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33. 皇帝もたまには反省する

お待たせしました。

修正作業が完璧とは言えませんが、とりあえず気になっていたところは訂正できたので投稿します。

反乱軍のもとへと駆けつけると、思っていたより規模は少し大きかったようだ。


「反乱軍の他にも発起した者たちがいたようです」


騎士団長が騎士と共に駆けつけ、皇帝に告げる。

反皇帝派の手練れに加えて、拙い武装をした者たちがそれぞれに武器を持って立ちはだかっている。


「おそらく………国民たちだ。だが、なぜ?」


その答えは分からないまま、戦いは始まった。


武装して最前線で戦う国民たちは、騎士たちの鮮やかな手腕で次々に捕らえられていく。

いくら武装しているとはいえ、素人が戦闘のプロに敵うはずもない。


「さて、残されたのはお前たちだけだが?」


皇帝はにやりと笑って反乱軍を見る。


「くそっ………」


追い詰められて一塊になった反乱軍は、騎士に取り囲まれていた。

じりじりと騎士は反乱軍に詰め寄る。


「さあ、観念して………」


皇帝がそう言いかけたまさにその時。


「うわああーーーー!」


追い詰められた反乱軍の中から魔力の嵐が巻き起こり吹き飛ばされる。反乱軍は中心から崩れていき、即座に崩壊した。


「魔力の暴走――――またか!?」


魔力の暴走はそう頻繁に起きるものではない。偶然、と言えばそれまでだが、普通はあり得ない。

何かがおかしい、と皇帝の勘が告げる。


「誰かっ、止めてくれぇぇぇ」


陣営が瓦解し姿を現した男は、身を屈めて流れ出る魔力に耐えていた。


こんなことは、全く想定していなかった。見るに、相手は一般市民だ。簡単に傷つけて良いはずがない。

攻撃する術はたくさん持っているが、魔力を抑える繊細な技術など、持っている筈もなかった。


「陛下、俺に任せてください!」


そんな時に名乗りをあげたのは、ナツだった。


「魔力をお借りしますね」


そう言って皇帝の手を握ると、ナツ自身の身体を介して相手に力を注ぎ込んだ。

絶妙な力の使い方で、相手の魔力とうまく調和させて鎮めていく。


「………終わりました」


その瞬間、相手はぱたりと地面に倒れた。




その後、反乱軍は騎士たちによってあっという間に鎮圧された。


縄に括られた男たちはあっけない終わり方に呆然としていた。


「あんたが皇帝だな?」


そんな中、縛られた国民たちの中から、男が一人、捕縛を振り切って駆け出てきた。即座に騎士たちに押さえつけられるが、男は皇帝を睨み付けたままだ。


「なぜ、世界の危機について知らない振りをするんだ?巫女が世界を救う気がないのは、わかっているだろう?」


「………」


皇帝は静かに男の怒りを受け止める。


「あんたはそれだけの力を持っていながら、なぜ、未だ動こうとしない。それどころか、その力でもって事実を隠そうとしている」


ぴくり、と皇帝の指先が動く。

それは民を思っての行動だった。しかし、皇帝自身後ろめたいところがあったのだろう。


「俺だってこんなことしたくないんだよ。国や、家族を裏切る行為だしな。だが、こんな騒ぎでも起こさないと、きっと気付いてなんか貰えない。俺たちの声は届かないんだよ」

男の悲痛な叫びが静かな空間に響き渡る。

皇帝を見ると、彼は顔を歪めて男を見つめていた。

彼の“皇帝”としての仮面は剥がれ、そこには、国民を愛するただの男がいた。


「もう、色んな所で崩壊の予兆は確認されているんだ。隠そうとしたってそうはいかない。お前が動かないなら、何度でも俺たちは立ち上がる」





「俺は、何て事を………」


全てが片付き執務室に戻った皇帝は、拳で壁を叩き、膝から崩れ落ちた。


あの男にも、妻子はあった。だが、家族を犠牲にしてでも国に訴えることを選んだ。

そこまでさせたのは紛れもなく、皇帝の決断だった。


初めから、国民に話すべきだったのだ。

なのになぜ、事実を隠してしまったのか。

国民は自分を信頼してくれていたのに。

それを無視したのは自分自身だ。


それには、皇帝自身の巫女に関わりたくないという思いが少なからず関係していた。

皇帝は初めて、政に私情を挟んでしまったということに気付いた。

それほどまでに自分は、巫女という闇に心を侵されていたのか。


だが、もう逃げている場合ではない。巫女と向き合わなくてはならない時が迫っているのかもしれない。


皇帝は、二度と民に辛い思いはさせないと誓うのだった。


「今すぐ発表を行いたい。国民を城下の広場に集めろ」


「わかりました」


即座に国民は広場に集まった。

皇帝のここでの発言は、見事に国民の心を鎮め、後の世まで語られることになる。



