- Prologue -
僕と彼女が初めて会ったのは小学校四年生の時だった――。
父親の仕事の都合で山梨から東京に引っ越して来た僕は転校初日、
いきなりピンチに陥った。
学校からの帰り道がわからず、おそらく方角が同じであろう
同い年くらいの女の子の後をとりあえずついて行った。
すると、その女の子は学校から少し離れた場所に住んでいて
その子が家の中に入ってしまった後、僕は一人、
道の真ん中に取り残されてしまったのだ。
……それから迷うこと三十分。
僕は徘徊していた。
同じ場所をグルグルと。
そして、お腹もすいてきて歩くのも疲れてその場に立ち尽くしていると、
「ねぇ、君……」と声を掛けられた。
「?」
顔を上げてみると、さっき僕が後ろをついていってた女の子が目の前に立っていた。
「さっきから同じとこ歩いてるけどー……」
「み、見てたの?」
「うん、窓から見えてた」
「そ、そうなんだ」
僕はなんだか恥ずかしくなって女の子から目を逸らして俯いた。
「君、もしかしてー……今日、一組に来たっていう転校生?」
「う、うん」
「家、わかんないの?」
「うん……朝はお父さんとお母さんと一緒に車で学校に行ったから、
道を覚える前に着いちゃって」
「そっかー、えーと、じゃあ、何丁目あたりに越してきたの?」
「んと……一応、住所を書いたメモは持ってるんだけど……」
僕は女の子に新しい住所が書いてあるメモを見せた。
「ここからだと少し戻らないといけないね」
「え、どのくらい?」
「そんなにたいした距離じゃないよ?」
「そっか……ありがとう」
僕の家は女の子の家よりも学校に近かった。
それに気がつかずに歩いてきてしまっていたのだ。
「案内してあげる」
「えっ、いいの?」
「だって、このままじゃお家に帰れないでしょ? 行こ」
「う、うん……」
そうして彼女は僕を家の前まで案内してくれた。
帰る途中も、いろいろと目印になる建物も教えてくれた。
「ありがとう。君のおかげで無事に帰れたよ」
「どういたしまして」
「あの……ところで、君の名前は?」
そして別れ際、僕はやっと彼女の名前を聞いた。
「喜多嶋小雪」
すると彼女はにっこり笑って答えた。
「君は?」
「橋本京介」
「じゃあ、橋本君。またね」
「う、うん。また」
これが僕と彼女の出会いだった――。




