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機身騎士ナイトキャリバーン/  作者: こたろう
第二話:襲われた小学校! 発進、キャリバーキャリアー!!
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PART8

「くっ……とは言え、このサイズ差は……如何(いかん)とも……」


 物量に押し切られた挙げ句、ハサミに捕らわれてしまったナイトであるが間一髪、盾で受け止めることに成功。

 その小さな機体に見合わぬパワーで自らを押し潰そうとするハサミを押し返し、潰されはしまいと堪えはするがデストラクターは再びその進行を開始し始めんとしていた。


 人とは違い、パーツとして接続しているだけのナイトの頭部である。彼はそれを百八十度回転し真後ろを見る。そこにはデストラクターの脅威に怯える街があり、ナイトの目にはそこに暮らす人々の不安な表情が見えずとも見える。


「例え過去など知らずとも、正義に燃えるこの心は本物のハズだ。サイズがなんだ、物量がなんだ! 人々を恐怖させる貴様ら外道は、プリンセス・フレアが騎士。このナイトが断じて許さん!! ウォォォオッ!!」


 そして再びデストラクターを向いたナイトの瞳には、轟々と燃え盛る正義の炎が宿っていた。彼の額と、そして胸の碧い宝石がそれは眩く輝き出す。


「今こそ正義の怒りに燃える時だ! 見せてやる! ブレイバーの底力というものをなぁあ!!」


 ナイトの心の炎が燃え移ったように、彼の右手にあるブレイバーソードが火炎に包まれる。そしてそれを振り上げるとその灼熱に、デストラクターの超硬であるはずの装甲はあまりに呆気なく断ち切られてしまう。


 そうしてハサミを破壊し、拘束から逃れたナイトはデストラクターへと突撃。いまだフレアが皆を解放していないこともあり、撃破では無くその機体へと体当たりを決める。


 デストラクターは魚籠ともしないが、無論ナイトもそれで突き飛ばそうなどとは思っていない。剣を盾へと格納し、両手を校舎へ突き立てるとスラスターの出力を全開にしてそれの進行を少しでも遅らせようと試みる。


「く、ぅう……っ!!」


 ナイト自身よりも巨大な噴射炎を上げながら、しかしまだデストラクターは止まらない。しかし速度は落ちているのか、それはナイトの妨害を嫌がり失ったハサミに代わって触手を彼に繰り返し叩き付けた。


 感情があれば機体のダメージは痛みとして伝わる。ナイトから苦悶の声が挙がり、しかしそれでも彼は堪えデストラクターを押し続ける。


 無茶だと、それを見上げている警官たちは皆が思った。彼らで無くともそう思うことだろう。当然だ。ナイトとデストラクターにはあまりにも大きさに違いがあり、パワーの差も歴然としている。


 ――それでも、そうは思わない者が一人、そこには居た。


「が、がんばれーっ! 負けるな! 負けるなあ、ナイト!!」


 それは大智である。

 一度勇気を振り絞り、皆のためデストラクターの前に立ちはだかった彼はもう諦めたりはしない。自分には無い力がナイトにはあり、そしてそんな彼のために出来る事があるならば、それは彼を信じることであると大智はその声援を送る。


 そんな大智を救うため、身を呈して飛び出した警官の青年もそうであった。正確には、声援を送る大智の勇気を思い出し、彼もそれに共感した。

 故にナイトを応援する。鼓舞する。


 二人で精一杯の大声を、腹の奥から力を振り絞り唯一の勇気と一緒にナイトへと届ける。


「二人とも……!」

「――そうだ、頑張れ! ちっさいロボット!! お前が頼みなんだ!!」


 (いや)、ナイトにだけでは無い。二人の勇気を感じ取ったのはナイトだけでは無かった。現場に対応した警官たち、泣き言を言うだけで精一杯だった彼らもその想いを受け取り奮起していた。


