18、すれ違いな気持ち
声が出ない・・・
なんで?
なんでいるの??
『・・・。
やっぱ、絵里だよな?
マジ、びびった。』
ケンは、少し気まずそうに笑う。
「て、てゆうか・・・
ケンも、何で?」
二人の様子を見て、他の三人の客たちが、ツッコミを入れてくる。
『ケン、やっぱり元カノだったんだな』
『話は、飲んでからだろ』
ケンと絵里は自分のグラスをあけ、二人で目を合わせて笑った。
ケンと話した時、お互いに仕事の話は避けた。
そして、ケンは絵里に言う。
『俺に会った事、誰にも言わないで。
理由はわかるだろ?』
そして一時間が経つと、ケンはチェック(会計)をした。
「もう帰るの?」
もっと話したかった。
・・・でも、ケンは帰ると言う。
「じゃあ、携帯教えて」
『あ、携帯は・・・
えっと、また今度でいいかな?
また会いにくるし、その時教えるよ』
ケンは教えたくなくて、ごまかして言ったような気がした。
絵里は溢れてきそうになった涙を必死にこらえた。
逢いたかったのは、絵里だけなの?!
電話も迷惑なの?!
ずっと逢いたかったのに・・・
ケンを探してたのに・・・
ケンたちはお金を払い、次はどこのキャバクラに行くか話し合いながらノアを出ていった。
ケンたちを乗せたエレベーターの扉が閉まった時、絵里の胸にはさみしさだけが残っていた。
キレイな思い出で終わればよかった。
逢わない方がよかった・・・