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蝶になって  作者: ゆり
13/23

13、アフター

絵里はユウヤの隣、遥ちゃんはユウヤの部下の隣に座る。



ユウヤはノアで、いつもお酒が入ると絵里の手を握ったり、ベタベタしてきていた。


そして絵里に

『早くやらせろよー』

とか、冗談ぽく言ってくる。


遥ちゃんいはく、だいたいの金融屋さんに指名取るには色恋接客で営業するか、とことん飲んで盛り上げて営業するかのどちらからしい。


最近絵里もわかってきて、おじさんはうまい事いえばだませるけど、同年代に近い男は難しいなと思う。



そして、ユウヤは一番の太客だから、余計に神経を使って営業している。




『じゃあ、酒そろったし、乾杯しよーぜ』


ユウヤの声で、皆グラスを持つ。


絵里はお酒が弱いからカクテルがいいって言ったのに、強制的に四人ともビールだった。




ビールを無理矢理、喉に流し込む。


「こんなまずいの、どこが美味しいの?」


ユウヤが笑いながら絵里の髪を撫でる。



・・・いきなりケンを思い出してしまった。


ケンは付き合ってた頃、よく絵里の髪を撫でてくれた。

その手のひらが暖かくて、優しくて、心が幸せな気持ちであふれた。



・・・でも、今のユウヤの手のひらは違う。


同じ行為も、全然違う。




ケンを思い出し、胸が痛い―――。



同じ東京にいるのに、ケンの姿はないよ。



指輪をはずした時からケンの事は胸の奥にしまったはずだった。


だけど・・・

どんどん気持ちが溢れる。


ケンに逢いたい。



その事を認めたくないし、知りたくなかった。


でも・・・。



やっぱりケンをまだ想う気持ちが残ってる。




キャバクラ嬢になる時に、はずした指輪の跡をさする。


そこには何もなく、うっすらと日焼けで白い指輪の形が残っているだけだった・・・。




絵里が物思いにふけっていると、テーブルの下でユウヤが手を繋いでくる。



絵里はまた現実に戻り、ユウヤにとびっきりの営業スマイルを見せた。




チュッ。



ユウヤの唇が、絵里の唇に一瞬ふれた―――



あまりにいきなりすぎて、絵里は呆然とする。


柔らかくて、気持ちが悪い・・・

ユウヤが見てるから口を拭う事もできない。



絵里は芝居をした。 照れたように下を向き、携帯が鳴ったふりをして部屋の外に出る。



そして、トイレにかけこんで口を洗う。


鏡を見上げると、厚化粧で派手な女が映っている。



金のために何してるんだろう・・・。




涙が一粒こぼれる。


また一粒、

そしてまた一粒・・・





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