私は、大きな過ちを犯してしまった。


皆も知っての通り、世界は崩壊の危機を迎えている。巫女の救済が進まないまま、崩壊はすぐそこまで近づいている。


だが、約束しよう。

たとえ、我が身を擲ってでも――――――――民を守るということを。


私は、世界の救済を諦める気はない。




リエナは発表を終えた皇帝のそばで皇帝と宰相の話に耳を傾けていた。


「さて、今から本格的に対策に乗り出しましょう」


「まずは世界崩壊の予兆についてだな。救済より前に、こちらを対処しなければならない」


予兆というのは魔力の暴走のことだ。子供には稀にあることだが、魔力が安定し、制御を体が覚えている大人には起こりえない。

これは間違いなく世界崩壊の予兆と捉えて良いものだ。


なぜ、世界崩壊に魔力が関係するのか。それは、世界の崩壊が“渦に世界中の魔力が飲み込まれること”を意味するからだ。

ある日突然渦は現れ、じわじわと空間を侵食し、人の魔力を呑み込んでさらに拡大していく。要するにブラックホールみたいなものだ。

そのため、人の体内にある魔力は渦に引っ張られてコントロールを失う。今回起きた事件の原因もそれだ。

さらに被害が進むと、自然に宿る魔力が失われてしまう。大地は痩せ、多くの命が消えてゆく。


それを封じるのが代々の巫女の役目だと言われている。

巫女は魔力を呑み込む渦に影響されない。巫女の持つ力は、神の力であり渦に呑み込まれることはないからだ。それでいて、渦に影響を与える力は持っている。

つまり、渦を封じるのは巫女にしかできないことなのだ。


「本題の世界の救済についてはやはり、巫女に心を入れ替えて貰うしか手はないですね」

「巫女一人に世界の命運を託すことがどれほど恐ろしいことか、初めて気づいたな」


「我々にはどうしようもないというのがもどかしいですね。皆が恐怖に喘いでいる中で巫女だけ笑っているというのは、許せないことです」


「だが、巫女は死ぬと代替わりするだろう?最悪はその手段しかないな」


おいおい、爆弾発言出ましたよ。巫女は基本的に死なないと言うが、前例があるのだろう。

リエナとて状況が状況でなかったら同級生に死んで欲しいとは思わないが、彼女のおかげで多くが救われるのだからその選択肢は考えなくもない。


「ところで、これだけの事件があったのだ。巫女の訪問は取り消しになるだろうな?」


皇帝が緊張した面持ちで宰相を見つめる。


「いいえ、残念ながら巫女はもう出発なされたそうで、到着の日を連絡してきました」


「あれだけの事件があった後だぞ?巫女が民の敵であることは知れ渡っているのに、か!?」


皇帝は美しい顔をしかめ、鬼の形相をしている。


「事実を発表した後に公式の場で巫女を招くことはできない。こうなったら、パーティを取り止めるしかない」


「そうですね。パーティはこんな時期ですし、自粛すべきでしょう」


「まあ、最初からやる気はなかったから、それは構わないのだが………」


問題は巫女だ。何の意図があってこの国に近づくのか。

巫女が国を出たという例は少ない。巫女は世界救済の役割に専念するため、国のイベントには参加するものの、わざわざ外国に足を運んだりすることはない。

外国側としても巫女を政治の駒として利用することはルール違反なので招待などしない。

昔、巫女を悪用しようと誘拐した国に天罰が下ったという話もあるくらいだ。巫女を利用することはできない。


「本当に、訪問を拒むことはできないのか………?」


ここまで対応に困っているのは、今の巫女が前例のない存在だから。

歴代の巫女は、巫女と呼ぶに相応しい清廉潔白な女性が選ばれていた。周りの者が欲望に満ちた目で寄ってこようが、靡くことは無かった。

だからこそ、現れた巫女は無条件で絶対的な信頼を寄せられ、彼女たちを最大限保護するような法律が作られていったのだ。法には、今の巫女に対応できる内容がない。


「まったく、何故神はあのような者を巫女に選んでしまったのか―――先代と言い、例外続きですね」


「宰相」


皇帝が静かに宰相を睨み付ける。その顔は、今までに見たことがないほどの怒りの表情。


「っ失礼致しました」


宰相は慌てて頭を下げた。


先代の巫女――――――――そこに、皇帝が巫女という存在を嫌う理由があるのかもしれない。


万が一、世界の救済と関わっている可能性もある。先代の巫女について情報を集めなければ。

リエナは世界救済の糸口を見つけるため(地球へ帰るためとも言う)、巫女に興味を持ち始めたのだった。




誤字、脱字、矛盾点などありましたら、報告お願いいたします。

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