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蝶になって  作者: ゆり
10/23

10、金か良心か

ノアの体験入店から一週間がたった―――



絵里は4500円の時給にひかれながらも、サロンで地道に働いていた。


そして今日は、サロンの渋谷店で研修の日。

絵里の勤めるサロンは渋谷が本店で、一ヵ月に一度は本店で研修を受けに行く。



今日の研修の後は、この前のノアの給料で服を買おうっと。


ウキウキしながら同僚と車に乗り、渋谷へ向かった。




思ったより研修は早く終わり、夕方前には渋谷店を出ることができた。



『じゃあ、帰りますかぁー。

帰ったら、デニーズ行かない?』


同僚たちが声をかけあい、車に向かう。


研修の日はサロンに寄らずに帰宅しても平気なので、皆で食事して帰宅する事が多い。



『咲坂さんも行くでしょ?』


「あたしはちょっと・・・。

今日は渋谷で買いたいモノがあるから、先に帰ってください。

すいません。」



年上のカウンセラーに謝り、同僚には後で連絡するねと言って、絵里は109方面へ向かった。




渋谷の夕方は、いつもすごい人混みだ。

学校帰りの学生、疲れた顔で携帯をいじるサラリーマン、歩いている女の子に片っ端から声をかけるスカウトマンたち・・・。



109に着いた時、携帯が鳴った。


―――ユウヤだ。

二日に一回くらいはユウヤから電話がくる。




「はぁい」


『エリさぁ、今渋谷いるだろ?!

後ろ、後ろ!』



・・・えっ??


あわてて後ろを振り返ると、ガラの悪いスーツの男が三人いた。

見覚えのあるユウヤが手を振る。



『久びさぁ。 何してんのー??

一人でいたの?』


「あ、うん。


買い物中だったの。」


『じゃあさぁ、買い物終わったらメシでも行かない??

その後にノア行くからさぁ。』




どうしよう・・・。


断れないーっ。

けど、こんなガラ悪い人三人と食事なんて微妙。




「じゃあ、買い物終わったら電話するね。」


絵里はとりあえず逃げたかった。


『おぅ、じゃあ後でな』とユウヤは言い、仲間と駅方面に歩いていく。




遥ちゃんに連絡して、相談してみよう・・・。




しばらく携帯を鳴らすと、遥ちゃんは寝呆けた声で電話に出た。


絵里は

「起こしてごめんね」

と謝りながら、ユウヤと連絡取っている事と、今の出来事を話した。



遥はしばらく『ウン、ウン』と話を聞き、絵里に言った。


『それは、ユウヤさんと同伴って事でしょ?

働くのが嫌じゃなければ同伴したら??


ノアに入店して、自由出勤の契約するとか。

・・・あ、自由出勤っていうのは、出勤日を決めないで来れる日に出勤するっていうのなんだけど。』


「そんなのもあるんだぁ。

それ、いいかも?」


『ユウヤって、金融のユウヤくんでしょ?


金持ってるし、金使うから客にした方がいいよ!』



金融? あんな若いのに金融関係の会社員なのかな??


「金融って・・・?」


『闇金融だょ。

キャバクラだと、みんな闇金融の人を金融屋さんとか、金融とかって言うの。』

「えっ!?


それって、犯罪者じゃん!!」



『まぁ、そうだよね。


でも、若くて金持ちなお客さんはだいたい金融かなぁ。


犯罪者でも、軽蔑したらお水はやってけないよ・・・。

それに、慣れちゃう。』




返す言葉がなかった。



ノアで体験入店した日、深夜は半分くらい若いお客さんだった。


若いのになんでお金を持っているのか不思議だったけど、やっと謎がとけた。


ユウヤは犯罪者なんだって思うと、食事に行く気がしない。



「やめとこうかなぁ・・・。」


『もったいないよ?


ノアは《時給》か、《自分指名の客の売り上げの40%》が給料なの。


ユウヤくんはいつも15万は使うし、ユウヤくんもユウヤくんの友達も指名がないから絵里ちゃんの売り上げになるじゃん?

簡単に計算しても6万くらい稼げるってことだよ。』



・・・えっ?6万?


また金で気持ちが揺らぐ・・・。

ほんと自分が恥ずかしいんだけど、お金が良心に勝ってしまいそう。



どうしよーっ?!

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