9、電話
定食屋を出て、遥ちゃんとドンキホーテで買い物をした。
そして、居酒屋へ行き少しお酒を飲む。
朝日が昇って明るくなった頃、二人は地元行きの電車に乗りこんだ。
遥ちゃんは絵里が住む○市の隣の町に住んでいて、絵里より先に電車を降りていく。
電車に揺られながら、遥ちゃんの言葉やノアの事を考えた。
割り切って働けたら楽なんだろうな・・・。
地元に着くと、駅前にはスーツのサラリーマンや学生があふれていた。
時計を見ると、朝の八時を少し回っている。
あくびをしながらタクシーを拾い、家の住所を告げる。
バスがあるのにタクシーに乗った。
そんな事は初めてだった。
家の前に着き、千円と少しを支払ってタクシーを降りる。
親にバイトがばれないように、セットされた髪をほどく。そしてワニクリップで髪をまとめた。
静かに玄関をあけ、急いで部屋に入った。
ベッドに横になり、天井を見上げる・・・。
そして絵里はそのまま眠りについていた。
携帯の着メロが鳴っている―――
絵里は携帯の音に起こされた。
もう4時半だ・・・。
携帯の画面には知らない番号が表示されている。
「はぁい・・・」
思い切り寝呆けた声が出てしまった。
相手は少し黙った後、
『寝てた?
俺だけど、わかる?』
と言う。
俺って言われても、わからない・・・
「だれ?」
『昨日、教えてくれたじゃん。
ユウヤだよ!』
ユウヤ・・・。?
昨日?
―――あっ。
わかった! 昨日ノアで大金を持ってた若い男だ。
番号きかれたんだっけ・・・。
「あー、わかった。
ごめんね。
どうしたの?」
『別に用事ないけど。
この番号、登録しといてね!
近々、エリ指名で飲みに行くからさぁ。』
「あ。
う、うん。わかったぁ。」
なんとなく、もう行かないって言いづらかった。
それに、眠くて面倒だった。
ユウヤとの電話を切ると、また携帯が鳴る。
また、知らない番号が表示されていた。
今日は変な電話が続くなぁ。
「はい」
今回は普通の声が出た。
『おはようございます。
ノアの店長ですけど、昨日はお疲れさまでした!
どうでしたか??』
「あ、はい。
おはようございます!
キレイな内装だったし、体験入店させてもらってありがとうございました。」
もう夕方なのに《おはようございます》という挨拶。
すごい違和感・・・。
《こんにちは》じゃないのかな?
しかし店長は何も気にしてないのか、話を続ける。
『エリちゃん、どうかなぁ?
ぜひ、入店してほしいんですけど。
週5日出れるなら、時給は4出すよ。
ダメかなぁ??』
4?・・・4000円?!
グラグラ気持ちが揺れる。
でも・・・。
やっぱり無理―――
「あ、あの。
ちょっと無理かなぁって・・・」
『4000円じゃ安いかな?
エリちゃん可愛いし、他店はもっと出すっていってたの?』
何か誤解されている・・・。
4000円じゃ安くて入店しないって思われてる(苦笑)
「いや、あの――」
『じゃあ、45(ヨンゴー)出すよ!
4500円ならいいかな』
す、すごい・・・。
絵里は断らなかった。
「また連絡します」
と答えを保留にして、店長との電話を切る。
急いで電卓をたたく。
4500円×6時間は27000円で、週5日出たら一週間で13万5000円。
・・・とゆうことは、一ヵ月で約60万円?!
そんな稼げるの?!?!




