4話 地面の下の…
……わからん。
俺は今、地面を眺めている。
もちろん、ただ眺めている訳じゃない。
その奥を眺めているのだ。
謎のエネルギーが自分達の中にもあるのに気づいてから何か出来ることないかな~と色々試していたら、なんかそのエネルギーの感知能力が上がった。
今までは意識してから集中しないと感知できなかったし吸収も出来なかったが、それが呼吸をするかのように当たり前に出来るようになった。
知らないうちに熟練度でも上がったのだろうか?
まあとにかく、出来るようになったのは良いことだった。
俺は成長したその能力を使って、さらによくそのエネルギーを観察しようとしたのだが、
その時、偶然下をみて固まった。
ーーなんかすごい塊があるんですけど…。
それは、地面の下…そのさらに地下奥深くにあるかのように遠く感じるのだが、そこにある大きなエネルギーの塊。
そこから感じるエネルギー量が半端なかった。
しかも、辺りからエネルギーを吸っている。
なるほど、だからこの土地はこんなになってたのか。
これで謎が一つ解けた。
それにどうやら俺からも微量にだがエネルギーを搾取しているようだった。そんなにあからさまな感じじゃなかったから気づかなかった。これに気づけたのも感知能力が上がったおかげだな。
しっかし、あれは一体なんなのだろうか?
一瞬、この世界の核かな?と思ったけど多分違う。
もしかしたらあのエネルギーの塊の中になにかあるかもしれないが、周りのエネルギー量がヤバすぎて見ることが出来ない。
…ただ、微かに魂を感じるかも?
もしかして、何かの封印なのだろうか?
実はこの土地は封印されし土地だったとか!?
…………。
……。
いや、そんな大袈裟なものでもないだろ。
十中八九、その何かの封印を維持するのに周りからエネルギーを搾取した結果、こんな不毛の土地になったのだろう。
なんて傍迷惑な封印なんだ。
しかも、俺からもエネルギーを搾取しているのが気に食わない!
せっかくチマチマ貯めてるところなのに!
だが、俺にはどうすることも…、
いや、出来るんじゃないか?
あのエネルギーの塊を吸収できれば、一気に成長できるし栄養不足で死ぬことはないだろう。
あれだけあるんだ。少しぐらい吸収してもバレないだろ。
だが、どうやってあの塊からエネルギーを吸収すればいいのだろう?
根っこは動くけど届かないしな~。
………あ、貯めてたエネルギーを全部根っこに使えば行けるんじゃね?
根っこだけ成長させて、地下奥深くまで伸ばす!
うん、行けそうだ!
…なんか、トントン拍子に進んでいくので少し怖い。
冷静な部分の俺が、俺に話しかける。
ーーそれで封印解いちゃって大変なことになったら、どうするんだよ? ……と。
う~ん、確かにそうなんだよな~。
でも、あのエネルギー量は魅力的だしな~。
悩むが一向に判断がつかない。
というか、もういいんじゃないか?
別にヤバい封印でもちょっとエネルギーを吸ったぐらいじゃなんともならないだろ。
こっちは死活問題なんだ。
もう、なるようになれ!だ!
俺は根っこに貯めていたエネルギーを集中させて成長させる。
あれ? 思ったように進まない。
地面が固いから? それとも根っこの成長にはもっとエネルギーが必要なのか?
どちらにしても、このままだとせっかく貯めた分のエネルギーが尽きてしまう。
なに、急ぐ必要はないんだ。時間はたっぷりある。
空気中から少しずつ吸収して、それを根っこに廻せば大丈夫。
こっからは持久戦だ!
ーーこうして、俺の長い戦いが始まった。
日々、生命活動に必要な分だけを残して、他は全て根っこにエネルギーを廻す。
既にマザーの土からは養分もエネルギーも吸い付くしてしまった。
近くにあった雑草も魂を吸収して、活用した。
何気に初めての補食行為だったが、根っこをその雑草のところまで伸ばしてエネルギーを吸いまくったら、最後にポンッと魂も吸収できた。
そしてこの魂だか、すごいエネルギー量だった。
完全なる別物だと思っていたが、もしかしたら魂はもともとエネルギーの塊のようなものなのかもしれない。
というか、この世界の全てはこのエネルギーで成り立っているのかもしれない。
まあ、それは今はまだ分からないんだが、そのうち分かる日もくるだろう。
そんなことより、今は根っこに集中だ!
