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藤原ゴンザレス短編集

乙女ゲーのヒロインですが三周目にしてゲームが壊れました。

 私は乙女ゲーのヒロインです。
 気がついた乙女ゲー。
 異世界転生ってやつですね。
 真鍋梨紗。
 これが私の名前です。
 正直言って私、調子こいてました。
 だって逆ハーですよ!
 なんの努力もしないで男にちやほやされるんですよ!
 イケメンといちゃいちゃするゲームですからね!!!
 嫌なヤツはみんな自動的に破滅!
 男を選ぶのは私!
 人生イージーモードすぎです。
 一度やったらやめられません。
 ヒロイン稼業とはなんて罪作りなのでしょう。
 しかも何周もできるんです!
 ですので二周ほどして楽しんだわけです。
 サッカー部の不破くんに~。
 剣道部の霧島くんに~。
 三周目は全員美味しく頂こうと思っていたわけです。
 じゅるり。
 げへへ社長さんも好きね~。
 おっとヒロインヒロイン。

 今回も初日の朝のイベントで悪役令嬢の音羽ダイアナに難癖をつけられるところから始まる予定でした。
 ……それが。

 それは巨大な生き物でした。
 体重1トン以上、凶暴な眼光、雄々しいたてがみ、隆起した筋肉。
 明らかにそれは馬でした。
 馬ってこんな巨大でしたっけ?

 そしてなぜかジュリエットと書かれたリボンがヒラヒラ舞っています。
 そしてその上にあの子ども番組の緑色の恐竜が立っています。
 赤い毛玉の相棒で水上スキーやバット折りまでこなすあの恐竜です。

「おーっほっほっほ!!!」

 ガチャ……じゃなくて恐竜がお嬢様笑いをあげました。
 中身はダイアナです。

「新入生の皆様ァッ!!! 私が生徒会長の音わぁッぎゃあああああ!」

 恐竜が馬から足を踏み外して落ちました。
 心配して私が近づくとヤ○チャのように転がっています。
 ピクリとも動きません。
 おかしいです。
 私の知ってる悪役令嬢じゃありません。
 なにかがおかしい。
 私はここでようやく気づいたのです。
 この世界バグってね?



 数日後。

「いっけー! ア○ンテmk-Ⅱ!!!」

 激しいモーター音を立てながらモーター付き自動車プラモ、いわゆるミ○四駆が廊下を走って行きます。
 後を追うのは女子たち。
 もう一度言いますが女子です。
 フリーダムすぎる!
 その横では女子が箒と丸めた雑巾で野球をしています。
 よく見るとその先で女子が廊下に座ってポータブルゲーム機で狩りを楽しんでます。
 お前らどいつもこいつも小学生男子か!

 普通は高校生ってもっと恋愛脳だろ!
 特にここは乙女ゲーだぞ!

 おかしいです。
 完全におかしいです!

 音羽ダイアナといい、彼女らといい、なにがあったのでせうか?

 私が頭を悩ましていると不破くんと霧島くんが見えました。
 ああそうか!
 ここで遭遇イベントだ!
 生意気な彼らに罵倒されるイベントです。
 なあに最初は生意気ですが徐々にデレるのです!
 げへへ。
 私は目を輝かせて彼らの前に出ました。
 ところがやはり様子がおかしいのです。

「霧島! 俺のお笑いの相方になってくれ!!!」

「ああ、俺もお前が声をかけてくれるのを待っていた!!! 俺たちでお笑いの頂点に立とう! そうと決まればこんなクソ学校やめてやる!」

「おう! 俺もやめるぜ!!!」

 な、なにがあったあああああああああああッ!!!

 私はガタガタと震えました。
 ヤバいです。
 なんかこの世界ヤバいです!

 さわやかスポーツ少年の霧島くん。
 クール系の不破くん。
 なぜお前らがお笑いに?!

