創始者との対談 後編
『魅魔……ですか』
『彼女自身がそう名乗ったのだからそう呼んであげるべきでしょう』
何やらその魅魔という元博麗の巫女に対して紫はあまり気にしてなさそうに見えるのは私の早とちりだろうか?
『質問される前に言っておくと、彼女について何かする気は私にはサラサラないわ』
『……もしもそれで博麗の巫女についての情報が漏れた場合は……?』
一番重要なのはそこである。
博麗の巫女はかなりの秘密主義だ。
幻想郷の根幹に関わる部分があまりにも多いため守秘義務も存在する。
『その時は私がどうとでもするわ。けど、彼女は多分そんな事しないわよ』
『……どうしてですか?』
『彼女が元博麗の巫女だからよ』
『辞めてもその心意気は無くならない……ですか』
『彼女の性格も含めてね。結構秘密主義者だったから』
紫はどうやら秘密さえ守ってくれれば構わないらしい。
だが恐らくそれが通じるのはその魅魔という女性だけだろう。
紫はきっと私なんかよりも数倍強いだろう。
頭も切れる。
その紫が殺せなかった、と言ったのだ。
それだけで魅魔という女性がどれくらい凄いかが物語っている。
『他に何か聞きたい事はあるかしら?』
『……いえ、特には』
『そう、じゃあ最後に私から伝えたい事があるわ』
『?』
紫はどこから取り出したのか扇子を口元に当てて微笑む。
『しばらくここに住むからよろしくね?』
『……は?』
『1つ屋根の下で一緒に住むって言ってるのよ』
『言い方……。私は構わないですがまた唐突ですね』
『物事はいつだって唐突よ。理由なんて求めちゃ野暮よ』
私は盛大にため息をつくと、立ち上がる。
対談はもう終了だ。
『あら、どうしたの?厠?』
『私まだ夕飯食べてないんですよ。紫さんの分も作らないといけないですし』
『……驚いた。受け入れるのが速いのね』
『そうでもなきゃやってられませんよ』
私は夕飯の献立を考えながら台所に移動する。
紫は湯呑みを手に取るとぬるくなった茶を飲む。
『……名前ね。博麗の巫女にも名前をあげた方がいいかもしれないわね』
この時の紫の言葉は未来の博麗の巫女の運命を変えていたのかもしれない。
博麗の巫女は私の代まで自分の名前がないのだ。
私の次の代は……知らないがきっとちゃんとした名前があったに違いない。
この時から紫は博麗の巫女について、考えを変えようと必死だったと私は知っている。
『夕飯は何かしらね〜楽しみだわ』




