3話 成長期(木)
ふふふ…、笑いが止まらないぜ。
マザーが残してくれた養分とエネルギーで成長。さらに空気中のやつも吸って成長。
一気にやってもよかったが、なんか怖かったので少しずつしか成長はしてない。
だが、それでも着実に成長している!
今は低木ぐらいの高さまで来た。…ちょうど五十センチぐらいだろうか?
そこまでくると、自分の様子がある程度わかり俺がどんな木なのか大体わかった。
まず、黒い。かなり黒い。それに独特の光沢もある。
葉も同様、…木の中まではわからないが。
とにかく真っ黒い木なのだ、それが光沢によって紫がかって見えてる。…これはなんかかっこいいからそれなりに気に入っている。
あと、マザーがどうやって他の生物をを補食していたのか気になってたのだが、なんと根っこが伸ばせた。
といっても、伸ばせる距離には制限があるのだが、それでも自在に動かすことができるのには驚いた。
…ちなみに、動く根っこを使って移動を試みたがそれは無理だった。
あと、この地についてもわかってきたことがある。
まず、枯れた雑草や毒々しい草以外の生き物は昆虫しかいなかった。
これはここだけなのか、他の場所にもいるのかはわからない。…マザーが手当たり次第補食するからここら辺に近づかなくなったという可能性もある。
あと、虫も草も小さい。
なので、多分第三者目線でみれば俺はここではすごい目立って見えるだろう。
これについてはなんとも言えない。
俺はマザーの残してくれた養分とエネルギーのおかげで成長出来ているが他の植物は栄養が足りないのかもしれない。
日光はほとんどないし、雨が降りそうな雲だとは思っていたが全然降る様子もない。
土も枯れてるし、これでは簡単に大きく成長したりするのは無理だろう。
俺も今はマザーの養分とエネルギー、土の中のわずかな水気で成長できているが、いつか打ち止めがくるだろう。
というか、マザーの死因はこれじゃないかと思っている。
俺も若干気にしていることだが、大きな体にはそれなりの養分やエネルギーなどが必要になってくる。
これでマザーの土が枯れたら、俺の体は空気中のエネルギー摂取だけではもたない。
マザーが他の生物を補食していたのもこのせいだろう。
足りない栄養やエネルギーを、他の生物の魂で補っていたのだ。
今のところは大丈夫だが、俺も直にそうなるかもしれない。
成長を止めてもいいが、どのみちマザーの土が尽きれば結果的にはおなじなので、今は大きくなって出来ることを増やすことに集中している。だが、気には留めておいたほうがいいだろう。
それに、今でも少し成長するのに無理をしている感じがある。
本来、水と空気と日光、それに土の養分が植物の成長に最低限必要なところを、俺は土の養分と謎のエネルギーだけでゴリ押ししている。
他の要素がまるで足らないのだ。
空気は日光がないと光合成できないから、空気中のエネルギーを吸収することしかしてないし、日光は論外だ。
そして、土の養分とエネルギーも尽きかけてると…。
あれ? これってかなりピンチなのでは?
…まあ、なんとかなるだろう!
で、話がかなり逸れてしまったが、この辺りの虫や植物が小さいのはその影響だろう。
大きくなるとそれを維持するのが大変だからだ。
まあ、俺はそんなこと気にしないけどね!
そしてやはり、生物の数は少ない。
生きていくには厳しすぎる環境だもんな~、あ、雷落ちた。
今みたいに時々雷が降ってくるからかなり危険だし。
もちろん、知的生命体は皆無。多分俺だけ。
この土地以外の場所も見てみたいが、移動できたり遠くを何かしらの方法で見えるようにならないと無理だろう。
まさかこの世界全てがこんな感じだとは思いたくないが…、ないよね? 他の場所は普通だよね?
是非、無事であってほしいものだ。…俺の精神的にも。
まあ、そんなこんなで色々してみたが、周りに何もないので特にすることがない。
曇っていても、日夜はわかるので時間感覚もまあだいたいだがわかってきている。
日が昇って~、降りて~、また昇って~と観測し続けてみたが三日で飽きた。
まあ、普通なら三日の間そんな観測を続けることは難しいのだろうが、相変わらず俺の感覚はずれているのだろう。
それはそれで、長い間、ボ~ッとしていられるのだが、それにも限度がある。
暇なものは暇なのである。
というわけで、俺の関心は今、謎エネルギーに向いている。…これは一体なんなのだろうか?
魂の持つ生命力?というわけでもなさそうだ。
空気中にもあるのだから、この世界特有の力かなにかなのだろうか?
あと、不思議なのだが何故俺はそのエネルギーを感じることが出来るのだろうか?
…いや、それは魂を知覚できる時点で今さらか。
まあ、せっかく知覚できて吸収して養分にも変えられるのだ。これで何ができるか色々やってみようではないか。
幸い、木である俺は睡眠があまり必要ない…、いや、実は結構しているのかもしれないが…。
眠くなったら寝ているのだが、その間の日にち感覚がわからないのでどれくらい寝ているのか分からないのだ。
でも、三徹ぐらいは余裕だしどれだけ寝ても時間とかは気にしてないから別に問題はない。
とにかく時間があるのだから色々やってみよう!
まずは、吸収。…うん、普通にできる。
そしてそれで成長を…、
…なんでこのエネルギーで成長できるのだろうか?
これを吸収してるのだって一種の本能のようなものだし、自分の中でどうやってそれを成長に繋げているのか俺自身さっぱり分からん。
ん~、とりあえず自分の中のエネルギーを感じてみよう!
まずは吸収! うん、ちゃんと入ってきている。
それが俺の中のエネルギーに……て、俺の中にもエネルギーてあるじゃん。
なんで今まで気づかなかったんだろう。
ということは、他の生物にもあるんじゃないか?
というわけで、そこら辺の適当な草でも覗いてみて…うん、確かに感じる。
それじゃあこのエネルギーは空気中だけでなく、全ての生物の中にもあるんじゃないだろうか?
いや、それだけじゃなくて…、はい、ありました~。
やっぱり土の中からも感じる。
ということは、このエネルギーは万物に宿っている?
しかも、魂とはまた違う感じたから生命活動に必要なやつなのかな?
う~ん、わからん…。
まあ、とにかく色々やってみよう。
とりあえず、空気中のエネルギーをそのまま成長には使わずに自分の中に貯めてみよう!
お! 普通に出来た。
じゃあ、それをちょこっと使って成長を…、と、やっぱり出来た!
なら、今までは吸収してたエネルギーはそのまま成長に使うしかなかったけど、そんなことせずに自分の中に貯めておけば好きなときに必要な分だけ使えるんじゃ…?
ーーこれ大発見では?
そろそろマザーの土の中の養分とエネルギーがなくなりそうだったし。こうすれば少なくともマザーの分がなくなってもなんとかなりそう!
そうすれば不安材料も減って俺も長生きできる!
よし、とりあえず貯蓄しまくろう!
成長は一旦止めることになるけど、先のことを考えればその方が無難だろう。
貯めとけば、そのエネルギーをもっと別のことに使えるかもしれないしね。
でも、このエネルギーについてはほとんど何も分かってない状態に等しいから、どう使えばいいのか分からないんだよな~。
ま、それもおいおいやっていくってことで。
これでしばらくは退屈せずに済みそうだ。
ーー主人公成長日記
主人公=種族不明 低木
サイズ=五十センチ強 太さ=二十センチ位
謎のエネルギーを吸収、貯蓄出来るようになった。