 ガタガタと震える私に目もくれずに二人はいずこかへと消えていきました。
 もう学校で彼らを見ることはなさそうです。

 ぱねえ。
 バグがぱねえ。
 私はツッコミが追いつきません。

 私が口をあんぐり開けて固まっていると女子生徒がやってきました。

「あの……真鍋さん……だっけ? 生徒会長がお呼びです」

「ふぇ?」

 なにこの急展開。



「あなたが真鍋さんね。私は会長の音羽ダイアナです」

 朝の醜態は忘れたと言わんばかりのおしとやかな口調で縦ロールが言いました。
 ただし、身体の方は肌色のボディスーツを着用して、どうやって搬入したのかお湯の入った透明の湯船の縁に四肢をのせてプルプル震えていました。
 そして期待に満ちた目でこちらを見ながら……

「押すn」

 最後まで言わせません。
 私は容赦なくダイアナを湯船に突き落としました。

「ぎゃあああああッ! 熱! 熱! 氷! 氷ぃッ!!!」

 ダイアナは湯船から飛び出ると用意していた氷で身体を冷やします。
 そして恨みがましくこちらを見て一言。

「リアクション芸人に『押すなよ!』を言わせないなんて……恐ろしい子……」

 殴っていいですか?
 ですが、よく考えると殴ったら喜びそうな気がしたので思い直しました。
 私は深呼吸をすると、しかたなく、

「ご用件はなんですか?」

 と聞きました。
 若干イライラしながら。

「二年生の霧島くんと不破くんが学校をやめたのはご存じ?」

 ダイアナが肌色のスーツを着たままキリッという表情に変わりました。
 いまさら取り繕っても遅いです。

「はあ。その現場に遭遇しましたが……」

 もういいや他のイケメンで我慢しよう。
 次の周になれば直るだろう。
 私はそう思っていたので気のない返事をしました。

「ええ。そこで私は思ったの。『逆に考えるんだ。学校をお笑い養成所にすればいいさと』」

「意味がわかりません!」

「私の尊敬する人が言ったの。『おれはを学校やめるぞ! ○ョジョーッ!!』って」

 いちいち報告すんな。

「ジョ○ョから離れてくれませんかね!!!」

 なに言ってんのこのおバカ。
 私が心の底から呆れていると、ダイアナが急に真剣な顔になりました。

「……もしかして!」

「もしかして?」

 なんでしょう?
 するとダイアナは急に劇画調の顔になって叫びました。

「このリアクション芸人否定派が!!!」

「んなこと言ってねえ!!!」

「しゃべくり漫才こそが王道! 他は全部死ねって言うのね?! この腐れ外道が!!!」

 すぱこんッッッ!!!
 ムカついた私は上履きを脱いでダイアナの頭を殴打しました。
 むしゃくしゃしてやった。
 後悔はしてない。

「フフフ! ナイスツッコミ!!!」

 グッジョブと言わんばかりのサムズアップ。
 しかも目をキラキラさせたいい顔です。
 まるで何か大事業を成し遂げたかのような満足げなツラです。
 コイツ張り倒していいですか?
 かなり真面目に。

「そういうわけで……私とコンビを組みなさい」

 縦ロールがホザきました。

「はあ?!」

 なにとち狂ってんのコイツ。

「貴女のその容赦のないツッコミ!!! その天然のドSっぷり! 私の相方にふさわしいわ!!!」

「急にお腹が痛くなったので帰りまーす」

 私は世迷い言をスルーして踵を返しました。

「な! 私の誘いを断ると言いますの?!」

 あーあーあーあーあー!!!
 きーこーえーなーいー!!!

