やがて時は経つ
『はぁ……はぁ……まいった……』
『はい、お疲れ様。中々強くなってきたじゃない』
『紫が強過ぎるから実感がないんだが……』
紫と初めて会ってからもう3年の月日が経った。
何かが変わったといえば劇的な変化は特にない。
強いて言うなら紫と私の間には溝がなくなってお互い軽口を叩く様になったぐらいだろうか。
これも一緒に暮らしてきた効果なのかもしれない。
『にしても貴女ぐらいよね。素手でそこまで技術を高めたのは』
『そうなのか?』
『そうよ〜。基本は能力に頼り切りの方が多いから能力の優劣で勝負が決まってしまう事なんて多々あるわ』
『うーん、私の能力は他の奴らみたいに目に見える現象を起こす訳じゃないからなぁ。だからといって術が得意な訳でもないし』
幻想郷には"能力者"と呼ばれる部類が存在する。
文字通り何かしらの特異な能力を持った者を指す。
これには人も妖怪も関係なく、平等に能力は発現する。
ただ、全員が能力を発現出来るかといえば、出来ない。
能力を発現出来るのは一握りしかいないのだ。
しかも基本的に妖怪の方が能力に目覚めるのが圧倒的に多い。
『なぁ紫。なんで人間には能力者が少ないんだろうな』
『そうね、基本的な問題として過ぎた力は自分の身をも滅ぼすわ。だからこそ人間は脆いから発現しないのかもね』
『もしも修行とかしたら能力は発現出来るもんなのか?』
私は大の字で仰向けに倒れたまま紫に質問する。
対して紫はいつのまにか縁側に移動して座っている。
『ないわね。修行の一環で能力が発言したって例は確かにあるけど。発現したのだって大体仙人の類よ』
『結局、能力ってのは何で発現するんだろうな』
その言葉に紫はあっさりと答えてくれた。
『簡単な話よ。能力っていうのは自分にとっての願い、アイデンティティ、結果だからよ』
『……つまり?』
『能力の中身については選択できないわ。けど能力は自分に関連する能力になるわ。必ずね』
『例えば自分の願いが空を飛ぶ事だったら空を飛ぶ能力になるとかか?』
私の例え話に紫は首を横に降る。
どうやら間違ったらしい。
『空を飛ぶ能力の場合、本来飛べない種族とか性格が破天荒な奴とかに発現する可能性が高いわ』
『なるほど、願いという意味は願望ではなく自分にとって足りないモノの事を指しているんだな』
つまりこれは人魚の話に近い。
自分は魚だから地上では暮らせない、逆に自分が人間なら水中では暮らせない。
現実的に無理な事が能力では可能になる……という事だろう。
『私の知り合いの場合は花がとっても好きでね、だからか花を操る能力が発現していたわ』
『なるほど、アイデンティティっていうのはそういう事か』
『そ、貴女の場合は……使命感かしらね?博麗の巫女として強くあろうとした結果ね』
『けど私の能力は持って1時間しか発動出来ないんだよ。それ以上は体が持たない』
『そればっかりは人間の限界ね。けど誇りに思っていいのよ?貴女は人間の希望なんだから』
私はそんな事言われても実感がまったく湧かない。
『人間はやればここまで出来るんだ、っていう証明じゃない。人間だって妖怪に対抗出来るんだ、戦えるんだ、ってね』
『そういう……見方もできるんだなぁ』
『そうよ。物事は一方面から見るのではなく様々な方面から見て自分で考えるものよ。一方的ではなく多面的にね』




