆破可能な便利機能も搭載されている。


時には敵拠点に放り投げて拠点ごと敵を粉砕する事も可能だ。

実際に天舞龍のリールが昔にやった事が有る。

もちろんその後は用途外使用のお叱りを受けて始末書を書かされたのは言うまでもない。


ブローチなのは龍化状態と人化状態のどちらでも装着出来る様に対応しての事、なかなか至れり尽くせりだ。


明日皆んなが出発すると知ってギャン泣きするアリーセをユグドラシルが抱きしめて一緒に寝てよしよしと宥めて3日経ち。


地龍王の「シーナよ必殺技を授けよう!」で二週間の修行延長をして。


ガイエスブルクが偶然兄と再会してエレンが一目惚れしてからアタック!

1か月後にようやく実現したラブラブデート事件で3日間の待ちぼうけ。


またアリーセがグズり出してユグドラシルのポンポンで2日。


更に2ヶ月間、龍都に滞在していたら・・・

オーバンから『あの・・・海上の決戦でピアツェンツェア王国海軍が勝ちましたよ?』との手紙に「ふあ?!」と、我に返った夢幻が出発したのは、フリーパスが届いて66日後の事だった。


「さあ!いよいよ出発ですよ!」

ようやくアリーセを寝かしつけての夜明け前の出発だ。


シーナの目は寝不足で赤い。


「お疲れ様シーナ。ってかもう俺達は行かなくて良くね?」とガイエスブルクが言うと・・・


「何言ってるんですか?!地龍君!行きますよ!」


「さすがに行かないとマズイね、怒られるよ・・・多方面から」と苦笑いのエレン。


「だいたい・・・エレンお姉さんが兄貴とあんな騒動起こすから」とジト目でエレンを見る。


「ごめんなさい・・・」

ガイエスブルクの兄を相手に連日ハッスルしまくって欲望全開だったエレンは顔が真っ赤になり両手で顔を覆った。


「西の港町まで2700kmくらいあるけど・・・どうする?」 ガイエスブルクがシーナとエレンに尋ねる。


「え?地龍らしく走って行きますよ?・・・それとも馬車使います?」

どうやら2700kmを自走するつもりらしい。


「そうだな馬車じゃ何日掛かるか分からないよなぁ。

ただでさえ遅れまくっているのに、これ以上時間を掛けるのは不味いよなぁ」


「そうだね~走ろうか?その方が早いしね~」


「では!出発ぅ!」


こうして幻夢の3人は西の大陸を目指し2700kmの旅に出た・・・

2700km耐久マラソンの始まりだ。

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