表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
案内人  作者: 式部雪花々
7/10

- 6 -

その日の夜――、


久しぶりに小雪から電話があった。




伊東さんを紹介されたあの日から二週間。


翌日にかかってきた小雪からの電話を「まだ仕事中だから」と言って、


半ば強引に切ってから僕からも小雪からも連絡を取っていなかった。


そして、この日もまだ会社にいた僕はデスクの上で震えている携帯に


気付いていたものの、出ようかどうしようか迷っていた。




“また、伊東さんの事かもしれない”




このまま出ないでいよう。




マナーモードにしていた携帯はすぐに留守電に切り替わり、また静かになった。






僕が留守番電話のメッセージを聞いたのはそれから一時間程経った頃だった。




『……小雪です。何時になってもいいから連絡、下さい』




(?)




小雪からのメッセージがどうも気になった。




“何時になってもいいから”




小雪がそんな事を言う時はだいたい何かあった時だ。


僕はすぐに小雪の携帯に掛けた。




『……もしもし』




「小雪?」




『うん』




「留守電、聞いた……何かあったの?」




『もう、お仕事終わった?』




「うん、今終わって会社出るとこ」




『……じゃあ、今から会えないかな?』




「いいよ。今どこ?」




『京介の会社の前』




「えっ!?」


僕は急いで会社を出た。




すると、会社の裏口にある喫茶店の窓際の席に小雪が座っていた。






「もしかして……留守電にメッセージ入れた時からずっとここにいたのか?」




「うん。もうすぐお仕事終わって出てくるかなー? って思ってたんだけど、


 今日は全然勘が当たらなかったみたい」


小雪はそう言って苦笑いしたけれど、本当はその通りだった。




僕はあの時、デスクの上を片付け始めていた。


でも、小雪から電話が掛かってきたから別に明日でも間に合うような仕事に手をつけたんだ。




「……ごめん、もっと早く留守電聞けばよかった」




「私が勝手に待ってただけだから」




「……」




「あ、それでね……実は、京介にお願いがあるんだけど……」




「うん?」




「明日ね、ある男性と会うんだけど……その人の前で私の婚約者のフリをしてほしいの」




「……え?」


あまりに唐突過ぎて僕は小雪が言った事がすぐに理解出来なかった。




「元彼にお願いしようかとも考えたんだけど……どうしても出来なくて……


 こんな事、頼めるの京介しかいないの」




小雪は頭の中で少し言葉を整理するように考えると、ゆっくりとその理由を話し始めた。










「……しかし、その男もまた強引だなぁー」


小雪にプロポーズしたという男は「明日、十四時にここで待っている」と自分の名刺の裏に


待ち合わせ場所に指定した店の名前を書いて手渡し、その場を去ったらしい。


小雪はそんな一方的な約束など応じるつもりはなかったが、名刺を見てそうも行かなくなったと言った。




「その人、うちの親会社の社長の息子さんなの」




「つまり、断ったら何かあるって事?」




「うん……」




「クビ、とか?」




「……多分」




「えー、いくらなんでもそれはないだろー?」




「だといいんだけど、なんかありそうで……」


そう言って俯いた小雪の不安そうな様子を見ながら、僕はふと思い出した。




「小雪、その人の名刺、ちょっと見せて?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