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機身騎士ナイトキャリバーン/  作者: こたろう
第二話:襲われた小学校! 発進、キャリバーキャリアー!!
16/50

PART6

――機身騎士ナイトキャリバーン/――



「デェストロォォイ……ォォイ」


 無数の黒鉄で出来た触手を生やし、街へと繰り出さんとするのは――校舎。

 時計塔を頂天とし、その周辺に赤く輝く両目と正面玄関が変化したギザギザの口腔を備えた、デストラクターへと変貌した小学校そのものである。


 周辺をパトロールしていた警察が数名、車両を伴い駆け付けてはデストラクターへと腰に提げた拳銃を発砲するが当然効き目は見られない。

 それどころか、時折窓辺に見える人影は子供たちで、それに当たると無闇に発砲すら出来なくなってしまっていた。


 今彼らに出来る事はと言えば応援を待ちつつ、車両でデストラクターの進路を塞ぎ街に出さないことだけである。しかし――


「デス! デス! デェェェストロォォォイ!!」


 デストラクターの振り上げた触手の一本が行く手を阻む警察車両へと振り下ろされ、慌てて飛び退く警察の目の前でそれをぺしゃんこに叩き潰してしまう。


 やがて爆発し炎上する車両を見ながら、その場にへたり込んでいた警察の一人がハッと我に返り、無線を取り出すと叫ぶ。


「パトカーなんかじゃ止められないよ! 応援早く早く!! 自衛隊とか呼んでくれよお!! 戦車とかさあ!!」


 もはや報告とは呼べず泣き言。しかし真実でもある。

 ただでさえ効果の無い拳銃は取り込まれた校舎内に子供たちが居るせいで完全な無力。


 バリケード代わりの車両も触手で蹴散らされてしまううえ、そもそもとして建造物まるまる一つ動き出しているようなデストラクターを止めるには不十分もいいところ。


 そんな警察を、窓辺から見下ろすのは子供たちだった。


「ダメだ、ケーサツじゃどうにもできねえよ!」

「おいケースケぇ! ナイトとかいうの呼んできてくれよぉ!!」


 担任に庇われながら教室の隅に固まる生徒たちの中で昇と将太が喚く。特に将太は半べそどころが完全に泣いてしまっていて、側に居る雅に縋り付きながら更には啓助に助けを求める。


 そして啓助はと言えば一人、つっかえ棒が足りずに封鎖できなかったもう一つの出入り口の前に居て、そこから入ってこようとするデストラクターにより動き出した人体模型や本、そして触手らと大立ち回りを演じていた。


 飛び込んでくる本を叩き落とし、触手を蹴り飛ばして、そして人体模型の繰り出す一撃を掻い潜りドロップキックで廊下へと蹴り出した啓助はその反動で宙返りし着地すると共に振り返ると困り顔で言った。


「でもボク、ケータイ持ってない……とゆーか、ナイトも持ってないんじゃないかな」


 なんだよそれぇ――と再び泣き出した将太をあやす雅であったが、その時ふと不安げに窓から外を見るとあるものに気が付いた。


「あっ、ダイチくん!!」


 生徒や担任から驚きの声が挙がる。

 そして皆が窓辺に張り付き外を見ると、そこには校門方面へと駆けている大智の姿があった。それを見て昇は「あのヤロー、一人で逃げ出しやがったな!!」と息巻くものの、様子が変だと言ったのは雅だった。


 啓助も気になるのだが、如何せん復活した人体模型との取っ組み合いが終わらないもので見に行けず、もどかしさに「ねえってば! なにが起きてんの!? ボクも見たいよ!!」と叫ぶと共に人体模型の太もも付け根に蹴りを見舞った後、背負い投げにしてまた廊下に叩き出す。


 更に迫る触手や本は、転がっていた生徒の誰かの筆箱を開き、中にあった鉛筆とコンパスを投てきし壁面に串刺しにして動きを封じてようやく、彼は窓へと駆け付けた。


 そこではやがて立ち止まり振り返って、迫るデストラクターへと両手を広げるとまるで通せんぼうするように立ち塞がった大智の姿があった。担任の女教師は真っ青な顔をして彼に逃げるよう叫ぶが、届かない。


「――と、止まれぇ! でないと、でないとぼ、ボクがお前をやっつけるぞお!!」


 大智が叫ぶ。

 全ては自分が原因であると、唯一校舎の外に居て難を逃れた彼はあの後悟っていたのである。


 ――だからなんとかしなくちゃいけない。怖いけど、このままじゃみんなが死んでしまう!!


 震える足でしかし確りと立ち、小さな身体を広げた両腕で精一杯大きく見せながら、精一杯の勇気で、涙しながらもデストラクターを怒鳴りつける。


 警官の一人が彼に気付き、急ぎ助け出そうと駆け出す。

 しかしデストラクターはそんなちっぽけで無力な大智を嘲笑うと、触手を振り上げ彼のうえに大きすぎる影を落とす。


 それが振り下ろされる間際、大智は怖くて両目をきつく閉ざし、そして教室では悲鳴が挙がり堪らず担任が失神する。それをやむなく支える羽目になった啓助が、やはりあの時無理矢理にでも引き留めておくべきだった。捜しに行くべきであったと悔やむ中、それはやって来た。


「その勇気――」

「――真に天晴れ、お見事にござる!!」


 迸る一筋の閃光が触手を消滅させる。

 大智を抱え上げた警官や、教室の生徒たちが空を見上げ、そして啓助の顔に満面の笑みが咲いた。

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