11、諭吉
遥ちゃんと電話をした後に服を買い、絵里はユウヤに電話をした。
「今、どこにいたの?」
『ブルガリで買い物中ー。
エリは?』
「今買い物終わって、駅前のスクランブル交差点にいるよー。」
そして、息をフゥーっと吹き、言葉を続ける。
「どこに行けばいい?」
絵里は行くと決めた。
ノアに行った日から一週間、ずっと悩んでいた事にも決着をつけよう。
今日働いてみて、続けれそうだったら入店しよう――――。
犯罪者でも、悪人でも、もう割り切ろう。
悪い事をして稼いだ金なら、とことん使わせて、金を稼いでやる!
間違った考えかもしれないけど、そう思った。
そして、絵里はケンと別れてから一度もはずさなかった指輪をはずした。
ケンに申し訳ない気持ちがわいて、付けているまま汚れていきたくなかった。
それから絵里はユウヤと同伴し、売り上げも20万ちょっとあげた。
店長にもほめられ、営業終了後に入店の誓約書にサインをした――――
それから三週間ほど経った頃、絵里のノアでの初給料日がきた。
給料日は月に二回で、1日〜15日までの給料が月末に払われる。そして16日〜月末の給料が15日に支払われるしくみだ。
ユウヤは同伴した日以来、だいたい週2回ほどは『今日行くから』と電話をしてきたので、絵里はそのたびにノアに出勤した。
今日の給料は二回分の出勤だけだから、少ししかないかもしれない。
でも、臨時のお小遣いみたいでウキウキする。
しかし、給料袋をもらった時に予想ははずれたと思った。
袋をもらった時のさわり心地が・・・
ビックリして店長の目の前なのに袋をあけた。
袋の中には11人の福沢諭吉がいた。
「こんなに?!
だって、二回しか出勤してないですよ?」
驚く絵里に店長は笑顔で答える。
『エリちゃんは頑張って売り上げ出してるでしょ。
ユウヤさん以外にも最近は指名が来てるから、次はもっと給料袋が厚いよ!
エリちゃんは才能があるよ。
もっと出勤したら、月給100万くらいは簡単だよ。』
「・・・ひゃ、ひゃくですか?」
『うん、そう。
今日は15日だから、1日から15日までの今月前期分の売り上げを計算したんだ。
エリちゃんは・・・
63万円!前期のナンバー6だよ!!
給料も昼間の仕事の二ヵ月分近くはあるはずだよ。
もっと出勤したら、もっとお客さんと出会える。
そしたら売り上げもあがるだろ?
レギュラーとして、週5くらいでる事を考えてくれないかなぁ?
時給も5以上出すから・・・』
店長の言葉に速答はできなかった。
しかし、それから半月後・・・・
諭吉が26人と夏目さんが少し入った給料袋を店長に手渡された翌日、絵里はサロンの上司に《辞表》を提出した――――