俺の知ってる召還獣の立場となんか違う
〜あらすじ〜
癒やし系はどこまで癒やしを追求出来るのか。
そこに、とある製作者が立ち上がった!
主人公が体当たりで癒やし系の実態をレポートする、熱血二十四時間密着型ノンフィクションここに現る!(嘘です)
─────────「いやいや、おかしいだろ!!」
異世界に来たら叫ぶであろう台詞を、俺は吐き出した。
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……ん?
確か、学校からの帰宅途中だったはずなのに。
気が付いたら、俺は倒れていた。
辺りには、足首まで雑草の繁っただだっ広い野原。心地良い風が頬を撫でている。
……どうやら、異世界【??】に来てしまったようだ。
だって……
「君みたいな間ぬけ面、見た事無いな。どこから来たん
だ?」
ぐうぜんのであいでどうこうするよぱたーんのおんなのこがあらわれた!
そこには、ウエストポーチと、動きやすそうな布地の服に身を包んだ、紅いロングの美少女がいた。
─────だってさ、そんな急に異性と巡り会ったりしないよね、うん。しかも可愛いよ?こんな簡易な合コンあったら苦労しないって。言い方は酷いけど。
「大丈夫か?」
「あ、うん! 大丈夫! お構いなくっ!!」
俺は見合いの縁談を蹴る様に、全力で逃げ出した!
……なぜなら、とてつもなく嫌ーな予感がしたからだ。
─────────何かはわからないが!
しかしそんな位ではフラグから逃れられない事に後々気づく事となる。
取り敢えず、逃げた。足下がいつの間にやら、土で出来ている程に。何回も通られて道路になったらしく、ちゃんと踏み固まっていた。
このまま、示された道をたどって行けば、どうにかなるだろうか?
……しかし、行くあてもなくぷらぷらしてたって、俺は所詮孤独の放浪者。無知の無一文である。
かといって、今更さっきの子の所へは気まずすぎて戻れない。
さて、どうしよう。
……………………
…………ドンッ!!
「いててて……」
「いってぇーーー! ドコ見て歩いてんだテメェ!?」
わたしはいかにもわきやくといわんばかりの名無しさんがあらわれた!
目の前で、多数のポケットのついた上着を羽織り、腰に剣をさした三白眼の男が、眉間にしわを寄せている。
ああ、ヒロインと一緒に魔物に襲われる的なフラグを回避したと思ったら、自分がフラグに掛かってしまうとは!
「す、みません」
「テメェ、そんなんでスむと思ってんの?」
(わたしはいかにもわきやくといわんばかりの名無しさ
ん)……略して【わいわいさん】は、俺を下の人間だと判断したのだろう、喧嘩を吹っ掛けてきた。
面倒臭いが、その見解は正しいので仕方が無い。
「……ごめんなさい」
「あ、そうだー。ちょうどイイ。テメェさぁ、見かけたコトねぇから、このアタりの人間じゃねぇよなぁ?」
「まあ……はい」
「そうか」
【わいわいさん】は、俺との距離を空けながら、ポケットからカードを取り出した。そこには、何やら毛むくじゃらな生き物の絵が描かれている。
「……何ですか、それは?」
「クックック、コレはなぁ……
テメェをメイドに送る最速キップだよ!!
…………召還!!!」
そのまま地面に叩きつけられたカードが、光を放ち始めたその時。
「キュルキュルルルルゥゥゥッ!!!」
突如カードの上に浮き出た魔方陣の中から、三メートル程の巨大な、巨大な、巨大な…………………………
におうだちのかぴばらがあらわれた!!!
「お、おおおおおおおおっ!!?」
めっちゃ可愛いい!……………………ゲフンゲフン。
突然の癒し系登場に思わず、いつもなら出ないはずの大声を上げてしまった。
─────────ツッコむか? ツッコんでいいのかいいんだな!!
「いやいや、おかし…………」
「オイ、テンテン!タノむぜ!」
カピバラの手元には、真っ黒な塊がある。
よくよく見たら、それはゲームのコントローラーの様なものだった。
すると、かぴばらの手先が高速で動き始めた!
