PART4
――機身騎士ナイトキャリバーン/――
――校舎裏。
鳴り響くチャイムの音の中、日陰になっていてひんやりじめじめしているそこで、校舎のざらついた壁面に背中を預けながら三角座りをして鼻を啜る音を立ててるのは、先ほど教室を飛び出した大智だった。
膝との合間に顔を埋め、声を殺して泣く彼の胸中には情け無い自分と、そんな自分をいじめた二人、そしてまるで見せ付けるように助けにやって来た啓助への怨み辛みだとか嫉妬する負の想いが渦巻いていた。
ボクがもっと強ければ。ボクがもっと大きければ――
――あんなヤツら、やっつけられるのに!
「その想い、頂こう」
突如響いた声に驚き大智が顔を上げると、そこには黒い外套を纏った何者かが居た。
不審者だとその異様な出で立ちに怯える大智は防犯ブザーをと思い至るも、それがついたランドセルは教室であった。
逃げ出そうにもその人物の全貌をひた隠しにする套の奥で輝く真紅の光が恐ろしく、大智は腰が砕けて立ち上がれない。
外套のなにかが彼に歩み寄り、その手を差し伸べる。袖から覗いたのは四角い指先。それらが掴んでいるのは、暗い紫をした闇色の宝石である。
そしてそれを大智の額へと押し付ける。するとたちまちに大智の全身から力が抜けて行き、怪しげな揺らめく光となって彼の体から放出される。
「……悪くない、な」
宝石はそれを吸収して行き、輝きを増す。
外套の存在はそう呟くとへたり込む大智に背を向け、すると手にしたその宝石を宙へと放った。
宝石は始めこそ重力に引かれ落ちようとするものの、すぐに噴き出した閃光によりそのまま浮揚。迸った光はそのまま拡大して行き、そして遂には校舎を飲み込んでしまうのであった。
その直前には外套の存在も、その套の下から闇色の噴射炎を噴出し宙へと舞い上がり巻き込まれることから逃れ、空高くで様子を観察。一層に真紅の輝きを強くする。
「さぁ……キボウの姫よ、その騎士よ。どうする?」
くつくつと喉に燻らせた笑声を挙げながらその場を去り行こうとする外套の存在。しかし飛び込んできたカラスと不意の接触を起こしてしまい、カンッという間抜けた音共にそれともんどり打って街中の方へと墜落してしまうのであった。
「――deathtroyッ!!」
悪の雄叫びが真昼の街に響く。それはまるで、束の間の平和の終わりを告げるサイレンのように、何処までも何処までも。