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 椅子に座った僕とミナミに、斑鳩先生はパソコンの画面を見せながら説明した。


「この数値はミナミさんの身体の宇宙エネルギー、つまりこれまで考えられなかった細胞内の物質や動きを現しています。左側が私の数値、右側が平川くんの数値です。当然、私は0。平川くんも超新星がなくなった現在、0に近い状態です。しかしミナミさんの数値は極めて高い状態を維持しています」


 斑鳩先生は蓄えた髭を撫でながら続けた。


「これはどういう現象なのか、私なりに考察をしてみました。平川くんの『超能力』とは違う、超新星の助けを伴わない宇宙エネルギーの発生。ミナミさんの身体は超新星そのものに近い、宇宙エネルギーの発生源になっています」


「私が超新星と、同じ力を……?」


「ええ。しかし個人から宇宙エネルギーが出る、そんなことが果たしてあり得るのでしょうか。私はミナミさんを調べさせていただいている間に、研究室にある様々な物質も同時に観測しました。本やパソコン、机、外を飛んでいる小さな虫やイチョウの木にいたるまで。すると、あることが分かりました。それぞれが持つエネルギーが、ミナミさんの方向へ流れていたのです」


 斑鳩先生はパソコンの画面を電子黒板に替え、学校の理科の授業のように図を描きはじめた。


「ミナミさんの身体は、地球上にある様々な物質のエネルギーを、生命の維持に必要な宇宙エネルギーに変換しています。変換されたエネルギーは超新星から放たれたものと波長や構造に差異がなく、昨日まで平川くんがコハクさんに吹きこんでいたものと全く同じであると思ってください。こうしてミナミさんが変換した宇宙エネルギーを、平川くんを通してコハクさんに吹きこめば、彼女を助けることができるかもしれません」


 斑鳩先生は分かりやすく、電子黒板に図をまとめた。




 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


【自然エネルギー】→《ミナミさんが変換》→【宇宙エネルギー】→《平川くんが変換》→【生命エネルギー】→コハクさん



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



「身近にある自然エネルギーを、まずミナミさんが宇宙エネルギーに変換します。次に平川くんが宇宙エネルギーを生命エネルギーに変換し、コハクさんに『命の吹きこみ』を行う。こうすれば原理上は、コハクさんを救うことができるはずです」

「なるほど。その仮説、ぜひ試してみたいです」


 僕のその言葉にミナミも強く頷いた。しかし斑鳩先生は眉間にしわを寄せ、険しい顔をして続けた。


「もちろんです。ただし2つだけ、この仮説には問題があります」

「なんですか?」


「一つ目は平川くんの『命を吹き込む力』が限られているということです。超新星が消えた今、エネルギーを吹き込む能力自体も、おそらくあと一度しか使えないでしょう。コハクさんを助けるには、その一度限りで半恒久的なエネルギーを彼女に届ける必要があります。

 そしてもう一つ、これは最も重要なことですが、その半恒久的なエネルギーの源をどうするのかということです。コハクさんを死の運命から救うには、人ひとりと同等の自然エネルギーが必要になります。これは熱や電気のエネルギーでは替えがききません。分かりやすく言えば『命』の、生きている人間のエネルギーがいるのです」


「斑鳩先生、それってつまり……」


 僕はあまりにも残酷な選択に、それ以上言葉が湧いてこなかった。

 斑鳩先生の説明は、他の誰かが犠牲にならなければコハクを救うことができないことを意味していた。


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