いったい何をするつもりだ!? と俺が構えている
と……
「テメェ、ナニツったってんだよバーカ!!」
かぴばらの後ろから、今まで隠れて見えていなかった
【わいわいさん】が飛び出してきた!
「えっ?」
まさか、とは思うが。
「ハハハハッ!! くらいやがれ!!」
しかし【わいわいさん】は、剣を振りかぶりながら、俺をめがけて飛んで来る!
「オリャアアアアアアッ!!」
「お前が攻撃するんかいいいいいいいっ!!?」
俺が、死ぬという運命と、この世界の意味不明さに目をつむった時。
「はあっ!」
キンッ、と音がした。
「君は、弱者を本気で傷つけようとするのか?……憐れな奴だな」
「な、んだと!?」
…………目を開くと。
「追尾して……良好だった。ぐぎっ、君に、武器が無い事が……介意でな。今度は、大丈夫では……なさそうだ」
剣の一撃を短剣で受け止めた、真紅の救世主がいた。
「て、テメェ!ふざけんなよ!!」
【わいわいさん】は、もう一度剣を振りかぶって、彼女を斬りつけようとする。
「はっ!」
その一撃を、彼女はすんでのところで避ける。
しかし。
「オラァッ!」
「うぐっ!」
【わいわいさん】は、振り下ろした剣を、そのままななめ上に持ち上げた。
この一撃が、彼女の顎からゴツンッ、という音を響かせた。
それは、斬る力はあまり無くとも、彼女の脳を揺らすには絶大な効果だったようだ。
彼女の体が、ゆっくりと、地に伏していく。
「畜生……油断したか……」
「ハハッ!ざまぁ!!」
……俺は、その様子をただ眺めるしか無かった。
でも、このままだと、助けてくれようとした彼女が死んでしまう。
勝手に、おせっかいだけで、ほとんど初対面の俺の面倒事に首を突っ込んで来た、彼女は。
死ぬのが、当然か?
─────────「いやいや、おかしいだろ!!」
異世界に来たら叫ぶであろう台詞を、俺は吐き出した。
そして、思いっきり地面を蹴り上げる!
…………たった三つの理由だけで。
「うおおおおおおおおっ!!!」
─────俺は、今は走る事しか出来ない。
「君……!?何をする気だ!?」
─────俺は、目の前の人をすぐに助けられる勇気もない。
「オ、オイッ、テンテン!?ウゴかせろよ!!コラ、パニックになるんじゃない!!」
「ピヤッ、ピーピーッ」
─────俺は、武器を持ったりしていない。
でも。
「俺にだって、やり遂げられる事があるならやり遂げてやるさ!!!
相手が、かぴばらでも!!!」
まずは、彼女を助ける為に。
後の二つは、俺が、いつも思っていた疑問を解決する為に。
一つは、(何でポケ○ンとかは、命令主を攻撃しないの?)と、いう事だ。
今回は、コントローラーらしきものを渡している所から分かるように、カピバラの方が、【わいわいさん】を動かしているのだと推測(確信)出来る。主は、下僕自体が武器の為、下僕を抑える事が出来れば、隙はあるはずだと思う。
まあ、かぴばら(仮主)を倒せば、おのずと【わいわいさん】(仮下僕)も倒せるという、極々当たり前の考えである。
もう一つは………………
(かぴばらの弱点って、お尻なんだよ!)という噂を確かめる為である!!
