6話 「お風呂とタオルと洋服と」
ガチャッ
彼が水浴びから帰ってくる。
なるほど。
あの部屋が水浴びの部屋か。
彼が柔らかそうな布で頭を拭きながら出てきた。
先ほどとは違う服に着替えていた。
「お風呂。」
彼がそう言って水を浴びるジェスチャーをした。
この国では水浴びの事をお風呂というのか。
私もそろそろ水浴びをしたいと思っていたところだったので、ありがたく水浴びをさせてもらおう。
立ち上がって服を脱ごうとした。
「わーっ!わーっ!」
突然大声を出されて、水浴びの部屋に連れていかれてドアを閉められた。
「《…何か間違ったのだろうか?もしかして順序などがあったのだろうか?…まぁ、気にしても仕方ない。私はまだ何もこの国の事を知らないのだからな。》」
そう言って入ってきたドアと反対のドアを開けると、凄い煙。
いや、これは煙ではない。
お湯だ。
まさか、これだけのお湯を水浴びのためだけに沸かしてくれたというのか!
なんというもてなしだ。
私は何も返すことが出来ないというのに。
だが、この厚意を無駄にするなんて私にはできない。
お湯で丁寧に体を洗う。
いつも川の水だったため、これはかなり気持ちがいい。
お湯の水浴びは慣れてはいないがなかなか良いものだ。
お湯の中に足を付けて回りに座る。
これはクセになるほど気持ちいい。
「《~♪~♪》」
つい歌ってしまっていた。
あまりに気持ちよくて完全にリラックスしていた。
水浴びから出てくると、彼が頭を拭いていた柔らかそうな布が何枚も置いてあった。
それの隣に彼が着ていた服に似たものも用意されていた。
「《これで体を拭いて、こっちに着替えるのか。ありがたい。》」
柔らかそうな布は、体を拭いてみてよくわかった。
本当に柔らかくて、凄く水を吸ってくれる。
特に髪を拭く時は良かった。
私の髪は長くて腰ほどまである。
そんな髪を濡れたままにしていては彼の家を濡らしてしまう。
一枚では水を吸いきれなかったが、二枚も使えばかなり吸ってくれた。
ある程度拭き終わると、彼が用意してくれていた服に着替える。
「《…今度は何も間違っていないよな。》」
自分で確認して戻ると、彼は小さなバックを持って私を待っていた。
私が水浴びから出てきたのを確認すると、「買い物」と言って家のドアを開けて外に出る。
私も彼を追って出ようと靴を履こうとしたら、彼が履いているモノと同じようなものを用意してくれていた。
紐を通して締める靴のようだ。
履いてみて改めて思った。
凄く軽くて履き心地が良い。
「タカヨーシ!」
彼の名前を呼んでご機嫌に二人で階段を下りていく。
透明な壁も通過して、私とタカヨシの新しい冒険が始まる!