しかし、マザーの土も付近の生物も全て吸収してしまい、エネルギーの吸収源が空気だけになってしまった。
生命活動にも必要なので、そうなると根っこに廻す分が必然的に少なくなってしまった。
ん~、これは厳しい。
と思っていたら、ある日、雨が降った。
ただの雨じゃない。土砂降りだ。
それも数日間。
これで本来の植物の生命活動に必要な水が大量に手に入り、生命維持が少しだけ楽になった。
それにこの雨もエネルギーを微量に含んでいたので、これを吸収することによってなんとかジリ貧から脱却できた!
あと、土砂降りの雨により流れてきた虫や草もおやつ感覚で吸収。
久しぶりに満腹感?が得られた。…今まで、割りとギリギリだったし。
幹の中に水分も貯めることが出来たので、これでしばらくは生命維持が楽になった。
これで余裕ができた分のエネルギーを根っこに廻す。
最近、根っこが岩盤にでも当たったのかさらに進みが悪くなってる。
だが、そんなことは問題ではない!
植物の力舐めんなよ! 岩だって貫き砕いてみせるわ!
毎日毎日、チマチマチマチマ。
少しずつではあるが確実に近づいていった。
その間も雨が降ったり、近くに雷が落ちたり、全然雨が降らなかったり、変な虫が近づいてきたりと色々あった。
あと、普通に成長した。
今では大体一メートル位だ。
日光ないし、土の栄養素なんて皆無なのに成長するってことはやはりこの謎のエネルギーの力なのだろうか?
まあ、成長したことによって水分とエネルギーの貯蓄容量が増えたのは嬉しい誤算だった。…エネルギーは満タンに貯めていたわけではないが…、
ーーもう、どれくらい日が経ったのか分からない。
まあ、あまり気にしてなかったから別に問題ない。
普通なら発狂物の日数でも、俺は木だし、その前は魂だけでずっと彷徨ってたから、いくら時間が過ぎても余裕余裕!
でも、最近はさらに岩盤も固くなってきていて、少し進むのも一苦労だ。
さらに進むスピードか遅くなって時間がかかると思うと、いくら時間感覚が狂っていても心が滅入ってしまいそうだ。
実際、少し病んでただボーッとしていて全く根を進ませない時期もあった。
だが、そういったことを何度も乗り越えて今も俺はがんばっている!
それに、多分だがもう少しで岩盤を抜けられそうな感じがするのだ。
根っこが、エネルギーの塊に吸い寄せられてるエネルギーの流れみたいなものに触れたから分かる!
…もちろん、その触れたエネルギーも吸収させて貰いました。
で、話を戻すが…、
つまり! すでにラストスパートに入っているのだ!
今もこうして根を成長している間に、俺のなかでは様々な苦労と努力の記憶が走馬灯のように過っている。…ああ、あの頃は辛かったな~。
だがっ! そんな辛い日々も今日で終わる!!
俺の予想では、本当にあと少しの筈だ!
焦るな~俺、ゆっくりいこう…。
岩盤を勢いよく突き抜け過ぎて、そこにあるかもしれない結界に触れたら何が起こるか分からないからな。
あくまで俺の目標はその周りのエネルギーだ。
慎重に慎重に……、あっ。
その瞬間は唐突だった。
ポロッと根っこ先が岩盤を少しだけ突き抜けたのだ。
だが、その感動に浸る前に変化は訪れた。
その少しの隙間になだれ込むようにエネルギーが入ってきたのだ!
そのあまりの量に俺は少しだけのつもりが一気に、それと大量に吸収してしまった。
…そして訪れる万能感。
膨大なエネルギーに満たされた俺は、今ならなんでも出来るような。そんな感覚に見舞われたのだ。
その感覚があまりにも心地よすぎて、俺はすっかりその万能感に浸ってしまったのだった。
ーーその間も放出し続けている溢れたエネルギーを放ったらかして……。
ーー主人公成長日記
主人公=種族不明 ちょっと低めの木 全体的に黒い。
サイズ=一メートルくらい 太さ=二十五センチくらい
任意の部分成長が可能になった。 エネルギーの操作が少し上手くなった。 貯蓄量が増えた。