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 僕が急いで駆け付けたとき、子猫は痛々しい有様だった。

 何か所も出血し、骨も折れているようだ。すぐに手当てをしても助かるかどうか分からない。

世界中が不幸になればいいんだなんて、言わなければよかった。

僕は潤んでいく瞳で、傷だらけの子猫を見つめた。こんなことになったのは僕のせいなんだ。


「ごめんよ。ごめん……」


 そう言いながら子猫を抱きかかえていると、指先から痺れるような感覚が身体中を巡った。熱いような冷たいような。これまで体験したことがない感覚だ。

 血管が脈打ち、身体が軽くなる。それにも関わらず、僕の心は驚くほど冷静で落ち着いていた。早朝の冷たい空気のような。つんと張る静けさのような。曇りのない澄んだ心地だった。


(この子を助けたい……)


 そんな思いが僕を動かしていた。そうして深く呼吸をすると、僕はいつのまにか眠ってしまった。


ペロペロ……。

子猫が僕の頬を撫でる、冷たい感覚で目を覚ました。ほんの一瞬だけ眠っていたようだ。


「あれ……?」


 僕は起き上がって子猫を見つめた。まだら模様の小さな子猫。しかしその体には傷一つない。


「夢だったのか? とにかく、よかった」


 僕は子猫を優しく抱きかかえ、頭を撫でた。すると両手に血がついていることに気づいた。さっき子猫を抱いたときについた血の跡だ。

 さらに道路には子猫が寄りかかっていた木の枝が転がっていた。確かに子猫は木から落下し、重傷を負ったのだ。だが不思議なことに、その傷は見る影もなく消えている。


「どうなっているんだ」


 僕は困惑しながら子猫を安全な遊具の下まで帰し、状況を整理した。夢じゃないのだとしたら、僕と子猫の間に何が起こったというのか。

 夜が消えた非日常の空の下。僕は自分自身に起こった、この不思議な出来事について考えていた。


☆☆☆


『超新星の光によって、潜在能力が覚醒したのかもしれません』


 翌朝のテレビ番組で、専門家がこんな話をした。僕は箸を止め、テレビの声に耳を傾ける。


『超能力でしょうか?』

『と言うよりは、人間に元々秘められていた力が目覚めたと言ったほうが正しいでしょう。我々、人類にはまだ駆使できていない能力がたくさんあります』


 オカルトとか、超能力だとか。はっきり言って信じていない。しかし現在、十代の少年少女を中心に世界中で不思議な現象が確認されているという。

 ほんの少しの間だけ空を飛んだり、壁の向こう側を透視することができたり、他人の思考を読むことができるといったものだ。テレビではネットに投稿されたそれらの映像が次々に流れ、コメンテーターたちが驚きの表情を見せていた。

 正直、映像を見ただけでは本物かどうか判断ができない。超新星爆発の混乱を利用したフェイク映像の可能性だってある。

 しかし僕には、超新星爆発によって未知のパワーが目覚めたとする、この専門家の意見が正しいように思えた。そうすれば昨晩の出来事もすべて説明がつく。

 もう一度、能力が発動するか確かめてみなくては。

 僕はそう考えると、朝食を急いでかきこんだ。

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