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幻想異変録:replay  作者: 凍曇
博麗≒八雲編
30/32

幻想:転

 先に気付くべきだった。

 あの妙な鉄の塊の爆弾群。

 あれを、出現させた際にスキマを使っていたのではないか?


 魅魔は今更ながらに後悔する。

 自分の浅はかさに、自分の愚かさに。


 しかし同時にこれは仕方のない事でもあったのだ。

 八雲が技を使った瞬間、意図的にスキマが見えないように先に視線誘導していたのだ。

 魅魔の魔法を躱しながら距離を詰めようとしたのはその為だった。

 距離を取るためには常に八雲の行動を見続ける必要がある。

 それを理解していた八雲はあえて自滅覚悟で魅魔と距離を詰めるという行為を続けていたのだ。


 本来の彼女であればこのような戦い方はしないだろう。

 彼女は目の前の物事に集中し過ぎて先を見据えるという行為がとても苦手としていた。

 しかし、紫を取り込んだことにより彼女を変質させた。

 記憶、感情、紫の全てを取り入れてしまった為の歪みである。

 もはや彼女は彼女ではなく、名乗った通り"八雲"の思想に染まってしまったのだ。

 だからこそ魅魔は読み間違えたのだ。


 彼女を彼女たらしめんとする部分は何一つ残っていなかったのだから。




『お前……本当に色んなものを捨てたんだな。なるほどなるほど……想像以上の進化だ』


 八雲は心中で舌打ちをしながら警戒を続ける。

 陣はもう発動している。

 ここから何が起こるかは八雲でも想像つかない。


『皮肉だな。偶然か意図的か知らないが致命傷をこんな形で食らうとは……。保険をかけてなければ危なかった』


 まったくやり辛い、と魅魔が呟くのと同時に遠くから光の柱が発生した。


『あの方角……!博麗神社か!』


 そう、博麗神社の方から光の柱が地響きを起こしながら天を衝いていた。

 光の柱は数秒経つとすぐに消えた。


『……?』


 不発か?と、ありえない考えを思い浮かべながら何が来るか警戒レベルを最大まで引き上げる。

 だがそんな警戒すらも無視してそれは起きた。


 今度は魅魔の足元から光の柱が出現したのだ。


『な……!』


 すぐに八雲は跳躍し魅魔、もとい光の柱から距離を取る。

 先と同じく光の柱は数秒で消えた。

 そこには魅魔が、|地に足をつけて立っていた(・・・・・)《・・・・・・・》。


 八雲が魅魔の行動に注目していると声が響いてきた。


『おい』

『なんだこんな時に……!』

『魅魔とかいう奴の性質が変化したぞ』

『……!』

『そいつ……受肉してねぇか?』


 その言葉に八雲は推測を立てた。


———あの謎の光は受肉する為の何かしらの現象だったという事……恐らく今の魅魔は全盛期時代の肉体でも手に入れたか……?


 八雲がそう考えるのももちろん理由がある。

 魅魔は何年も前の人物のはずだ。

 そして現在の魅魔の姿はどう見たって若い。

 都合の良い受肉を果たすのなら必ず魅魔は全盛期の体を手に入れているはずだ。


『くっ、くく……』


 魅魔は肩を震わせ笑い始める。


『あっはっはっはっは!!!!これだよ、これ!!全身に血の巡りを感じる!!これが生きてるって感じかぁ!?あはははは!!!!』


 八雲は戦慄していた。

 魅魔から何も感じない……否、感じられない。

 またあの声が響く。


『いや、感じられなくて当たり前だ。そいつ……神力を纏ってる。神の力は神以外には通常探知出来ない。紫なら気づけるかもしれないが今のお前の技量じゃ探知すら出来ない』

『洒落にならんぞ……』


 魅魔は笑いを止めると、凄惨な笑みに切り替えて八雲に言葉を投げつけた。


『さぁ!生身の肉体を得た今がチャンスだぞ裁定者!!私を殺せばそれで終わりだ!!最終ラウンドと行こうかぁ!!』


 魅魔が両手を挙げる。

 その姿はまるで降参する際に両手を挙げる姿に似ていたのだが八雲はそんな楽観的な事を考える程余裕はなかった。


(……くる!)


