PART9
爆炎を突き破り現れ出でるは赤と白銀の影が二つ。
無論それはフレアとナイト。「ひゃっほぉう!」と喜びのあまり啓助がその場で跳び上がり拳を突き上げる。
そしてフレアがナイトの背から跳躍し、宙返りなどして見せながら体勢が元に戻った所で身に纏うドレスの効力かそこに浮揚。
「――キャリバーキャリアー!!」
唱え、そして胸当てに輝く碧の宝石より彼女は一筋の閃光を天へと放つ。するとそれに呼応するように直後、曇天から碧き雷が雲を裂いて地上へと降り注いだ。
ついで生じるのは地鳴りと地響き。
それはなにか巨大なものが移動し、近付いてくる予感をこの場に居る者たち皆に懐かせる。
そして遂に現れる。
地平の彼方より来たるは白銀の移動要塞が如き、巨大なトレーラー。しかしその巨大とは実在する車両とは大きさも形状もまるで違う、それをあまりにも凌駕した超常の見た目をしていた。
白銀の巨影、キャリバーキャリアーは巨大デストラクターにも比肩し得るその巨体による体当たりを敢行し、そして受け止めたデストラクターをこれをいとも容易く吹き飛ばしてみせる。
「ひゃっほー……すンごい馬力」
その、もはや呆れてしまうほどの強引さに意気揚々と応援していた啓助もぽかんとした表情を浮かべてしまう中、ナイトが雄叫びを挙げてキャリバーキャリアーへと飛翔した。
「いざっ、ライディングフォーメーション!!」
それを唱えたナイトがキャリバーキャリアーの牽引車部分の上へと着地し、キャリバーキャリアーは地面に接地する無数のタイヤとキャタピラーを唸らせ更には後部のジェットスラスターを全開にした。
「ブレイバーソード! ライディングチャージ!!」
巨体に見合わぬ加速をするキャリバーキャリアーはナイトを伴い、体勢を崩しているデストラクターへと突き進む。
そしてナイトが構えた剣はその刃を光へと変え、それはたちまちに彼とキャリバーキャリアーを包み込むと一振りの巨大な剣と変化させた。
「はぁぁぁあ……!」
復調したデストラクターがありったけの触手を寄せ集め、結合させ造り上げたのは巨大なドリル。そして高速回転し耳を塞ぎたくなる悲鳴のような不快を奏でるそれを迫り来る輝きの剣へと突き込み、迎撃。
だが剣の鋭い切っ先はドリルと接触した瞬間にもそれを切り裂き、そのままデストラクターへと突貫する。
「――キャリバーブレイク・エンド!!」
白銀一閃。
交差した剣とデストラクターの立ち位置は入れ替わり、それを背後にした剣から再びナイトとキャリバーキャリアーは姿を見せる。
そしてナイトがその手にした剣を盾へと格納し、最後、その鍔がジョイントへと接続されるガチンという音を奏でた直後、背後に佇んだデストラクターは巨大な爆発を起こしそして光の粒子へと還った。
「……成敗」
曇天が晴れ渡って行く。
それはまるで巨悪がこの世を去った、それを人々に示すような光景であった。
再び世界に降り注いだ穏やかな日差しの下、光へと還ったデストラクターはその姿を元の無害な校舎へと戻すのであった。