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三題噺もどき2

数分の

作者: 狐彪

三題噺もどき―さんびゃくよんじゅうきゅう。

 


「来週プリント提出だからなー」

 忘れるなよー。

 授業の終わり際。

 挨拶を済ませ、各々立ち上がったり片づけをしたりする生徒たちに釘をさす。

 このクラスは比較的提出率は高い方なので、いう程心配はしていなかったりするが。

 忘れても最終的には提出してくれるから他の提出もしない者たちに比べたらいい。

「なくした奴は後で取りに来いよー」

 一応の救済卒もそれとなく伝える。

 他クラスは4,5名ほどいるが、ここは……。

 お。

「また失くしたのか?」

 大抵同じ1人か2人。

 失くした確信はないけれど、持っているという確信もないので、もらいに来ると言う感じだろう。毎回のようにもらいには来るが、提出されたプリントの中に再プリントしたものが混じっていたことはほぼない。

 ……若干異なる紙にプリントしている。

「ちゃんと出せよー」

 再度釘をさしなおし、あらかた生徒がいなくなったことを軽く確認する。

 残りが数名になっていたので、教卓に広げていた資料などを片付けていく。

 そのほかの器具たちも。片付けながら授業は進めたが、最後の方は駆け足になってしまったので、まだ残っている。

 黒板……は最後でいいか。まだ書き写しているようだ。

 とは言え、そこまで散らかっては居ないので、すぐに片づけは終わる。

「消すぞー」

 そこだけもう少し待って―という生徒の声を後ろに聞きつつ、消していく。

 授業前半で書いたところから。

 全く……寝ていたのか?

「もういいかー」

 ちらりと見やると、まだ写して……お。終わったな。

 ありがとーと言いつつ、片づけを始める生徒。

 周りに溜まっていたのか、他の生徒にも急かされていたようだ。

「さっさと戻れよー」

 残りの生徒が片づけを終わらせ、自分たちの教室へと戻ろうと立ち上がり始めたので、自分も隣の準備室へと戻ることにする。

 黒板横にある扉を押せば、すぐそこにある。

 パタリと、後ろ手に扉を閉めたあたりで、ガラガラと引き戸を閉じる音も聞こえる。

 同時に、隣の理科室からシンーとした空気が伝わってくる。

「……」

 さて……次は……何も授業はなかった気がするが。

 その次……は、あー。あったなぁ。準備でもして多くか。

 このクラスは何をするんだったか……。特に実技をする予定はなかった気がするが……。

「……」

 自らの机に戻り、先程の資料を適当にそこらに置く。

 そのまま、次の時間、その次の時間までの確認を頭の中で済ませつつ、準備が必要かどうかを開きっぱなしにしていたPCで確認する。

 まだ座りはしない。

 準備が必要なら再度立ち上がらなくてはいけないからな。

「……」

 ん……特に……。何もなさげだな……。

 このプリントは前にコピーしてあるし、思っていた通り実技の予定もない。

 今回は座学がメインだ。まぁ、授業ある以上座学ではあるかもしれないが。特に動きはない。

「……」

 よし、ならばこの時間はつかの間の休憩とさせてもらおう。

 もう1人の教師は、他のクラスの授業なのかここにはいない。

 彼は特に実技がない限り理科室を使うことはない。

 ……面倒でこちらまで生徒に来てもらう自分とはえらい違いだ。

「……」

 ずる休み―というわけではないが、さてたまにはゆっくりさせてほしい。

 まぁ、たかが10分かそこらだ。これ以外にも準備は必要なものはあるし、次の授業の確認もいるにはいる。

「……」

 PCはそのまま、開きっぱなし。席から離れる。

 ゆっくりと入ったが、ここでできることはたいしてない。

 できることというか……やりたいことか。

「……」

 もう一度理科室へと戻り、つい先ほどのクラスで使った試験管たちを見やる。

 綺麗に洗い、逆さに立たされたそれらを、眺める。

「……ぉ」

 その中に、数本。

 まだ水滴の残っているものを見つける。

 細いガラスの中に張り付く水滴。

 その試験管を手にとり、ひっくり返す。

 通常の使用時と同じように持つ。

「……」

 特に何があるわけでもないんだが。

 なんとなく、良いなぁと思ってしまうのだ。

 頭の中で何かの曲で流れる口笛部分がリピートされる。

 何が楽しいとか、何がいいとかではなく。

 ……こんな所他の人に見られでもしたら気味悪がられそうだ。

「……」

 自分の感覚の中で、数分ほどそうしてた。

 時計を見る。

「……」

 さて。

 次の確認と準備をしなくては。

 これでずる休みは終いだ。





 お題:ずる休み・試験管・口笛

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