22、電話の相手は
ケンがいなくなった後、カイの目が変わった。
『ケンさんと、どーゆー関係?』
「え??」
・・・どうしよう。
カイ、怒ってる。
「えっと・・・
ただの地元の知り合いだよ」
嘘をついた。
『ならいいけどさ。』
カイはそう言うと、今日の客の話や同僚の話を始めた。
よかった。
バレなかったし、追求されなかった。
カイが話してる間も、ケンの事で頭がいっぱいになっていく。
ケンから連絡先を聞いてくれた事が、すごく嬉しかった。
それにケンの連絡先もわかるから、これからはケンと繋がっていられる。
カイと別れ一人になると、頭の中はケン一色になっていく。
逢いたい・・・。
携帯を開き、ケンに電話をかけた。
『はい。』
「絵里だけど・・・」
『おぉ。どーした?』
「別に、用はないんだけどね・・・」
話が続かないよ。
緊張しちゃって、全然話せないっ!!
『絵里、まだ新宿?』
「う、うん。」
『じゃあさぁ、今から会う?』
「う、うん!逢う!」
そして場所を決め、電話を切った。
ケンに指定されたお寿司屋に向かう最中、絵里の足は自然と早歩きになっていく。
店に着く少し手前の角で立ち止まり、鏡を開いて口紅を塗りなおす。
くずれた化粧でケンに逢いたくない。
店に入ると、ケンは入り口に背を向けてカウンターに座っていた。
そして、携帯で話している。
『だーかーらぁ、おまえ、しつこい。
うざいって。
もうすぐ帰るって言ってんじゃん。』
・・・。
だれ??
『はぁ?
浮気??
してねーよ!だから、いい子に寝ててっ!
ほんとしつこ・・・・』
ケンが振り返り、入り口に立ち尽くしている絵里の姿を見つけた。
『またかける。』
ケンはそう言い、電話を切った。
そして気まずそうに絵里に『隣、座りなよ』と声をかけてくる。
「・・・。」
もう帰っちゃいたい。
やっぱ、彼女いたんだ―――。