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6. 犯人は逃亡しました

「陛下、私最近語学を勉強し始めましたの」


「……………………」


いらいらいらいら。


「私、陛下のお好きなお茶をお持ちしましたわ」


「……………………」


いらいらいらいらいらいらいらいら。


「陛下、私例え財と地位全てを失おうとも、陛下に生涯お仕え致します」


「……………………」


ぷちっ!


いい加減にしてくれ!!誰だ、俺の個人情報を流している奴は。


ついに堪忍袋の緒が切れた皇帝。

だが、それを隠しつつ、令嬢に優しく話しかける。その穏やかな表情からは、いつもの女性に対する冷たさなど欠片も感じさせない。


「最近、変わったな」


「何か、陛下のお気に障りましたか?」


令嬢が恐る恐る問う。

ちなみに、これもリエナ仕込みだ。この場面で、そうです私とっても綺麗になったでしょう陛下などと言うのは、皇帝の理想に反する。皇帝は控えめな女性が好き(リエナ・リサーチより)なので。


「いや、とても綺麗になった」


皇帝は全ての美姫を魅了する笑みを浮かべて言った。思い通り、令嬢は顔を赤らめて俯く。


「その……陛下のために努力致しましたの」


「俺の好みまで把握してくれているとは、嬉しいものだな。こんなことまでどうやって調べたんだ?」


「はい、最近陛下に身も心も尽くしたいという者で、茶会を開いておりますの」


茶会……そこに、この後宮全体を巻き込んだ事件の手がかりがあるのだろうか。




「リエナ様、効果は絶大のようですよ!!」


アリーが先程令嬢と面会を終えた皇帝とすれ違ったようだが、とてもイライラしていたらしい。

リエナも最近皇帝を見かけたが、幾分か疲れているようだった。この作戦が効いているのだと期待している。あの姿を見た時は二人で喜んだものだ。ささやかだが、お祝いのパーティーまでしてしまった。


「ですが、陛下もそろそろ捜査に乗り出しているようです」


「そうね、潮時かしら。そろそろ怪我を理由に実家に帰らせて貰おうかしらね〜」


実は、怪我の治りが良くない。一向に回復の兆しはなくいつ体調を崩すかわからないのに、これ以上後宮にいるのは危険だ。貧血で倒れて後宮の医者に診察してもらうなどという馬鹿な事態はなんとしても避けなければならない。


「それに、資金調達しなきゃまずいしね」


リエナの後宮での生活資金はすべて自腹だ。公爵家に出して貰っているとかではなく、本当に自分で稼いでそれをドレスなどに費やしていた。公爵家にお世話になっている間に必死に稼いだお金だ。それがこんなドレスに消えていくかと思うと、涙が止まらない。


さて、この事実がバレてしまうと皇帝の「慎ましい女」に当てはまるわけだが、そこは心配いらない。後宮の女性には後見というものが付いていて、お金はそこから出して貰う女性も多い。だから、後宮のお金を使用していなくても、お金を使っていないと判断されることはない。

さすがのリエナも、国庫を減らすような大それたことはしない。それをしたら皇帝は困るに違いないが、一番に被害を被るのは国民だ。仮にも公爵家の一員として、民は大切にしなければならない。


「じゃあ、私は申請して参りますね」


アリーは公爵家に帰れる嬉しさに、部屋を飛び出して行った。




申請を終えたアリーが息を切らして戻って来た。「リエナ様!」と言いながら勢い良く扉を開け放つ。

またか。今度は何が起きたというのだ。アリーは優秀な侍女だと思うが、もう少し落ち着いて行動して欲しいものだ。


「リエナ様、びっくりな話があるのです!!なんと、リエナ様死んだことになっているみたいです」


「…………は、どういうこと?」


「陛下の魔法を受けて死んでいるそうです」


どうやら、私は死んでいるらしい。だが、よく考えたら生きている方がおかしいのだ。皇帝の藍色の髪は神に近い色とされ、神の加護があるらしい。神の加護とは、具体的に言えば強い魔力を持っていることだ。つまり、普通に考えれば、皇帝の尋常でない魔力で攻撃を受けて生きているわけがない。


「それって、里帰り申請出来ないんじゃ……」


まさかの事態に顔を青くするが、それは杞憂に終わった。


「大丈夫です。普通にできました!!」


どうやら、後宮の管理はとってもいい加減らしい。あの皇帝のことだから出て行く者は勝手に出て行けとでも思っているのだろう。大丈夫か、この国は。


「ま、帰れるならいっか」


これなら実質いないことになってるから出入りも簡単だし、夜会の出席も自由だ。

なんと言っても最大のメリットは、情報収集に気を遣わなくて良い点だ。もし何らかの失態を犯しても、死んでいる者は捜査対象に含まれない。現に今、皇帝は情報を流した犯人を捜索中だが、たぶん特定されることはないだろう。

つまり、リエナにとって困ることなど一つもない。むしろ良いことずくめだ。


「じゃあ、早速里帰りの準備ね」


準備といってもそれほどすることはないが。ドレスは一度着たら売っているし、大事なものは全て公爵家に置いてある。


「そうですね。リエナ様、帰ったらマシな服を着ましょうね」


二人とも、目に痛い色合いのドレスを見ることも、金の調度品を見ることももう、うんざりだった。



こうして、皇帝に気づかれぬまま事件の犯人は逃亡に成功した。







とてもたくさんの人に読んでいただけて嬉しいです。これからもこの作品をどうかよろしくお願いします。

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