 上空に目視だけでは収まりきらない程の巨大な魔法陣が浮かんでいた。

 そこから大量の水がバケツをひっくり返したように流れ出てくる。

 それだけならまだ良かった。

 肉体を得た魅魔の魔法はどの魔法よりも超越していた。


『嘘……だろ……?』


 魔法陣は、幻想郷を覆うように浮かんでいたのだ。

 そこから水が流れ込む、聞くだけなら普通に聞こえるがこれはもはや大災害である。

 つまり、冗談抜きで幻想郷全土が水没してしまうレベルの水が降り注いだ。


 ドバァ!!と水と地面が打ち付ける音が一瞬聞こえるとありとあらゆるものが津波で流されて、壊されていく。

 魅魔は不思議な膜のようなものに覆われて水を弾いていた。

 八雲は紫の能力を使用して自分の周りの水だけを消失させ続けながら愚痴を吐く。


『くそっ!これが神力……!神は伊達じゃないってか!』

『おいおい、私を神様扱いしてるようだが少し違うな』

『……何?』

『本物の神はそもそも器に収まるレベルじゃないぜ?まぁ、神にもよるが本気を出せばこんなちっぽけな世界……いや、宇宙か?そんなものはあっという間に破壊する事が可能だ』

『なっ……!』

『確かに私は神の地位は手に入れているがあくまでそれでもただの魔法使いだ。そうだな……魔神がしっくりくるかな?』


 大量の水は既に建物なども全てを飲み込み山の麓まで水位が高くなってきている。

 そんな中、魅魔と八雲は水中で会話をするという奇妙な光景を広げていた。

 

『けど神様には変わらないだろう?なら殺す』

『いいね、その肌がひりつく感じの殺気。実に私好みだ。だけど出来るかな?神は退治できても普通、殺す事は出来ない。殺すには同じ立場……つまり神か神殺しの武器を使わないとな』


 八雲は一応可能性として聞いてみることにした。


『おい、スキマ』

『なんだよ』

『あるか?神殺しの武器』

『あるわきゃねーだろ。アホか』

『最高にイラつく回答どうも』


 魅魔はくっくっく、と笑いながら八雲目掛けて水流弾を放つ。

 八雲はそれを受けて肩ごと左腕が吹き飛ぶがまるで時が戻ったかのように左腕は再生していた。


『普通じゃ殺せない、か。充分だ、なら私がその偉業を成し遂げてみせる』

『吠えたな!裁定者!!では成し遂げてみよ!』


 魅魔が声を張り上げるのと同時に八雲と魅魔の間に、太陽が出現した(・・・・・・・)


『もう魔法ってレベルじゃねえぞ……!』

『いいや、魔法さ。神の領域に達した、な』


 周りが灼かれていく。

 水は蒸発し、自然は火を吹き枯れていく、数秒足らずで幻想郷は砂漠と化した。


(本物の神なら世界をとか言ってるが……お前も充分破壊してんじゃねーか!!)


 八雲は自身の能力のお陰で場にすぐ対応する体へと変化しているため特にダメージはあまりなかったが熱自体は多少伝わったらしく肌が焼けている。

 それもすぐに元の肌へと戻っていくのだが。


『羅刹!』


 八雲は足を振り上げて跳躍し、魅魔の頭上目掛けて振り下ろす。

 魅魔はとっさに緑色の盾を生み出すが魅魔は真下に叩き込まれてしまう。

 だがすぐに魅魔が両足で着陸するとその場から脚力だけで飛び跳ね八雲を殴りつける。


(遅い……!)


 八雲は片腕で防御して残った片腕で魅魔に攻撃しようとしたがそれは叶わなかった。

 魅魔の拳は今まで受けてきた攻撃よりもとても重かった。

 八雲の腕がメキョメキョと嫌な音を立てる。


『ぬ……ぐぅぅぁああ!!!』


 その痛みを無視して自由な方の片腕で魅魔の腕を掴み投げつける。

 八雲レベルともなれば投げつけるだけで何キロも吹き飛んでしまうのだが魅魔は空中で踏みとどまる。


『強化魔法……!』

『喋ってる暇があるのかぁ!?』


 八雲を囲むように氷柱が何本も出現し、放たれる。

 それを捌きながらも魅魔から視線を外さない八雲。

 だが氷柱だけでは止まらず今度は太陽が大量に出現し八雲に降り注ぐ。

 対して八雲は冷静に自身の能力で太陽を打ち砕く。


 太陽の次はマグマが、マグマの次は木の槍が、木の槍の次は核爆発以上の爆発が。

 それらを全て八雲が対処する度に別の災害がこの世に具現する。


 もはや2人の戦いは神話級と言っても過言ではない程の激しい戦いだった。

 しかしそれでも終わりはやがてやってくる。

 終わりを告げたのは、八雲だった。


 八雲は大きく深呼吸すると、ハッキリとした声で宣言した。

 八雲の最後の切り札を。


『……夢想天生、発動……!』

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