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第二話

 ――転生から数年後。

 

 東に位置するクロスベリア大帝国、大広間にて。


「我らがクロスベリア大帝国、第23代目帝王オーガ・ストルベ・クロスベリアがここに宣言するっ!! 第3皇女がこの世に誕生した!!」


 クロスベリア大帝国の帝王オーガが高らかに宣言した。


 その声は大広間を駆け巡り、そこに集まっていた元老院の貴族や聖騎士団の団員、そして家来やメイド、料理人から、招かれた上級市民を轟かせる。


 オーガによって宣言されたのはつまり、子どもができたということだった。


 この帝国の子供は将来を約束されていて、優秀であればあるほどに王様や、貴族、そして国が持つ村や市の統治などが任される。


 しかし、将来を約束されると言っても例外もある。


 統治する一切の素質。


 つまりは魔法属性、ユニークスキル、そして容姿など様々な観点からまったく向いていないと分かればすぐさま名をはく奪され、辺境の小さな孤児院に送られることもしばしばあると言う。


 そんな中、俺こと久本国忠30歳は帝国の第4皇子として生まれた。


 本来ならこの宣言によって正体が明かされるのだったのだが——生まれて数日で行われた固有情報ステータス発掘の儀にて水晶玉に映ったものにはこうだった。




名前:カイト ストルベ クロスべリア

年齢:0

職業:無職

経緯:転生

固有スキル:創造レベル1

魔法属性:無し




 主人公最強系でも大人気、創造スキルだったのだ。


 魔法スキルはないにしろ、これで様々なものを作れるじゃないか! と齢30の精神の赤ちゃんは泣き叫ぶように喜んだ……のだが。


 帝王、そして母、メイドやその家来、貴族までもが忌避するような目で見つめてくる。


 なぜ、こんなにも凄いじゃないか!


 そう思ったのも束の間、俺は辺境の貧乏孤児院に移され——————そして今に至ると言うわけだ。






 辺境の地にある孤児院に捨てられてから6年が経った。


 いやはや、驚いたものだが幼子の頭とはすさまじく成長が早い。


 最初は何を言っているのかちんぷんかんぷんだったのだがいつの間にかほとんどすべての言葉を理解することできるようになっていた。


 30歳の頭ではまったくと言うほど新しいものを覚えるということにたけていなかったため、この感覚は実に面白くて楽しく感じていた。


 まず、俺がいる孤児院の名前は「ストレーア教会孤児院」と言い、帝国の東側で広がっているストレーア教が運営する孤児院だった。


 設備はそれなりに整っているのだが、俺がそうされたように貴族の中では素質がなかった子供が幼少期に捨てられることも多い。


 それが原因で栄えている宗教の孤児院でも抱えきれなくなっていて、毎年貧困が増している。


 俺がいたこの3年間でもこの孤児院には20人以上の子供が連れてこられていた。


 しかも協会のシスター3人で面倒を見ている状態でとてもじゃないが楽をできるような環境でもなかった。


 しかし、そんな中。


 中身がおじさんである俺は他の子どもたちと遊ぶことよりもこの世界の知識を収集するのに時間をかけていたのだ。


「あらあら、今日も隅っこで本を読んでいるの?」


「っ——はい、ミリア様!」


「あらぁ……様だなんて、本当に出来ている子ねぇ」


 部屋の隅で本を読んでいると声を掛けてきたのはこの孤児院のシスター「ミリア・フォン・ツィンベルグ」だった。


「そんなんじゃないんですよっ」


「礼儀も正しいし、すっごく偉い子だわっ」


 ニコニコ笑う彼女はとても綺麗だ。


 もしも俺が30歳のままこの世界に転生してきているのならもうお嫁にもらっているだろう。


 金髪、碧眼、そしてボンキュッボンな理想的体型。


 声も高過ぎず低すぎずで、エッチなことをする時にはギャップ萌えで堪らなくなってしまいそうだ。


 胸なんて大きすぎてもはや形が保てていない。


 歩くたびに《《たゆんたゆん》》揺れるし、あの胸の谷間に挟まって死にたいくらいだ。


 まぁ、一回死んでるんだけど。


 きっと、あれのπずりはたまらんのだろうな……ぐへへ。


 ——とあらぬ妄想をする俺は30歳なのに童貞だと言うのに。

 

 ただ、そうだな、この世界ではそっちの目標も達成するのとかもいいかもな。



「にしても……あの子本当に大丈夫なのぉ?」


「私も少し心配よ」


 ミリアが部屋から出ようとすると、近くにいた二人のシスターが彼女に話しかけた。


 二人は俺の事を少し気味悪そうに見ていて、思わず「にぃっ」と笑みを浮かべてしまった。


「っ——ほ、ほらぁ……なんか子供っぽくなくて、不気味と言うかぁ」


「ちょっと、頭が良すぎッていうか」


 確かに俺はあまり友達もいない。


 全くと言ってもいいほど本しか読んでいない。


 この世界の本はかなり分厚くて、伝説の話や歴史が描かれていてかなり面白かったが仕方ないだろう。


 そんな二人にミリアは真面目な顔で——


「そんなことないわよ、少し成長が速いだけだわっ」


 しかし、二人はと言うとあまり納得せずに他の仕事に取り掛かってしまった。


 にしても、もう少し俺に構ってほしいものだ。


 俺だって、人間だし、前世では女っ気などなかった。異世界でもないのはごめんだ。


「あ、そう言えばっ——」


 すると、部屋を出ようとしたミリアが何か思い出したかのようにこちらに駆け寄ってきた。


 俺の近くでしゃがみ、こちらを向いて一言。


「——そう言えば、冒険者とかって興味あるんだっけ?」


「ぼ、冒険者……?」


「うんっ。ギルドからいろんな依頼を受けて、悪いモンスターたちを懲らしめに行く職業なんだけど……ほら、カイトくんってずっと伝説のお話とか読んでるでしょ?」


「そうですね、それなら読んでみたいです!」


「分かったわ。私の家に置いてあるから、明日にでも持ってくるわね!」


「ありがとうございます!」


 そう言い残し、彼女は部屋から出ていった。


 そうか、冒険者か。


 異世界と言えば、やっぱりあるものなんだな。面白そうかもしれない。


 


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