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幻想異変録:replay  作者: 凍曇
妹紅編
6/32

警告

『…そこまで大事か?ここ(幻想郷)は』

『…ええ、私にとってはかけがえのない大切なものよ』


 そう言うと空間を割った女は扇子を開き口元を隠す。

 優雅な動きだが鋭い視線はこちらを睨み続けている。


『なぁおい!だからこの女性はいったい誰なんだ?』


 慧音が私の背中にひっつきながら質問してくる。

 慧音はやや混乱しているようにも見える。

 目の前で人が喰われてその次にこの女の登場だ。

 混乱するのも無理はない。


『私の名前は八雲紫、よろしくね上白沢慧音さん』

『なんで…私の名前を…』

『さてどうしてでしょうね?』

『それで?お前が何の用だ?』


 2人の会話に私は割って入る。

 このまま会話が進めば危険な事になりかねない。

 私はそう思い話しかけた。


『あなたも幻想郷のルールは知っているでしょ?そこの娘は幻想郷にとって害がある可能性を秘めているのよ』

『…たかが人間なのにか?』


 私は嘘をついた。

 この女…紫の言う通りだ。

 実際慧音は幻想郷のルールについて勘ぐり始めている。

 それは今までの慧音との会話で充分分かっているつもりだ。


『…それ、本気で言ってるのかしら?』

『あ?』

『ふぅん…なるほど…』


 紫は扇子で口元を隠したまま鋭い目をさらに細めると扇子を閉じて私に突きつけてきた。


『まぁ良いわ。あなたが知らないなら無理もないわね』


(本当に嘘が通じたのか?)


 まさかこの女に嘘が通じるとは思ってもみなかった。

 紫はいつも全てを見透かしたような目をしており嘘が通じない類だと私は今まで思っていた。


『なら、今回は警告だけ伝えるわ』

『警告?』

『今回は見逃してあげるけど余計な真似はしない事ね藤原妹紅、あなたもだけど上白沢慧音』


 扇子を次は私から慧音に突きつける。


『わ、私?』

『あなた自分でも気づいているでしょ?このままだと危険な目に遭うわよ』

『…だけど私は』

『なるべく穏便に過ごす事ね。あまり人前に出ない事をオススメするわ』

『…』

『満月の夜には気をつけることね』

『…!』


 紫は扇子を懐にしまうと空間を割る。

 紫の後ろには割れた空間が広がっている。


『警告はしたわよ』


 じゃあね。と言い残すと紫は割れた空間に入っていきそして割れた空間は紫と共に消える。


『…』


 慧音は黙ったままである。


『…慧音?』

『そういえば…今日は…満月だったよな…』

『ん?あ、ああ…それがどうかしたのか?』


 満月がいったいどうしたのだろうか?

 何故慧音は寂しい顔をしているのだろう。


『出来たらで良いんだか今日…一緒に居ても良いか?』

『けど私と一緒に居たら…』

『無いんだ』


 感情の無い声が私の言葉を遮る。


『無いんだよ』


 慧音はもう一度言う。

 そして慧音はある事実を伝える。

 それは私にとって驚きだった。


『私には、家も、親も、繋がりも、何も…何も無いんだよ』

『…分かった。先ずは帰ろう』

『うん』


 そして、私達は迷いの竹林まで帰ることにした。

 まだ雨は降っていたが急ぐ気にもなれず歩きながら帰ることにした。

 慧音は俯いたままである。

 気になることはある。

 慧音は人里に住んでいると言っていたと思う。


『なあ、さっき言っていた何も無いってのはどういうことだ?』

『私は…人里ではあまり人とは関わらないようにしているんだ』


 人里?人とは?人間であるはずの慧音がそう言う事に違和感は覚えてたが指摘はせず慧音の言葉を聞く。


『原因は私にあるっていうのは分かっている。けど私は多分このままじゃ里にも居られなくなるんだろうな』

『どうしてだ?お前をそこまで追い詰める原因が、理由がまったく分からない』

『実は私は…病に蝕まれているんだ』

『病…?』


 病だけで人里の奴らは迫害をするのだろうか?そこまで恐ろしい病なのだろうか?

 今までの慧音にはそんな片鱗は全然感じなかったし健康的にも見えた。

 話しているうちに迷いの竹林に着いた。

 慧音のためにも雨宿りをしたいとこだが生憎そんな場所はこの竹林にはない。

 せめて雨が凌げるように出来る限り竹が生い茂っている所に行きそこで大きな石があったので慧音と一緒に腰掛ける。



『原因不明の病なんだ』


 ぽつりと言葉を漏らした。


『満月の夜になるといつも決まって記憶がないんだ。けど自分の身体が変なんだ』

『変?』

『ああ、なんて言えば…満月の夜になると必ず体調を崩すんだ。それも結構酷くてな何日か寝込んでしまうんだ』


 なるほど満月の夜になると体調を崩す病か。

 聞いた事はないが確かにそれは深刻な問題だ。

 けど、ある疑問が拭えなかった。


『どうしてその病気のせいで何も無いんだ?ただ病気ってだけだろ?それで人と関わる事に遠慮する意味がないと思うんだが』

『血だ』

『は?』

『決まって満月の夜の次の日朝起きたら血まみれだったんだ』


 慧音は少し黙るとやがて口を開く。

 慧音にとっては認めたくないのだろう。

 しかしその認めたくない事実を慧音は告げる。


『私は、人を喰べたんだ…』

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