PART10
――機身騎士ナイトキャリバーン/――
と言うわけで――
「今日からフレア姫共々お世話になりまする、自分はナイト。姫とこの星を守護する聖霊騎士でござりまする!」
どうぞよろしく――そう威勢良く玄関で挨拶をするのは名乗った通りナイト。彼の後ろではフレアと啓助も立って事の成り行きを見守っていた。
そして出迎えたしのぶと丈治はと言えば、「あらあらぁ」とのんびり屋なしのぶは別として丈治は当然ぽかんと大きな黒縁眼鏡の奥の、ただでさえ点のような目を更に丸くし白黒とさせていた。
「な、ナイト……クン? ナイトって、騎士……?」
「はっ! ナイトと申しまする。聖霊騎士のナイト!! 旦那様、どうか一つ、よしなによろしく願い申しまする」
後ろで苦笑する啓助。フレアは素知らぬ顔だ。
ナイトは一人意気揚々としてまず丈治の元へと歩み寄ると、その頭でっかちでずんぐりむっくりな体型とは裏腹に、存外巨大なナイトに圧倒されてしまい仰け反ってたじろいでいる彼へ短い腕に付いた角張る手を差し出した。
これはご丁寧にどうも――大きさ故の圧力は仕方なしにあるものの、少なくとも悪意だとか敵意だとか、そう言った嫌な感じはナイトには無く。古風というかおかしな彼のその畏まった口調に丈治も何故か畏まってしまい、ぺこりと会釈しつつ、ナイトが差し伸べた手を彼は握る。ナイトもそっとその手を、比べるとあまりに巨大な手中に包んで握手を完成させるのであった。
そして、しのぶ。
「あのおっきな怪獣をやっつけたんですってねぇ、すごいわねぇナイトちゃん。啓助ちゃんとフレアちゃんを助けてもくださって……家で良かったら好きに使ってね?」
「ははぁ! 大変ありがたき幸せにござりまする、ご内儀さま!! 不肖このナイト、旦那様やお内儀さま、ケースケ坊ちゃまのためにもまた、全力を尽くしたいと思いまする!!」
ははぁ――と片膝を付き、二人の前に跪いたナイトは頭を垂れながら大仰に宣言する。その様子を見守っていた啓助は驚き、自分を差し置いてと感じたフレアは浮かべた苦笑を怒りに引きつらせる。
そしてしのぶと丈治は互いに顔を見合わせた後、改めてナイトの姿を見下ろすと流石に可笑しく感じたらしく笑い出すのであった。
当のナイト本人は大真面目で、笑われているこの現状が理解出来ないようで二人を見上げると首を傾げ、その後首を捻り背後のフレアと啓助を見るのだがフレアはぷいとそっぽを向いてしまい、啓助は二人と同じく笑った。
何が何やら理解が及ばないまでも、悪くない空気、その雰囲気に自然とナイトも笑声を溢し、呆れ返るフレアを残して全員が穏やかな時間をここに共有するのであった。
――こうしてプリンセス・フレアは自らの聖霊騎士ナイトを従え、遂に襲来したデス・ト・ラクシオンへと立ち向かうこととなるのである。