揺れる信念
そしてまた時は経つ。
私は妖怪との戦いに明け暮れ、少しずつ妖怪達の間に私を畏怖する者が現れ段々と妖怪の被害は少なくなってきた。
それでも人間に害なす妖怪は後を絶たない。
この時の私は妖怪は絶対悪だと思っていた。
人間に害なす悪、今思えばそれこそが浅はかだったと断言出来る。
そんな考えさえなければ私は……。
『み、見逃してくれ!許してくれよ!』
目の前で妖怪が私に命乞いをしている。
『もう襲わないから!人間には手を出さない!』
目の前で妖怪が言い訳をしている。
『なぁ!!』
目の前で……震えている妖怪の子供がいた。
『……ごめんな』
私が謝ると目の前の妖怪は恐怖に顔を歪める。
私は拳を振るう。
それだけで目の前の妖怪は散り散りになり、消滅する。
子供達も同様だ。
せめて怖がる時間を少なくしようとすぐに消滅させた。
目の前にはもう何もなかった。
あるのは血にまみれた私の拳だけだ。
『……ごめんな』
もはや聞き取る者もいないこの場でそれでも私は謝った。
私はおぼつかない足取りで帰る。
その途中で人里を通るのだが私はいつも遠回りしている。
理由は里の人間に関わりたくないからだ。
『……今日は里を通らないと夜までに帰れないな……』
嫌がる足を無理矢理動かし私は里へ足を踏み入れる。
『博麗の巫女様!ありがとうございます……!このご恩は何でお支払いすれば……』
里に踏み入れるなり今回の依頼人である男がペコペコと頭を下げながら私に話しかけてきた。
私はその男を無視して通り過ぎる。
『ちょ、ちょっと待ってくださいよ!ですから報酬を……』
『そんなものはいりません。貴方の家は今月家賃でいっぱいいっぱいでしょう』
『う……』
私は一度だけ男の顔をチラリと見る。
その顔は実に分かりやすかった。
怯えているのだ。
私に向かって必死に作り笑いをして体裁を保とうとしているのだ。
『報酬などはお気になさらないでください。私は妖怪退治を生業としていますがお金欲しさにやっている訳ではないので』
『そ、そうですか。博麗の巫女様がそこまで言うのであれば……』
男は頭を下げると逃げるように走っていった。
私はそれすらも無視して神社へと帰るために歩みを止めない。
やがて里を抜けて神社へと続く階段が見えてくる。
『なんとか間に合ったな……』
私が階段登っていくと神社に明かりが灯されていた。
その明かりを見て私は心が落ち着いていくのを感じる。
『あら、お帰りなさい』
『ただいま、紫』




