魔物が来るらしい 1
こんにちは。投稿頑張ります。
3年前、古の勇者が封印したとされていた魔王ヴェヒムスが蘇った。魔王の復活と共に絶滅したと思われていた魔物も復活し、人の住む村や町を次々に襲っていった。そんな中この国アルギスの首都ビルダムでは失われし魔法「ロストマジック」といわれる、永い歳月により忘れ去られたとされていた召喚魔法を成功させ、異世界より勇者候補となる英雄を呼び出した。
その知らせを首都から1000キロ離れたインガナ村に住むシルクが聞いたのは、召喚から3年経った、つい最近のことだった。
「なあシルク、知ってか?異世界から勇者が召喚されたらしいぞ。」
ヨレヨレのタンクトップから凹凸の激しい腕をさらしている男が言った。
「そんなのもうとっくに知ってるよ。知らなかったのなんてギーヴだけじゃないか。」
(俺も今朝勇者の話を聞いたんだけど・・・。)
馬車に乗せられた木箱をギーブから受け取りながらシルクは答えた。
「まじか!俺の耳は早いほうだと思ってたんだけどなぁ。」
「うそだろ!お前の耳が早い??お前村でなんて呼ばれてるか知ってんのか?無知のギーヴだぜ?な?ムチノギーブさんよっ!」
「それ本当か?本当だったら割とガチで凹むんだけど。」
「嘘に決まってるだろうが。」
シルクは木箱に視線を向けたまま言った。
「嘘かい!」
シルクとギーブは同じ村で生まれたいわゆる幼馴染であった。成人後、シルクは実家の商店を継ぐために村に残っていたが、ギーヴは冒険者になるため村を出ていった。しかしそれから半年もたたないうちに村へ帰ってきた。理由を聞いても全く答えないギーヴに対して村の人は厳しく当たっていたが、シルクだけは優しく彼を迎え、とりあえず自分の仕事を手伝ってもらうことになったが、そのまま時は流れ、もう10年近く一緒に仕事をしている。今はちょうど隣の村から商品を仕入れてきたところであった。
「お~い!!!大変だぞ!!!!!」
村の入り口から近所に住む農家の娘でありシルク、ギーヴとも幼馴染のカタリが叫びながら走ってきた。
「どうしたんだよ?そんなに大声上げて。とうとう水虫が治ったのか?」
ギーブがいつもの調子で答えた。
「水虫はそう簡単に治んねえんだよ!!毎日薬塗ったりして気使ってあげないと・・・ってそんなの今はどうでもいいんだよ!」
「なんだよカタリ、水虫以上に重要なことなんかあんのか?」
「あるわ!いっぱいあるわ!!って今日はそうじゃないんだよ。ほんとに大変なんだ。」
「何があったんだ?」
これまでずっと作業をしていたシルクが会話に参加してきた。
「勇者だよ!!勇者がこの村に来るんだよ!!!」
「まじか!!すっげぇじゃん!!どうしよ!どうやって迎えようか。俺らの店も奮発しねえといけねえよな!」
「お前の店じゃなくて俺の店な。お前は早くちゃんとした仕事見つけろって。」
「いいだろぉ?別に俺らの店って言ったって。うちの店であることには変わらないんだから。」
「変わんないけどさ・・・。」
「だいたい、そろそろ村に帰ってきた理由教えろよ。もう10年だぜ?何かやらかしてたとしても、もう時効だろ。」
「いろいろあったんだって。こう、説明が難しいな?いろいろ。」
「お前、前聞いた時には「単純な話なんだ。」とか言ってたじゃねえか。前と変わってんぞ。」
「いいだろなんでも。もうよくないか?その話。飽きてきたろ。」
「お前がそういうこと言うか?なあ、なんなんだよずっと隠してさ。」
「別に隠してるわけじゃねえけど・・・。」
「まあ、いいけどさあ。」
シルクは真剣な顔でギーヴのこれからを考えていた。
「そんなのどうでもいいんだって!!ほんとに大変なんだって!」
「カタリな、お前にとってギーヴのことはどうでもいい足の指の爪ぐらいどうでもいいことかもしれないけど、俺にとっては大きな問題なんだぜ?俺が甘やかしてるからギーヴが独り立ちできてないとかギーヴの親父さんにも言われてんだぜ?」
「シルクお前、うちの親父にそんなこと言われてたのかよ・・・。てかカタリももうちっとは俺のこと気にして…」
「二人ともまじめに聞いてっっ!!」
蚊帳の外だったカタリがプンプン怒っている。そしてこう続けた。
「勇者が来るってことは、ここに魔物が現れるってこと。つまり・・・。」
シルクとギーヴが唾をのんだ。
「ここ、インガナ村が戦場になる。」
「「…………わぉ。」」