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2. 皇帝初訪問

リエナは快適な生活を送っていた。

毎日朝から晩まで異世界転移に関する本を読み漁る……これほど幸せな時はない。


陛下が訪れないとわかっていると、安心できるわ〜。


なにせ、陛下が来るとわかれば、後宮の女は大変だ。

大量にあるドレスの中から自信のある一枚を選び出し、化粧や髪型はいつも以上に侍女がよりをかけ、準備には途方もない時間がかかる。

もちろん後宮の女性たちは皆、皇帝がいつか自分の所へ来てくれると信じて疑わないので、日々の身嗜みには余念がないのだが。

リエナはそんな面倒なことはしたくはないのだが、皇帝は無駄に着飾る女は嫌いなので(リエナ・リサーチより)一応そうしている。


「あ〜、平穏ね〜」


「そうでございますね〜」



……そんな呑気な日々を送っていたある日のこと。


「たっ大変です、リエナ様!!」


朝早くから侍女のアリーが慌てて部屋に駆け込んできた。


「皇帝陛下がいらっしゃるようです!!!」


「いつ?」


「今日のお茶の時間に。最近は毎日、女性のもとを順に回っているようで」


はは〜ん、ご機嫌とりなわけだ。


皇帝の訪門がないことで後宮の女性が不満を言い始めているのは知っていた。

だが、女を嫌う皇帝はずっと後宮に行くこと……特に夜の訪いを避けていた。

最近は後宮に行かないことで大臣側からも苦情の声があったらしく、皇帝もしぶしぶ動いたのだろう。


政治に関しては優秀な皇帝陛下だが、世継ぎを残すという点においては優秀ではなかったようだ。


あんなに好き嫌いが激しいようでは一生皇妃を娶ることなんて無理そうだ。

女の醜い争いが嫌いだというのに、正妻がいないせいで側妃や妾の間での争いが激化し、さらに大臣から自分の娘を後宮に送り込まれる羽目になるのだ。そのことを皇帝は本当に理解しているのだろうか。


