博麗の巫女
『…え?』
思わず呆けた返事をしてしまった。
慧音は両手で顔を覆いながら言葉を紡ぐ。
『私は私自身を許せないよ…人を喰ってしまうなんて…』
慧音の息が荒くなってきている。
『…なぁ何でお前はどうして妖怪に味方する?』
その質問は私がずっと気になっていた事だ。
慧音の事情についても分かった。
けれど、けれどもだ。私みたいに人からはぐれた存在でもない、紛れもなく人間だ。
人を喰った事には驚いたがそれでも人に変わりはない。
『ふと思ったんだ』
慧音がぽつりと呟いた。
『妖怪にとっての食事は人なんじゃないかと、そしてそれで人を喰うのは当然なのではないかと』
雨はいつの間にかやんでいて、水の滴る音だけがこの空間に響いている。
『そこで私は妖怪の在り方について考えた。妖怪は人に害をなすそれが理由で排斥される。人間はいつだって排斥する側だからな』
『…』
『私は気づいたんだ。妖怪が人里を管理して人里を守っているという事実に』
けれど、と慧音は言う。
『管理をしているのは強い妖怪だろう。なら力のない妖怪は?ただ妖怪という理由だけで退治され排斥される…それは理不尽だ。力のない妖怪だって生きている、人間と同じ…なら生きていく権利だってあると思う』
それが理由だよ。と慧音は語った。
先程よりも慧音の息が荒くなってきている。
『…?慧音?どうした?』
『分からない…さっきから…体の調子が…』
『…!』
『多分…今夜…満月のせいで…』
『お、おい!しっかりしろって!』
慧音の肩に触れた瞬間私は気づいた。
慧音から妖気が溢れ出ている。
『お、おい一体…』
『警告はした…って聞いたが』
『!』
離れた所から声が聞こえ振り向くとそこには。
赤い衣装を纏った女性がいた。
『…誰だお前』
ヤバい
何でここに?
もしかして あれ きえ
『悪いな』
突如真横から声が聞こえた。
瞬間、慧音が吹き飛んだ。
『ぐぼ…』
『慧音!!』
『紫から警告されたんだろ?』
気づけば首を掴まれていた。
『がっ…か…!?』
『私は博麗の巫女だ』
『…!?』
(博麗の巫女だと…!?何でここに…!?)
『問うぞ』
博麗の巫女は恐ろしいほど鋭い眼で睨みながら喋る。
背筋が凍るほどの冷たい視線だった。
『お前はあの小娘とどうゆう関係かしら』
『…』
『返答次第によっては痛い目にあうわよ』
私は、私にとって…。
私はフッと笑ってしまった。
『お前に言っても分からんさ』
『…あっそ』
首を掴んでいる手に力が入る。
その手を私は片手で掴む。
『無駄よ』
博麗の巫女は一層手に力を込める。
『な、める、なよ…人間がぁぁああぁあ!!!』
私は雄叫びをあげる。
瞬間博麗の巫女の手が爆発した。
思わず博麗の巫女は手を離す。
しかし博麗の巫女の手は火傷しているだけで目立った外傷はない。
『あなた…何者かしら』
『…手を引け』
『断る』
即答だった。
どうしても慧音を狙うつもりらしい。
『ならてめぇは慧音をどうするつもりだ』
『殺すわ』
『!!』
『理由が聞きたいのかしら?』
『いいや…今のお前の言葉だけで十分だ!!』
私は手から炎を生み出す。
ゴウ!!という音とともに周りの景色が炎によって歪む。
『殺すわよ化け物』
『殺すぞ人間』
そして二人は激突する。