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「……誰、この子?」
「さあ。ミナちゃんの友達?」
突然現れたレイを、先輩たちは驚きながらも怪訝な顔で見つめた。ミナミは二人に睨まれて、首を強く横にふる。
「俺が聞きたいのはそういうことじゃないんだけど」
「なによ? てか君、一年だよね?」
「だから?」
「だからって……。えっと、その……」
あまりのレイの迫力に、さすがの先輩たちも声を詰まらせた。こんな怒っている彼を見たのは初めてだ。
「それ。この子に返せよ」
レイは二人の手に握られている部誌用の原稿を指さして言った。先輩たちの手が震えているのが見える。
「はっ、はあ? なんで?」「あんたには関係ないでしょ?」
「返してくれないなら、お前らがやってることを顧問や部長に話すよ。さっきの会話、全部録音させてもらったから」
二人は顔を見合わせて、目でお互いに責任を擦り付け合った。するとすぐにレイが返事を催促する。
「ねえ、どうするの?」
小声ながらも凄まじい剣幕だった。先輩たちは涙目になりながら、
「かっ、返します。返せばいいんでしょ!」
と原稿をレイに渡し、そのまま、
「行こっ!」
と逃げるように教室から出ていった。
静かになった教室で、僕とミナミは呆然と立ちすくみながらレイを見つめていた。
レイは先輩たちの手汗でくしゃくしゃになった原稿を綺麗に広げると、ミナミに優しく手渡して言う。
「びっくりさせちゃってごめん。俺、どうしても盗作とか剽窃みたいなことをする奴が許せなくて」
ミナミは気が動転して震えていたが、原稿をレイから大切そうに受け取ると、
「……あ、ありがとう」
と言葉を絞り出した。
僕はすぐにレイとミナミのもとまで駆け寄り、いつも通りの気だるそうな顔に戻ったレイに声をかけた。
「邑朋くん、すごいよ。先輩たちに対してあそこまで強く言えるなんて」
素直にそう思った。僕にはない勇気を、レイは持ち合わせている。
「いやいや。むしろ君にもみっともないところを見せてしまった」
「そんなことないよ。格好よかった」
レイは照れくさいのか、それに対しては何も言わなかった。続けて僕は側にいたミナミにも声をかける。
「鯨川さんも大丈夫?」
するとミナミは僕の顔をみることなく、黙って頷いた。小学時代から旧知の仲である僕が、彼女を助けられなくて本当に情けない。
「あの二人がもし何か言ってきたら、俺を呼んで。それから一応、録音したデータも渡しておきたい」
レイはスマホを取り出すと、ミナミと連絡先を交換した。めったに人とコミュニケーションをとりたがらないレイが、自分からこんなことを言いだすなんて意外だった。
録音データをミナミに送っている間、レイはそんな僕の空気を感じとったのか、一度俯いてから僕とミナミに話しはじめた。
「小説家だった俺の母親は、盗作されたことが原因で自殺したんだ」




