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幻想異変録:replay  作者: 凍曇
博麗≒八雲編
27/32

魔女と裁定者

 先に動いたのは魅魔だった。


『そうら!特大の大仕掛けだ!』


 魅魔は祠に手を押し付ける。

 すると地面から大量のドス黒い塊が盛り上がってきた。

 ドス黒い塊は地表に出るのと同時にその場で爆発する。


『!』


 ドス黒い塊は周りに飛び散るが、八雲は敢えて回避に専念する。

 触れるのを躊躇ったからである。

 そして八雲の予感は的中する。


『分離、収縮』


 魅魔がそう呟くと飛び散って地面に撒き散らされたドス黒い塊が小さいもの、大きいものを問わず元のサイズに巨大化する。


『時間が経てば経つほどこいつらの数は増えていくぜ。さぁどうする』

『……ふん』


 周りに増殖したドス黒い塊が再度爆発する。

 対して八雲は片手を振るうと周りのドス黒い塊が消失する。

 なんてことはない。

 危険であればその存在を否定してしまえば良いのだ。

 存在するか、存在しないかの境界を弄り"それ"を存在しないと私が認識する。

 それだけで存在は消失するのだ。


『……お前、その能力は』

『そうだ、私はもう博麗の巫女としてここに立っているんじゃない。私は"八雲"として、幻想郷の裁定者としてここに立っている』


 魅魔は驚いたように目を見開く。

 だがそれは束の間、すぐに酷薄な笑みへと表情を塗り替える。


『なるほどぉ。くく、こいつは益々面白い。では、その能力で私は否定してみろ』

『言われずとも』


 八雲は手に入れたばかりの能力を行使する。

 しかし、目の前に立つ魅魔に変化は起きない。

 八雲は不審に思いながらも再度能力を行使する。


(能力が効かない……?どういう事だ?)


 すると突然周りから反響するようなどこかブレた声が響いてくる。


『違うな。どうやらそいつには能力が効かないんじゃなく、効けないみたいだな』

『?言葉が少しおかしいぞお前』

『うるせー。俺だって喋るのは数百年ぶりなんだ。逆にここまで喋れるのに驚きを覚えるべきだろ』

『その話は後だ。それよりどうしてアイツに能力が効かないのか教えろ』

『こいつ……あんなにグジグジ悩んでたくせに吹っ切れた途端に口悪くなったな……』

『黙れ』


 会話の様子を見ていた魅魔は訝しげにこちらを見ている。

 それもそのはずだろう。

 突然どこからともなく声が聞こえてきたあまつさえその声と会話しているのだから。

 誰だって不思議に思うだろう。


 だが、魅魔が放った疑問は少々驚いた。


『さっきから一人で何をぶつぶつと言っている?誰かと会話でもしてんのか?』

『……いや、気にしなくていい。私が勝手に喋っているだけだ』


 笑い声が響いてくる。


『言い忘れてたが俺の声は契約者にしか聞こえないぜ』

『先に言えよ……。もういい、さっさとさっきの質問に答えろ』


 魅魔は腕を組んだままこちらを待っている。

 余裕というやつだろう。

 私は気を抜かず会話を続ける。

 声はため息のような声を出すと答える。


『分かったよ。いいか?どんな能力だって穴はある。それこそ本人が気づかないような事だってある。お前が今分からないのはアイツは自分の能力を完全に把握してなかったからだ』

『紫が……?少し信じがたいな。紫は知らない事があれば全てを知り尽くそうとする賢者だぞ?』

『案外自分の事は一番知らなかったりするんだよ。それこそ他人の方が自分について知ってた、なんて事はよくある。まぁ、それ以前にアイツは自分の能力を嫌悪してて自分から進んで使おうとしなかったのもあるが』


 紫の記憶は引き継いでいるが、確かに紫の記憶を引き出しても能力に関してはほとんどがブラックボックスだ。

 つまり、紫の記憶が語るには、


『怖かったのか。その能力で世界が歪むのが』

『その通りだ。アイツの能力は強大すぎた。だからこそ、能力で何かを歪めてしまった場合、元の状態に戻せなくなる事を危惧したのさ。仮に戻せたとしても「本当にそれは自分の知っている世界なのか、もしかしたら間違っているかもしれない」ってな』

『結局のところ、魅魔にどうして能力が効かないんだ?』

『そいつ自身が矛盾の塊だからだよ』

『……?』

『これまた不思議なやつだな。巫女として神に対応出来る体であり、幽体として冥界の制限も受けず、魔女として体が人間のそれではなく、そして……』


 ハッキリと言った。

 恐ろしい事実を。


『あれはもう神の資格を得ている。恐らく何度か祀られて神として成った事があるんだろうな。いや、あのレベルだ、祀られなくても祟り神として昇華しているな』

『神様ときたか……』

『矛盾しているな。アイツは人間であり、魔女であり、幽体であり、神でもある。両立する事なんてありえない。なのに存在している』


 思わず笑みがこぼれる。

 なるほど、私の相手はそこまで強大なのか。

 私が八雲としての初仕事は大きいな。

 何故なら———




 神殺しという栄光を手に入れなければいけないのだから。

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