 私は耳を押さえながら声を出して逃げました。
 恋愛にしか興味ありませんので。



 家に帰ろうと思ってチャリ置き場に来たら、私のチャリが巨大な馬になっていた。
 なにを言っているか(略)

 首に巻いたリボンを見ると『ジュリエット』というお名前が。
 お前か。

「ひひんッ!」

 乗れよ。
 ジュリエットの目はそう言ってました。
 しかたねえな。
 そのときすでに私は、この不条理な世界を受け入れてました。
 『もうどうでもよくなっていた』とも言い換えられます。
 ジュリエットの背中に乗って私はパカパカと揺られていきます。
 しばらく行くとジュリエットは校舎の別館の前で止まりました。

「ダイアナさん! いるんでしょ!」

 私がそう言うと今度は赤い類人猿の着ぐるみが出てきました。
 つかいろいろ危険だからそれはヤメロ。
 着ぐるみはカポンと頭の部分を取ると言いました。

「お願い! 私の相方になって!!!」

 こうして私たちはお笑いコンビを結成することになりました。
 毎日学校でネタの打ち合わせと練習。
 動画投稿サイトへのコントのアップロードと、学生お笑いコンテストへのエントリーを繰り返す毎日。
 年上のダイアナは先に卒業しましたが、コンビは続きました。
 目指すはコンテストでの優勝です!
 こうして、あっという間に三年間が過ぎ去りました。
 そして私たちは学生コンテストの王者になり、新人お笑いコンテストへの出場を……

 ぴぴぴぴぴぴぴぴ。
 目覚まし時計がなりました。

「どうしてこうなった?」

 栄光を手にした私は、またもや初日へ戻りました。
 四周目のはじまりです。
 エンディングはダイアナエンディング。
 あれはアンロックされた隠しエンディングだったのかもしれません。



 四周目を迎えた私はダイアナと話し合いをすべきだと思いました。
 なにせ三年間も相方をしていた女です。
 今まで知らなかった情報をしこたま仕入れましたので、私の中で二周目までの彼女のとは印象が変わっていたのです。

「おーっほっほっほっほ!!! 底辺庶民の皆様! おはようございます!!!」

 二周目までの私はこの発言にイラついて食ってかかってました。
 ですが今は違います。

「無理すんなって。のり○ま大好きっ娘」

 私はダイアナの肩をぽんっと叩きました。
 あの女は朝は納豆か、のりた○ごはんしか食べないのです。
 あと味付けのりがないと不機嫌になります。

「な、な、な、な!!!」

 顔が真っ赤でした。
 えっへっへー。
 私はベロを出しました。

 夕方になると私は駅前に向かいました。
 駅前の公園でゆるキャラの着ぐるみショーがあるのです。
 もちろん好きなのは私ではありません。
 相方です。
 私は公園を見回しました。
 うん、やはりいやがりました。
 ステージの真ん前です。
 今ごろ目を輝かせてかぶりついているに違いありません。
 結構ガキっぽいのです。アイツは。
 私はなるべく相方に気づかれないように静かに近づきました。
 驚かせるわけではありません。
 あの女は面倒臭いのです。
 プライドを傷つけるとムキになって反撃してくるのです。
 そのプライドもほとんどが虚構の産物です。
 ホント大人げありません。
 ですのでごく自然に。

「あら? ダイアナさん」

 ギギギとダイアナの首が動きました。
 死刑執行を待つ殺人犯のような顔です。

「い、い、い、いやコレは……」

 そこまで動揺することか?
 しかたない助け船を出してやろう。

「あなたもゆるキャラ好きなの?」

 私がそう言うとダイアナは目を輝かせました。
 派手な顔して、コイツかわいいものと動物が好きなんです。

「じゃあ一緒に見よ」

「うん……じゃなくて、よろしくてよ!」

 へいへい。
 疲れるから無理にキャラ作るなって。
 こうして私たちはゆるキャラショーを見ました。
 そのあと、嫌がるダイアナをむりやりカラオケに連れて行ったらスッゲー盛り上がりました。
 ホント歌好きだよな。この娘。
 ダイアナのレパートリーが演歌ばかりなのも同じです。
 このおばあちゃん子め!
 こうして私たちは友人になりました。
 次に会うときにはデレていることでしょう。

 男?
 なんかどうでもよくなりました。
 今ではこのツンデレの友人の方がよほど面白いです。
 もしかすると彼女は私のヒロインだったのかもしれません。

 ダイアナ(トゥルー)エンド。

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