第5話 店巡り
ついに5話、シクシク。
さて、最初は図書館に行こうかな。そこから宿で部屋をとって、武具屋に行こう。
倒したアサルトラビットは目立った外傷がなかったから2500ゴールドで売れて、25枚の銅貨を貰った。この値段は高い方で、この個体を解体して持って行ってたら、もう500ゴールドつけてもらえたそうだ。武具屋でナイフは絶対に買お。
説明はしてなかったが、この世界ではお金は硬貨だけで、100ゴールドで1枚の銅貨に、1万で銀貨、100万で金貨、1億で白金貨となり、数字とその数え方はこの世界でも一緒だった。
東通を歩き、5分ぐらいすると、中に本がある店を見つけた。多分これがアレーヌさんの言っていた古本屋だろう。
店に入ると、若い男の人が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。なんの本をお探しですか。」
いるのはモンスター図鑑見たいのと、魔術もあるはずだからそれについて聞こう。
「えっと、モンスターの情報が載っている本と魔術を扱うための本とかありますか。出来れば基礎的なもので。」
「はい、ありますよ。確かこことここにあったと思うけど・・・ありました。分厚い方がモンスター図鑑で普通の大きさのが基礎魔術についての本だよ。全部で1000ゴールドです。」
安!どんだけだよ。まぁでも外れでもこの値段だったらギリ許せるかな。
古本屋を出た後、宿屋に向かった。
・・・これはやばいな。台風とかきたら絶対崩れるぞ。
意を決して入ってみると、思ったより中は普通だった。宿屋には女の人と男の人が一人ずついた。その中の男の人が話しかけてきた。
「このおんぼろに何の用だ。宿か、それともなんかの道具か。」
「あ、いえ、どちらともなんですけど。」
「おお、宿を希望するやつか。珍しいな。まさかアレーヌか。」
「そうです。今日から冒険者になってそのとかの担当がアレーヌさんだったんです。」
「娘もやっとまともに仕事できるようになったか。」
「そこでおよし。もうまったく。すぐに変な方に行くんだから。でと、私はイリナで、そこのオヤジはギニックだ。あんた、名前は。」
「僕は綾野裕太と言います。裕太と呼んでください。」
「お、苗字持ちってことはあんたが噂になってるテンイシャだな。」
俺ってそんなに有名人なのか。めんどくさそうだな。それより要件言わないと。
「あの、ここで2日泊まりたいのですが、朝夕食は付いてますか。」
「ああ、付いているよ。代金は1日朝夕食付きで750ゴールドだから1500ゴールドだよ。」
「え、聞いていたよりも安いですね。」
「うちは道具屋兼任していて、宿屋の客は冒険者が多いから安く提供できるんだよ。」
「そうなんですか。それと、バックパックと着替え、ポーションはありますか。」
「ああ、あんたは新人冒険者でテンイシャなんだったな。だったら合計はポーションを二つにして6500ゴールドだ。で、これが部屋の鍵だ。206だぞ。」
結構安く済んだな。1万は行く覚悟だったからとてもラッキーだ。
「はい、これからよろしくお願いします。荷物は部屋の中に置いていていいでしょうか。それとまた出かけるんですけど、夕飯は何時からですか。」
「荷物は取られることはないから、置いておいて構わんぞ。それと飯は6〜9時までだ。朝食も同じ6〜9時までだぞ。洗濯物は朝、籠を出しておくから出しとけ。嫁が洗ってくれる。朝宿から出るときは鍵を開いて行け。部屋を掃除するからな。」
荷物を置き、次に武具屋に行ってみると、ここもさっきの宿屋と同じぐらい酷かった。ていうか、こっちの方が酷い。中もやばかったし、武器防具がなかったらここが鍛冶屋だと分からんかったな。
店の中には誰もおらず、奥からカンカン音がした。今なんか作ってんのかな。だったらこの武器防具たちを物色しよ。
周りに飾られた武器らは素人の目で見ても良いと分かる代物がほとんどだった。あらかた見終わったとき、中から、人が出てきた。
「人か。すまんな。鍛治に集中しすぎて気づかんかったわい。何が欲しい、坊主。」
「えっと、片手剣と持っていても手が空くぐらい小さな盾と走り回れる防具が欲しいです。」
すると、店主が俺を睨んだので睨み返すと、店主の目が光った気がした。あれ?なんで睨み返したんだろ。
「予算はどれくらいだ。」
「限界まで出して1万5000ゴールドです。」
「だったら剣はこれで、盾はバックラーだからこれで良いとして、重さと硬さを考えると鉄が妥当だ。防具は革しかないな。坊主こっち来い。」
「はっはい」
そうして革装備の大きさの調整をして、全て装備すると、結構様になった自分がいた。左腕を全部覆う籠手に、右腕にはバックラーが。革の鎧に、革の膝当て、革のブーツ。左手には黒い剣が。黒い?え?
「代金は銀貨1枚だ。久々にいい仕事をしたぞ。」
「え、え?なんでこんなに安いんですか。盾と革防具だけでももっと行くと思いますし、何よりこの剣絶対高いやつですよね。」
「ああ、この剣は黒鉄と魔鉄の合金製だぞ。感謝しな。」
まさかの黒鉄だけでなく、予想を超えた魔鉄という鉱物まで使ってらっしゃったか。武器だけ桁違いだ。
「そうではなくなぜこんなに安いのですか。」
「それは未来の保険だ。お前の目は今まで見たどの目よりもいい目をしていた。それに俺の眼力に耐えただけでなく睨み返して来たしな。要はお前を気に入ったわけだ。それにその剣はそんな大層なものではない。剣自体はドラゴンの鱗でも刃こぼれはしないが、切れ味はそこまでだぞ。まぁ今の坊主ならだけどな。」
「でも流石にここまでされるだけなのは忍びないので、俺ができる範囲でお礼をさせてください。」
「うーむ、だったらこの町に住む間だけお前の装備の修繕をさせてくれ。この老いぼれ、あるところの要請以外は暇なのでな。誰の手にも触れられないものがたくさんできるのだ。それとこれは剣を研ぐための油と砥石で、これは汚れを拭く布だ。それに剥ぎ取り用のナイフもつけてやる。」
う、そういえば、ナイフ言うの忘れてたな。でもこんなに至れりつくせりでいいのかな。俺ができることはこの武具らを大切にするだけだな。
そして、銀貨1枚を払い、何回も礼を言ってここを後にした。