12、キャバクラ嬢
辞表を出した夜、絵里は心に決めた事があった。
「やるからには必死に稼いでやる。
そして、いつか遥ちゃんも抜くくらいに頑張る!」
遥ちゃんは、ノアの不動のナンバー1。
売り上げは月に400万だ。
今の絵里は月に100万ちょっとだから四倍近いけど、目標は高いに越したことはないよね。
それから二日後、絵里は新宿の隣の駅の大久保駅近辺に引っ越しをした。
ノアの寮だ。両親には
「渋谷のサロンに移動したから、寮に入らなければ通えない」
と嘘をついてしまった。
急だったから驚いていたが、両親は頑張ってねと応援してくれた。
実家から通えば両親にばれる。
そして心配させてしまう。
それが嫌だった。
そして絵里は必死に働いた。
嫌いなタイプのおじさんと同伴をしたり、苦手な酒を飲んでつぶれる日も多かった。
でも、絵里の売り上げは確実に上がっていった。
キャバクラ嬢になってもうすぐ一ヵ月の頃、絵里はユウヤとアフターに行くことになった。
アフターとは同伴の逆で、店に来た客と仕事後に会うことだ。
でも、同伴とは大きく違う。
同伴は同伴バックがあり、女の子にお金が入る。
ようは、店の外で仕事をするようなもの。
でもアフターはキャバクラ嬢がお客さんにサービスで行ってあげるもの。
昼間の会社でいうと、サービス残業だ。
それに、アフターは深夜でお酒が入ってる状態だから、あまり親しくないお客と行くと危ないもの。
それで襲われたり、ホテルに無理矢理連れ込まれたなんて話は腐るほどある。
・・・説明が長くなったけど、アフターに絵里とユウヤとユウヤの部下と遥ちゃんの四人で行くことになった。
ユウヤの部下は遥ちゃんを最近指名している。
そして四人はノアで飲んだ後、歌舞伎町のアフターご用達の某カラオケ屋にきた。
ここのカラオケはビップルームもあるし、食事がカラオケ屋とは思えないくらいに美味しくて、絵里と遥は二人でよく来ている。
アフターをしたのは初めてだし、ユウヤとノア以外で会ったのは渋谷の食事以来。
ノアで一気ばかりしているいつものユウヤではなく、少し大人っぽくて緊張してきた・・・。




