16、ホストの帰りに
最近、仕事が楽しくて仕方がない。
今期はなんと、NO.3になれた。
そして、給料を40万円も貰っちゃった。
半月で40万なんて、使いきれないよ(笑)。
遥ちゃんはホストクラブで遊んでいるらしい。
ストレス発散には最高らしいけど、絵里は誘われても行く勇気もお金もなくて断ってばかりいた。
・・・でも、もうすぐ月収100万円。
てゆうか、税金も入れて考えたら、すでに100万は越えている。
一度くらいは行ってみたいな。
絵里は翌日、遥ちゃんを誘い、営業終了後にホストクラブへ行くことにした。
『ここだよ!』
遥ちゃんが常連のホストクラブが入っているビルに着いた。
そして、遥ちゃんが《ローズ》とかかれたドアを開くと―――
『『いらっしゃいませ!!!』』
何人ものスーツの男たちに大声で迎えられた。
そして、その男たちの奥からキレイな顔立ちの男が絵里たちの前にきた。
遥ちゃんはその男にいきなり抱きつき、『逢いたかったぁ』と甘い声で言う。
その男は絵里に《セナ》と名乗り、セナは遥ちゃんに指名をもらってると言った。
ローズの店内はノアの半分くらいのスペースで、ホストが20人くらい居るようだった。
料金システムは、絵里は初回(初めて来た客)なので5000円で飲み放題らしい。
入れ代わり立ち代わりホストたちが絵里の隣に座って、優しい言葉やおもしろい話をしていく。
そして、あっとゆうまに朝が来た。
『絵里ちゃん、遥は今日帰らないから・・・。
ごめん。』
閉店時間になった時、遥はセナの腕に手をからまらせながら言った。
セナにも『ごめんね』と言われ、やっと状況を理解する。
遥ちゃんはセナと一緒に過ごすんだ・・・。
「わかったよぉ。
ぢゃあ明日ねっ!」
席を立ち、出口に向かうと一人のホストが絵里に近づいてきた。
少し前に隣に座ったホストだ。
名前は忘れたけど。
『ごちそうさまでした。外まで送っていいかな?』
彼は絵里の返事も聞かずに一緒にローズの外に出る。
朝日がまぶしい・・・。
外は陽がのぼり、暗い店内にいた絵里には目に朝日が痛い。
彼は絵里の手をそっと握り、片手を挙げてタクシーを止めた。
「あ、ありがと」
スマートな彼の対応に少しドキドキした。
『連絡先、聞いていいかな?』
絵里は彼に携帯を教え、またねと挨拶してタクシーに乗り込んだ。
そして絵里はボーっとタクシーの窓から流れていく景色を見て大久保に向かった。
―――その時だった。
見覚えのある車が正面から来ていた。
絵里は酔ってぼやける視界で必死に車の運転席を覗いた。
ケン―――
その車には、やっぱりケンが乗っていた。
そして、ケンは気付かずに絵里のタクシーの脇を通り過ぎていった・・・。