何でも、お尻にリラックスさせるツボがあるらしく、刺激すると毛が逆立ったり、「クククッ」って鳴くらしい。うわぁ、うわぁ〜。
そういう訳で、目標はかぴばらの背後。
「とか何とか言ってる間に到ー着、っと」
それから、すぅはぁと深呼吸をしてから、手をわきわきと動かし。
「レッツ、もふもふタイム!!!」
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════ かぴばらもっふもふの歌 ════
作詞:俺 作曲:あなた
も も も もっふもっふーもふもふわふわ♪
君の毛並み撫でてて ふと考えた♪
毛が風に乗せて飛んでいちゃうかもって♪
そしたら どこまでも追いかけて♪
いっしょに行きたいな 雲のうえへ♪
でも どんなにやわらかい雲だって♪
君の手触りには かなわないよ♪
もふもふわふわ ふわわわ(ほわ〜)♪
(以下、十番まで続くため割愛)
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「ほわ〜、ほわほわ〜」
「いつまでやっているんだ」
「ふわあっ!?」
気がつくと、かぴばらが倒れていた。【わいわいさん】も大の字になっている。
「………………」
俺とした事が、ちょっと調子に乗り過ぎたようだ。
分かる人には分かるが、ぼっちとか、そういう教室の隅っこのほうの人間は、一度暴走すると、止まらないし、止められない。
ってあれ、いつの間に彼女はここに?
「……もふもふわふわ、ふわわわ、か」
「う、なななななっ!!?」
─────────実際に……口に出していただと!?
「君がそんな詩を歌っているいる間に、精気を喪失した鬼天竺鼠(かぴばら)と、動きが硬直した無法者を片付けてしまったぞ」
「そう、なんだ」
狙い通りリラックスし、操作を忘れたかぴばらのおかげで、【わいわいさん】は動けなくなっていたようだ。
彼女だったら手加減したと思うが、普通ならやられ放題である。
「しかし、君は何をしたんだ?」
「あ、それはかくかくしかじかで……」
「……君は、塵芥なのか? もし奴が更なる集中力をつけたら、どうするつもりだったんだ」
「うぅっ」
まさかの駄目出し。
─────────え? 塵芥って何? 悪口?
「まあ君も君だが、あの無法者も無法者だな。あいつは、おそらく設立されたばかりの、RCDGの手駒だ」
「そ、そんなのあるの!?」
「ああ、あんな攻撃目標が二つに別れただけで取り乱す、愚劣な召還獣は初めて見た」
いや、負けそうになったんじゃなかったけ、と言いそうになったが、気にしない事にする。
……そうだ、これからどうしよう? と思っていると。
「君、徒手か?」
またもや、俺の辞書に載ってない言葉が出てきた。
「うん?……としゅって?」
「……手ぶら、という意味だ」
「知らなかった……」
「……ううむ、武器も知識も無い、か。益々不安だな」
あ、これって、まさか。
「君、私と一時、行動を共にしないか?」
「やっぱりっ!?」
いや、別に嫌だという訳では無いのだけど、こんな短時間でよく俺なんかと行動しようとか言えるな!……と思ってしまう。
「いや、深い意味などないぞ。ひ弱い君の護衛をしたいだけだ」
「ひ、よわい……」
しかも、護衛って。事実なだけに何も言えない。
しかし彼女は、油断(彼女いわく)してて今回は負けそうになっていただけで、剣を受け止めたり、避けたりしていた所を見ると、俺より遥かに強いだろう。
「う、うん!お願いする!」
「うむ!……あ、あのな、……さっきは、文句を言ってしまったが、あ、あ、あ、有難うな」
「ええっ?」
彼女は無表情だった顔を崩し、急にうろたええ始めた。
まさか、ありがとうを言い慣れていないのか。じゃあ、彼女も長年のぼっちだったりするのかもしれない。
「い、いや、こちらこそだから!」
「そ、そうか!此方も此方こそだ!」
「ここここ、こっちだって!!」
「ここ、此方もだ!!」
何故か、遠慮大会が始まった!!
そして、その大会が終わりを告げた頃。
「あ、あのさ」
「こほん、何だ?」
「えっと、ちりあくたって何?」
俺が聞くと、彼女は天を仰いだ。
「……君はねちっこいんだな。まさに廃棄物だ」
「はい!?」
「廃棄物、という意味だと言ったんだ」
つまり、俺がゴミ屑だということか……
─────────「いやいや、おかしいだろ!!」
異世界に来たら叫ぶであろう台詞を、俺は吐き出した。
閲覧ありがとうございました。
ちなみにかぴばらのツボはお尻だけでは無いそうです。