 拡声器を使い、その声をナイトへと送る。

 自分たちが見ている。応援していると彼に伝える。


 そしてそれに、ナイトの心はより熱く、激しく燃えた。

 彼の瞳の炎はより大きく、宝石の輝きはより眩く。


「……ここで折れたら男が廃る……否! 騎士が廃る!!」


 雄叫びを挙げたナイトの起こす噴射炎が更なる巨大化を見せた。同時に彼のバックパックが放電、火花を散らし小さな爆発を起こす。既に限界を超越している故の事象であった。


 しかしそれでも構わずにナイトはデストラクターを押し返そうとする、そして彼が一際大きな声を挙げた時、遂にそれの巨体が停止。地面に接地している無数の足が引き摺られ後退すると共にもつれ、デストラクターが尻餅をついた。


 おお――と歓声が挙がる。更に――


「ナイト! 待たせたわね!!」


 待ちにも待ったフレアの声がナイトの頭の中に響き渡る。

 宝石を通じての会話であり、これによりナイトとフレアは離れていても会話が出来るのだ。


 そして大智が気付く。

 校舎の玄関――今はデストラクターの口になっているその奥に、教員生徒を引き連れたフレアの姿があることに。


「姫……待ち兼ねましたぞ! よくぞご無事で」

「はんっ、当たり前よ。アタシを誰だと思ってるの?」

「我が姫、プリンセス・フレア……!!」


 その通り――得意気なフレアの声に安堵し、そして勝機を見出したナイトの行動は迅速であった。

 デストラクターを押し返すことを止め、触手を躱し玄関へ飛んだ彼はまるでプレス機のように頻りに開閉を繰り返している玄関の、デストラクターの鋭利な牙の揃った上顎を頭上に掲げた盾で以て受け止める。

 これで完全には閉まらない。


「みんな、今の内よ!!」


 これまで啓助と共に皆を先導し、立ちはだかる敵を蹴散らしてきたフレアが今度は皆を先にデストラクターの内部から逃がし始める。


 当然啓助を真っ先に行かせるつもりでいた彼女だったが、当人にその気は無いようで彼女と共に皆を逃がしていた。言っても聞かないので、フレアもそれを渋々ながら認めるのであった。


 そうして警官たちが暴れ回る触手の気を逸らしている内にフレアと啓助を残した全員が脱出に成功。フレアに尻を蹴っ飛ばされながら、啓助も出口を支えているナイトの傍らを通り抜けて行く。


「ナイト、かっくいい!!」

「坊ちゃまもご無事で! ナイトは安心しましたぞ……っむ!」

「あっ……ナイト!!」


 彼が通り抜けた直後、デストラクターの上顎が更なる力を込めた。堪らずナイトは片膝をついてしまい、啓助に平気だと強がると彼は首を後ろに回転させ、残ったフレアへと急ぎ脱出をと促す。


 フレアもそれに肯き、駆け出す――が。


「うわっ!? な、ナイト!!」

「ちょっ……ナイト、前! 前!!」

「なんですと……ぐはっ!?」


 警官らを無視し押し寄せる触手を啓助は間一髪、側転して避けるものの、それの狙いは彼で無く無防備なナイトであった。


 啓助が彼に危険を知らせようと悲痛な声を出すが遅く、そして危機を知ったフレアの呼び掛けもまた然り。ナイトが首を正面に戻した時には彼は無数の触手に突き飛ばされデストラクターの口の中へ。出口も閉ざされると二人は完全に閉じ込められる形となってしまった。


「ナイトとフレア姉ちゃんが……食べられちゃった……」


 唖然とする啓助であったが、彼の目の前で尻餅を付いていたデストラクター再び立ち上がる。それを前にし、怒り心頭と言った顔で啓助は睨む。


「あの二人がこの程度で負けるもんか……ナイト! フレア姉ちゃーんっ!!」


 そびえ立つ巨悪。それに向け、啓助が叫ぶ。

 気が付けば晴天は黒雲に覆われ、それは悪の化身の勝利を称えるかのようであった。


 そして足元に居る啓助へとデストラクターがその赤い双眸を向け、嘲笑を挙げる。身構えた彼に触手が狙いを定めた――直後、デストラクターの閉ざされた口が爆発を起こす。

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