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☆8




 縁談は断りました。

それでも、年月が経てば他の縁談が舞い込みましたが、ケントリッドと関係を持ってしまった以上全て断りました。

 もうこうなってはどうしようもありません。

恋心が追い付くまでに時間はかかりましたが、それから何回かそういうことをしているうちに成長していきました。


 胸が苦しくて、切なくて。これが私の初恋でした。


 教会は勿論いい顔をしませんでしたが、相手は仮にも勇者です。私のこの国へ仕える原動力がケントリッドであったことを見抜かれていたのでしょうか。

やがて、ケントリッドは人目はばからずに私と過ごすようになりましたし、私も自分がエルフであることを忘れて彼を愛しました。

 ケントリッドが18歳になった時、私は14歳ほどの見た目をしていました。辛うじて釣り合ったといえなくもないのではないでしょうか。


「……どうしたの? ケントリッド」

 ベッドの中でまどろみながら、私は彼に訊ねました。


「……またこの国の勇者が、一人死んだ」

「知り合いだったの?」

 ケントリッドは裸のままで頷きました。汗ばんだ身体を隠すように毛布を被ると、彼は苦悩するように囁きます。


「ずっと前に、約束したんだ。……互いに頑張ろうって。貴族のわりにはそこまで嫌味じゃない奴で、こいつにならフランカを任せてもいいなって思えそうな奴だった」

 ちょっと、やめてよ。

……どうして、そんな遺言みたいなことを言うの。

寒気を感じた私に、彼は枕元で力なく微笑みます。


「ねえ、私との約束は忘れてないわよね?」

 これで忘れたなんて返ってきたら怒るわ。疲れて眠くなっている私に、ケントリッドが笑いました。


「必ずフランカの元に帰ってくる、だろ? 俺が今まで破ったことがありましたか?」

「ないわ。でも、忘れたらただじゃおかない」

 私の仏頂面に、ケントリッドは囁きました。


「約束するよ、俺は死んでもフランカのところに帰るから」

「やめて、そんなこと云わないで」


「この国の宗教では、死んだ生き物は全て統一神の身許に召されて、生前の罪に従って裁きを下されるらしいけど……俺は、そんなところになんか行かないよ。魂だけになっても、どんな手段を使ったって絶対にフランカの側に戻るんだ。もう、俺はそう決めたんだよ」


 私は、ケントリッドの言葉に泣きそうになりました。



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