PART1
よっしゃ、カクヨムでも投稿してる作品だ!
ロボットがバトルするファンタジーだぜ!!
タイトルの/はそのままスラッシュと読んでください。
「なんで動かないの? どうして動かないのよ!!」
薄暗く手狭な空間。
そこに白くぼんやりした光に照らされ、浮かび上がる愛らしく可憐な顔。長めの前髪を左に流し、碧眼を輝かせる少女が憤慨して声を荒げる。
そしてそんな彼女がその顔を苛立ちに歪ませながら見詰める先にあるのは彼女の小さな手のひらには収まらないほど大きな宝石。白く輝く無色透明なそれを少女は今一度掲げる。
「我らが偉大なるキボウの母よ、選ばれし我が魂の呼び掛けに応え、今此処に強き御霊を鋼の身体に宿せ――」
宝石を突き付ける。それは空間の奥に鎮座せし歪な体を持った冷たく硬質の物体。
頭があり胴体と手足。辛うじて人の形をしているとも言えなくもないそれであるが、頭に当たる部位が異様に大きい。
頭身でいうなれば頭と胴体の比率がほぼ同じな、二頭身の人形とでも言うべきか。
しかしそれは少女の呼び掛けに応えない。
暗く沈んだ眼孔部とでも言おうか、そこには何の光も宿りはしない。
しんと場が静まり、空気が冷え込んで行く。代わりに少女の頬は膨れ、みるみる顔が赤くなり、頭からは湯気が立ち上り始める。
「――宿れって、言ってんでしょお!? この……! 役立たず! のっ! ポンコツ! のっ! ガラクタ……めっ!!」
キィキィと喚きながら終いには暴れ出し、宝石をぶつけたり足蹴にしたり。それでも人形はぴくりともせず、やがて疲れ果てた少女は大きな溜め息を吐いて横たわる。
そして手にした宝石を掲げ、既に光を失っているそれを見上げながら「なーんで、アタシの呼び掛けにだけ答えないワケ?」と独り言ちた。
「……ちゃん。……姉ちゃん? フレア姉ちゃーん!?」
「うるさいわね、なによ、ケースケ」
呼ぶ声に気怠く応えながら、フレアが宝石を掴んでいない左手を伸ばす。そして端にかける指先、そしてその手を引くと薄暗く狭かったその空間が明るく照らし出され広く開放感が押し寄せた。
――そして少年啓助が見上げる先は押し入れで、フレアはそこの戸を引き中の二段目から押し入れの外に居て、己を見上げる啓助を見下ろした。啓助が答える。
「ごはんだけど。あと、うるさいって。おとなりさんが怒るよ」
「それは……失礼したわね」
リビングへと戻って行く啓助を見送った後、寝床である押し入れから脚を投げ出しつつ二段から降りる間際、今だ眠る人形を見た。
「……急がないと」
啓助の声が遠く聞こえる。
フレアはそれに返事しつつ、押し入れより降りてその場を後にした。