「取り敢えず、準備に取りかかるわよ!」


「はい、リエナ様!」


ついに、自分の努力の成果を発揮する時が来たのだ。

実は、リエナは皇帝に関するあらゆる情報を調べ上げている。調査はもちろん今も続行中だ。

あらゆるもの……ということは、内容は私的なものにまで及ぶ。それこそ、好きな食べ物から誰も知らないような習慣まで、全て……だ。


皇帝に関するありとあらゆる調査の成果……それこそが、リエナ・リサーチなのだ。


「さてと、何を仕掛けようかしら?」


リエナは笑みを浮かべた。




一時間程かけて、部屋の全ての模様替えが完了した。派手で、無駄にお金をかけた、金色に輝く調度品。品の欠片もない壁紙。

ちなみに、精巧な細工が施されたものはNGだ。陛下は芸術品には目がないので。


「よし、模様替えはばっちり終わったわ。あとはお化粧と髪とドレスだけね」


「リエナ様、ドレスはこれに致しましょう!!」


アリーが差し出したのは、余りにも派手すぎて配色のおかしなドレスだった。セットでアクセサリーも選んでくれている。


「素晴らしいわ、アリー!やっぱりアリーは最高ね」


「リエナ様こそ素敵です!」


そんなやりとりをしながらも、リエナの手は止まらず、着々と準備を進めている。

リエナはカラーコンタクト(地球産)をはめ、厚化粧を施す……それこそ、肌が窒息しそうなくらいに。


「もったいないですね〜。こんなお化粧はリエナ様には似合いませんのに」


リエナはなるべくこちらの顔立ちに似せるように工夫していた。

リエナの変わった容姿は目立つ。些細なことから自分の素性を疑われるわけにはいかない。


「さて、戦闘準備完了ね」


リエナは最後にウィッグ(地球産)を装着した。


「行くわよ、アリー」


「はい!!」


リエナとアリーは皇帝を迎えるために来客用の部屋へ向かった。




「陛下がいらっしゃいました」


アリーが静かに来訪を告げた。


「まぁ、陛下!いらっしゃいませ」


リエナは皇帝に駆け寄り、そう告げる。

部屋に入った途端、皇帝が顔をしかめたのが分かった。


部屋の至るところが、金。調度品も金色。豪奢というか、欠片も品の感じられない部屋は、眩しいくらいに輝いている。


「ごゆっくりしていって下さいませ」


そう言って、上目遣いに皇帝を見上げると、皇帝は眉をぴくりと動かした。


「どうぞ」


お茶と共に、お菓子も差し出した。


しかし、皇帝はなかなか口をつけようとしない。ちらりと目をやっただけで、あとは無言で座っているのみだ。


それにしても、美形ね〜。


藍色の髪に、同じ色の瞳。その顔はもの凄く整っているが、中性的ではなく男性らしい顔立ち。均整のとれた体つきは、毎日の剣の鍛練の証拠だろう。

これなら、たくさんの女性が集まってくるのも頷ける。……性格だけ見るとあまりよろしいとは言えないのだが。


「陛下、どうぞ召し上がってくださいませ?」


「ああ」


リエナは勧めるが、皇帝は一向に手をつけようとしない。


当たり前だ……全て皇帝の苦手なものなのだから。紅茶は皇帝の嫌う濃厚な甘い香りがするもので、お菓子は皇帝の嫌いな果物入り。


皇帝はやっとのことでお茶を一口含み、カップを置いた。

その後、互いに無言の時間が続く。


リエナが口を開こうとした時、ふと皇帝が小物を置く棚の方へと目を向けた。


「あれは、お前か読むのか?」


リエナがそちらに視線を向けると…。


や ば い!! ……片付けるのを忘れていた。

室内の模様替えばかり考えていると、自分の部屋は少し完璧とは言い難いぐらいに物が乱雑に置かれていることを失念していた。

アリーがほとんど片付けてくれているようだが、棚の貴重な資料には手を触れないようにしているから、そこには何冊かの本が積まれたままになっていた。


積まれた本の一番上には、古代史の本が置かれていた。

……過去に異世界から来た者がいないか確かめるための。


やばい、というのは、皇帝は自分の妻となるに相応しい賢明な女性を好む。

自分が賢いとはこれっぽっちも思わないが、一般的な貴族の子女はこんなもの読まない。


さらに言うと、皇帝は古代史が好きだったような……。


―――――――終わった。


自ら平穏な生活に終止符を打つ形となってしまった。


「そんな、私が読むわけ……」


言い訳してみるが、皇帝は解っている、といった風に優しげな目でこちらを見ている。


「令嬢はそんなもの読まないが……俺は良いと思うぞ」


そのまま皇帝はご機嫌な様子で帰って行った。




「リエナ様……」


侍女のアリーが気遣わしげに声をかけてくる。


「アリー、ごめんなさい。せっかく頑張ってくれたのに……」


「そんなことないです、リエナ様は頑張りました!!」


だが、自分の計画は半分もいかないうちに台無しになったのだ。


「次もまた来るのかしら……」


………………ん、次?

また皇帝が来る→リエナ・リサーチ使える→皇帝に嫌われる好機。


「そうね、次に頑張れば良いんだわ!!今日の挽回をする機会があるじゃない!!」


「そうです、次に向けて頑張りましょう!!今回よりも、もっとすごい計画を考えましょう!!」


こうして二人はまた、皇帝に嫌われるための努力(ここまで来るともはや嫌がらせ)に勤しむのだった。





こんにちは、作者のばにえです。

白銀の華を読んでくださっている方、非常に申し訳ございません。

正直、こんな駄文書いてないで白銀の華を更新しろ、と思ってらっしゃる方もいるかもしれません。

この作品は、満員電車の中ですることのない作者が暇潰しも兼ねて書いているものです。


白銀の華の執筆は少しずつですが進んでおります。何故投稿しないかと申しますと、第一話が書けていないからです。

取り敢えず頑張ります。ダメダメな作者を見捨てないでくれると嬉しいです。

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