幻想:起
『話は終わったか?』
『わざわざ待ってくれたのか。悪いな』
『いいさ。愉しく殺し合いするにはこれぐらい我慢しなくちゃな』
『ははっ』
『ふふっ』
2人は笑い声をあげる。
『殺す』
『死ね』
互いに一言ずつ吐くと目の前にいる怨敵を殺すべく動き始める。
(物質系の魔法は能力によって消されるのは確認済み。なら、使い方を変えてみようか)
『一点刺突』
八雲が何かを呟きながら拳を音速で放つ。
魅魔は瞬時に反応し、その拳は空を切る。
それと同時にある現象が起きた。
目には見えなかったが魅魔はすぐに理解した。
(空気が……いや、空間が削られたのか!紫の能力との併用技か!)
『我が手には元素有り!指し示すは右!』
魅魔が叫ぶと八雲の足元が赤く染まる。
八雲が尋常じゃない速度でその場から離脱するのと同時に、火柱があがる。
それだけではなかった。
いつのまにか周りに魔法陣が張り巡らせており、そこからも火炎が放たれる。
『……ほう、これが魔法か』
『駒は後方へ!穿て!』
新たな魔法陣から0.5cm程度の水が放出される。
水は地面を穿ち豆腐のように切り裂いていく。
その水が八雲の逃げ場を奪うように張り巡らされる。
そしてその水は不規則に動き回り八雲を追い詰めていく。
『チッ……!やり辛い!』
八雲は踊るように水と火の隙間を掻い潜り魅魔との距離を詰めようとする。
しかし魅魔はそれに合わせて素早く移動しながら八雲との距離を保つ。
『八雲「無人廃線車両爆弾」!』
八雲がそう宣言するとありとあらゆる場所から空間が割れ、スキマが出現する。
そのスキマから列車が飛び出してくる。
『鉄の塊!?なんだこの変な形状の塊は!!』
魅魔はこの速度で謎の鉄の塊と衝突したらただでは済まないと判断し、回避する。
ズゴン!!ガゴン!!と地面や他の列車と激突し、暴力的な音を何度も立てる。
やがて全てのスキマから電車が出し尽くして音が止まる。
『危ねぇな……』
『おや、生きてたか』
『中々に暴力的な技だこと』
『忠告しておいてやろう。早く離脱しないと命取りだぞ?』
『あ?』
魅魔がどういう意味だ、と問いかける前に答えはやってきた。
突き刺さって停止していた列車が爆発したのだ。
『!?!!?』
驚いたのも束の間、次々と列車は連鎖爆発を起こすように爆発していく。
爆発の威力もさることながら列車の量も多かった為、威力が段違いである。
爆発する度に空気が震え、焼けていく。
核に匹敵はしないものの、それに近い威力の爆発を繰り返す。
まともに巻き込まれれば一瞬にして黒焦げになるだろう。
『この鉄の塊全て爆弾だったとは思いもしなかったぞ』
『まぁ、流石にこれぐらいじゃ死なないか』
魅魔の周りには結界が展開されており、爆発によるダメージは見てとれない。
魅魔が片手を振るうと風が巻き起こり爆発による煙を吹き散らす。
『では今度はこちらの番だ!受け取るといい!!』
魅魔の右手にはいつのまにか先端に三日月を模した杖を握られていた。
杖の先端に模してある三日月が金色に鈍く輝く。
魅魔はボッ!!と音と共に高速移動で八雲との距離を自ら近づける。
八雲は咄嗟に身構えるがある事に気づく。
『幻術か!』
八雲が横に跳躍するのと同時に光の矢が雨のように降り注ぐ。
その光の雨は本来降っている雨を弾きながら八雲目掛けて止まらず振り続ける。
八雲は空気を蹴り上げて空中をまるで地面のように駆け回る。
『おいおい、曲芸師みたいな真似事してるな!!』
『お互い様だろう!!魔法使い!』
八雲の背後に魅魔が出現し、杖を真横に振るう。
八雲は後ろを見ずに体を傾けて杖に当たらぬように躱す。
杖の軌道に合わせて光の粒子が撒かれる。
それに気づいた八雲は能力を使い瞬間移動をする。
(あれに触れるのマズイ……!あれは防御どうこうの話じゃないぞ……!)
『そら逃げろ。躱しきれるかな?』
『……!』
光の粒子の1つ1つが光線と化し曲解しながら八雲に目掛けて襲う。
1つ1つの光線の速度は光よりも早かった。
しかしそれは1つも八雲に当たらない。
かすりもしない。
何故なら尋常じゃない反射神経と並々ならぬ身体能力で回避しているからだ。
しかも回避しながら針のような物を魅魔に絶えず飛ばし続ける。
『封魔針か……!そこんとこは博麗の巫女だなお前!!』
『そういうお前もな!私の針をことごとく同じ針で返すとか勘が鈍ってなさそうだな!』
『舐めるな獣畜生!!』
魅魔は魔法で封魔針を生み出しては八雲の封魔針に対応する。
八雲は絶えず動き続けているが息を乱す様子もなく平然と躱し続けている。
『全展開、開放。連続点射!!』
追い討ちをかけるために魔法陣を再度展開する。
今度は異常な水圧ビームではなく、異常な水圧弾だった。
八雲は歯ぎしりする。
速度自体は問題ではない。
だが、
『見辛い!!雨のせいか!!』
『土に我が命を注ごう。魔は核となりて、其を使役せん。我が手となり、我が足とならん!!』
地面から強大な拳が生成されて八雲を殴りつける。
『っ!!』
八雲は瞬時に反応し片手で防御の構えを取る。
拳は八雲の片腕にめり込んだ。
『しまっ……!』
メリメリ、と嫌な音を響かせ八雲を吹き飛ばす。
それが始まりだった。
八雲は吹き飛び、地面を転がる。
そこへ光の雨が、光の粒子が、異常な水圧弾が、土の拳が八雲を襲った。




