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☆3




 赤子はすくすくと育っていきました。

黒髪に鳶色の目をした赤子はケントリッドと名付けられました。変な痣があることを除けばごく普通の赤ん坊でしたが、不思議なくらいに泣きませんでした。


 乳の出る女性がいなかったので、母乳の代わりにミルの実を絞った果汁を与えて育てました。栄養満点のこの果汁は私の大好物でもあります。

エルフにとっての10年は瞬くほどの間ですが、ケントリッドにとってはそうではありません。食べ物が良かったのでしょうか、嫉妬してしまうほどに早くケントリッドは少年になりました。長命なエルフの村には私以外の子どもはいなかったので、ケントリッドはいつも育てのお姉さんの私にばかりまとわりつきました。


「ねえ、フランカ。また本ばっか読んでるの?」

 あの日、いつものように読書をしている私に、ケントリッドは呟きました。


「そうよ。あんたは読み書きの練習をサボっちゃダメ」

 しかめっ面を向けると、羽根ペンを放り出したケントリッドは舌を出します。それはいたずらっ子の顔つきでした。


「だって、こんなのもう飽きちゃったよ。なんで精霊語だけじゃなくて人間共通語まで覚えなくちゃいけないのさ」

「……私はどれもできるけど?」


「フランカは俺よりずっと長生きじゃん」

 私だって、ケントリッドにこんなに早く言語を覚えさせることはないと思います。けれど、これは長老会の教育方針だったのです。


「それもそうね。ケントリッドは7歳のわりによくやってると思うわよ」

 私が7歳の時なんて、まだ赤ん坊同然でした。


「だったら、今日こそ俺と結婚してくれる?」

「なんで私が子どもと結婚しなくちゃいけないのよ」

 誰に影響を受けたのでしょうか。ケントリッドは隙があればこんな冗談を言ってきます。赤子の頃から知ってる子どもにそんな気は抱きません。多分、あと何年かすれば忘れる事でしょう。


「……ちえー、まだダメかあ。俺の寿命は短いんだから、早くいいって云ってよ」

「それを考えてもまだ早すぎるし、私はケントリッドとは結婚しない」


 お隣のプレイボーイのお兄さんに妙なことを吹き込まれたのでしょうか。もしそうだとすれば、今度抗議に行かなくちゃいけません。

唇を尖らせたケントリッドは、羽根ペンをインク壺に突っ込みました。そして、焦るような字で写書していきます。

 やがて、勉強し疲れた私たちはそのまま毛布を被って寝てしまいました。



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