25話「ケレヴリルの杞憂と両親」
朝からタカヨシに車に乗せられて移動する。
私は覚悟を決めて目を瞑ってその時を待つ。
あぁ、またタカヨシと一緒にプレミアムチーズインハンバーグが食べたいなぁ。
最後の心残りだ。
車が停車し、優しく「着いたよ」と声をかけられる。
目を開け車から降りる。
目の前にあったのは貴族や領主の館でもなければ処刑場でもない。
表札に「浅谷」と書かれた二階建ての一軒家だった。
タカヨシの両親に会った後に連れて行かれるのだろうか?
私の手をタカヨシが優しく握る。
その手は微かに震えていて汗ばんでいる。
タカヨシも緊張しているようだ。
タカヨシが家のドアを開ける。
「ただいまー!」
初めて聞くタカヨシの大きな声にビックリして目を丸くしてしまった。
確かただいまという言葉は帰ってきた時に言う言葉。
奥から女性が現れた。
「急に連絡してきたと思ったら……おやおや、孝義?この方は?」
「俺の彼女。ケレヴリル=アルヴァ=ロドヴィッチさん。ケル、この人が俺の母の美代子。」
タカヨシのお母様!?
なんと若い!
エルフではないのにこの若さ!
秘薬か?
秘薬でもあるのか?
そんな詮索は置いておこう。
「ミヨコさん会えて光栄です。私、ケレヴリル=アルヴァ=ロドヴィッチと言います。タカの恋人です。」
ご挨拶、変では無かっただろうか?
ミヨコさんは笑顔で家の中へと案内してくれた。
無事に最初の関門は乗り切ったようだ。
まだ処刑されないで済む。
案内された部屋には男性が座っていた。
「お父さん、孝義が可愛い彼女さん連れてきてるわよ」
「む?」
男性と目が合う。
「おやおや、これは失礼しました。私、浅谷 浩孝と申します。えっと……。」
「あっ、失礼しました。私、ケレヴリル=アルヴァ=ロドヴィッチと言います。タカの恋人をしてもらってます。」
ヒロタカは私の挨拶に笑顔でこたえてくれた。
そして4人で椅子に座りテーブル越しに向かい合う。
これから尋問されるのか?
だがこの2人からはそのような気配は感じない。
するとタカヨシが口を開いた。
「親父、母さん!俺、ケルと結婚したい!でもケルには訳があって戸籍がない……。だから市役所員の親父に協力してほしい!何とか戸籍を手に入れる方法知らないか?」
タカヨシの目は真剣そのもの。
そして私と結婚したいと言ってくれた。
私は心の中から安堵した。
私を連れ出したのは両親に結婚の報告と、私の戸籍を作る相談だった。
本当にタカヨシは優しい。
私には勿体無いくらいだ。
ヒロタカさんが口を開く。
「訳があって戸籍がない?ケレヴリルさん、どういう訳か聞いても?」
私は頷いて自分なりに言葉をまとめる。
「信じてもらえるかわからない。でも私、実は最近この世界に来ました。私はエルフの里<ベルシェ>のエルフの弓兵です。戦闘中に敵の魔法で死んで、女神を怒鳴ったらこの世界にいました。エルフじゃなくなってしまい、言葉は通じず、常識も違う。お金もないし、住むところもない。そんな私をタカが救ってくれました!」
私がそう話すとミヨコさんは面白そうにヒロタカさんを見る。
ヒロタカさんは腕組をしたまま眉間に皺を寄せている。




