23、嘘
『電話・・・
聞いてた?』
「・・・」
絵里は黙って首を縦に振った。
『まぁ、とりあえず座って話そうぜ。』
絵里は言われるままにケンの隣に座った。
でも顔をあげれなくて、下ばかり見続けた。
ケンを見ると、涙がこぼれてしまいそうだった。
ケンに呼ばれてウキウキして、化粧までなおして・・・。
悲しかった・・・
やばい、
もう涙、我慢できないよ―――
『・・・絵里?
泣いてんの??』
「な、泣いて・・・
ぞんなごど・・・
ひっく
な・・・ないっでばぁ・・・」
涙でうまく話せない・・・。
もうやだぁ。
『泣くなよ・・・』
ケンは昔みたいに頭を撫でてくれた。
でも、この手でさっきの電話の女も撫でてるんでしょ?
あの電話の女の子はどんな子なの?
絵里より好きなの??
『絵里は、彼氏いないのか??』
しばらくたった頃、泣き疲れて涙が止まった絵里にケンは聞いた。
「いないよ」
微かな望みにかけて、嘘をついた。
2年前に寄りを戻した時、彼氏がいたのにいないと嘘をついたら、ケンに告白してもらえた。
それに今回は騙されて出来た彼氏だし、愛情もないんだもん。
そんな軽い彼氏だし、ケンと顔見知りだし、絶対ケンに話したくない。
それより、もう言ってしまいたい。
あなたが好きだから、
忘れられないから二年も一人だったんだよ、って・・・。
そしたらケンは絵里の所に戻ってきてくれる?
絵里を選んでくれるかな・・・。
『そうなんだ・・・。
俺は、付き合って二ヵ月になる彼女がいるんだ。
さっきの電話のやつなんだけど・・・』
ケンは言いにくそうに口を開いた。
やっぱり彼女だったんだ。
もしかして違うかもしれないという期待は、なくなっちゃったよ・・・。