創始者との対談 前編
私が初仕事を終え、神社に帰ると紫は茶を飲み正座していた。
その姿に多少なりとも私は驚いたのを覚えている。
なんというか彼女は自由奔放というイメージが似合うほど型にハマらないタイプだと勝手に思ってたからだ。
『あら、思ったよりも早かったわね』
『想像より簡単に終わったよ』
『そ、将来有望ね』
紫は片手で座る事を勧めてくる。
私は草履を脱ぐと部屋にあがり、同じように正座で紫と向かい合うように座る。
『それで、話があると聞いたのだが』
『ええ、その前にもう一度自己紹介をさせてもらうわね』
紫は湯呑みから手を離すと姿勢を正す。
『私の名前は八雲紫、この幻想郷を創造した1人よ』
『……!これは驚いた……。なるほど確かに貴女は凄いお方のようだ』
『そして私はこの幻想郷の管理人として自分に使命を課してるわ』
『……なるほど。しかし、幻想郷の管理人とは?貴女の他にも幻想郷を作った方々がいるような口ぶりでしたが』
私の言葉に紫は頷く。
『ええ、その通りよ。そして貴女が言いたいことは私の他にも作ったからには管理したがる者がいるのではないか……ということね?』
『はい、それに1人で幻想郷を管理するというのもやはり無理があると思います。であれば他にも協力者がいた方が逆にしっくりきます』
紫はこくりと頷くと少し微笑む。
『聡明なのね。貴女の予想通りよ。この幻想郷には結界が張られているの。その結界の維持に私はとある協力者に頼んでいるの』
『……博麗の巫女ですね』
『そうよ。ここら辺は博麗の書物に記されているから分かってたようね』
彼女の言う博麗の書物。
それは倉庫に仕舞われている巻物の事である。
博麗の巫女はこの書から自分がなすべき事、博麗とは何か、などの博麗の巫女としての全てが書き記されている。
とても大切な書だ。
『では元々博麗の巫女とは……』
『そう、幻想郷を幻想郷として維持するための楔よ』
『……他にも質問があるのですがよろしいでしょうか』
『構わないわ。私が答えられる範囲であれば』
私は最初から疑問に思っていた事を質問した。
紫が私に会いに来た時からずっと気になっていた事だ。
『何故、私と会おうと思われたのですか?』
『……何かを変えたかったのかもしれないわね。何年も同じ事を繰り返して来たわ。博麗の巫女が誕生してから妖怪と戦い、人々から疎まれ、いる場所を無くしていく彼女達を』
『……』
『私はただそれを見ているだけだったわ。ただ、それを当たり前のように受け入れていく彼女達を見ても正直何も思わなかったわ』
『……では何故』
『ある時気付いたのよ。私は彼女達から目を逸らしてるって事に』
紫は目を閉じて声のトーンを少し落とす。
『彼女達から普通の人生を奪ったのは私よ。博麗の巫女としての使命を背負わせて一生を捧げるようにしたのはこの私だったのよ』
『……』
『……1人だけその使命から抜け出したくて魔に堕ちた者はいたわ』
『……それは』
『ええ、違反だから本当は殺されるはずだったわ。けど彼女は思ったよりも思慮深くてね、生き延びたわ』
『その方の名前を聞いてもよろしいですか?』
私は気になった。
使命に囚われず自分の為に博麗を辞めたその者が。
紫は昔を思い出すように上を見上げながらその違反者の名前を告げた。
『彼女自身が自分の本名明かさなかったから分からないけど……魅魔って名乗ってたわね』




