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14. 皇帝と宰相は秘密の相談事?

前回の終わり方からしてこのタイトルは……………………まずかったかもしれません(笑)


皇帝と宰相の関係は、決してBのLが残念な方向には(まだ?)走りませんので、ご安心を。


リエナは王都の大通りで買い物をしていた。

今日の容姿は地味な町娘風だ。頭はというと、目元が隠れるくらいの前髪でおさげの髪型にセットしたカツラをかぶり、その上からバンダナを巻いている。服装はシンプルな白のワンピース。軽くメイクを施し、完成。すっぴんに近いので、元よりそんなに目立たないだろう。

王都内では魔力を漏らすと皇帝に感知されるので、ナツと区別するために今回は封じるのではなく魔力を変質させ、抑制している。


何故、せっかくの休日にまで王都にいるかというと、明日は兄の誕生日だったので、プレゼントを買いに来ていたのだ。


それにしても、なぜ皇帝は今日を休暇にしたのだろうか。護衛は毎日するものだろうと思うが、自分がいない方が都合が良いことがあるのだろうか?宰相と密談とか。あ、もしかして禁断の扉を開いちゃった?ナツはもしかしなくてもお邪魔だった?


まあ、どうでもいいか。せっかくの休日なのだから、皇帝のことなど忘れて楽しもう。




………と思っていたら、意外と人に声をかけられて、前に進めません。

あれ、地味な町娘設定は失敗?何故か無駄に目立っているんだけど。


「ねぇ、君ひとり?」


…………なぜそんなことを聞く?私が一人だったら、あなたに不都合なことでも?


「おにーさんが案内してあげようか」


…………赤の他人に声をかけるなんて、よっぽど暇なんだな~。てか、迷子ではないので道はわかる。案内はいらない。


「一緒に食事行かない?俺、奢るからさ」


…………私に食事を奢って何の得になる?


アリーが「色んな人から声をかけられると思うので、気を付けて下さい」と言っていたのは、この事だったのか。思わず誘いに乗って、本来の目的を忘れないように気を付けよう。

アリー、私はちゃんと気を付けてるよ!!



取り敢えず断りつつ歩いていたのだが、ついにラスボス来ました。これはお断りするのが大変そう。

なんか人相が悪そうなオッサン。上半身裸で、汚いズボンをはいている。


「なあ~、お嬢ちゃん。オジサンが良いとこ連れていってあげるから、一緒に来ないか?」


「いえ、私は忙しいので」


ちょっとどころか本気で遠慮したいので、きっちりと断ったのだが………。


「そんなこと言わないで、こっちに来いよ」


あろうことか、このおっさんは路地裏にリエナを引き込み始めた。

てか、汚い手ね〜。ちゃんとお風呂入ってる?せっかくの町娘衣装が汚れるし、そんなに強く引っ張ったら袖が伸びる。

強引な彼に引っ張られるままに、路地裏へと入っていく。


そのまま周りを建物の壁に囲まれた場所に辿り着き、逃げられないように追い詰められてしまった。

すると彼はあろうことか、大事な町娘衣装に手をかけようとしたのだ。これ、一着しかないのに!!この服を買うためにどれだけ硬貨の両替をしたと思っているのだ(傭兵業で高額報酬の後だったので、細かいお金がなかった)。一番大きなお金から一番小さなお金まで替えるのは大変だったのに!!!


思わず、淑女にあるまじき殴る、という方法を選択しようとしたところ………。


「ぐえっ」


――――――――勝手に、吹っ飛んでいきました。

断じて一度も触れてはいないのだが、大事な服は守れたので、何が起こったか、そんなことはどうでもいい。


「おい、大丈夫か?」


声をかけてきたのは、茶髪の好青年――――――――ではなく、皇帝陛下でした。

魔力でわかる。目の前の容姿は皇帝のものではないが、魔力は間違いなく彼のもの。


こんなところで何してるの?

―――――――――――――と訪ねたい衝動に駆られたが、今はナツではないことを思い出し、別のことを口にする。


「大丈夫です。ありがとうございました」


私の代わりに殴ってくれてありがとうございました。大事な町娘衣装は無事です。

精一杯の感謝の意をこめて皇帝を見上げると、皇帝は怒りの形相をしていた。


「貴女は、自分が置かれていた状況をわかっているのか?男に襲われるところだったのだぞ。なぜ、助けを求めない?なぜ、抵抗すらしないんだ?」


あー、そういう状況だったのか。

こんな一般人に負けることは万が一にもないしそもそも殺気がないので、いつもと比べてどうしても感覚が鈍くなる。今度から気を付けよう。


「本当にわかっているのか?」


「わかっていますよ?」


そう、返してみるのだが、まったく信用した様子はない。


「貴女は見ていて非常に危なっかしいな。………………仕方がない、貴女が買い物をしている間、一緒にいてやる」


全力でお断りします!!!


「あの、そこまでして頂かなくとも―――」


「いや、心配だから一緒にいる」


出た、皇帝の無駄な正義感と国民愛!!




皇帝のいない、せっかくかの休日をたのしもうと思ったのに。何の因果か結局皇帝がいる。


不満に思っていたのだが、皇帝が隣にいると、人に声をかけられないことがわかった。


意外と役に立つのね〜。


リエナは非常に失礼なことを考えながら、賑やかな町並みの中を歩いていた。


「そういえば、名前は、何と言う?」


「………」


……………………何と名乗ろう。

リエナとナツは勿論使えない。本名は、リエナと同じ発音になってしまう。なぜかこの国の人たちはリナと言えないらしいので。何度名乗っても発音が「リェナ」となるのだ。


「………ナナです」


名前の最初と最後をとってみた。

今度から変装時の名前候補リストを作っておこう。取り敢えず、町娘の名前は“ナナ”に決定した。




皇帝は実に紳士的にリエナに接してくれていた。はぐれそうになったら腕を掴んでくれたし、歩き疲れたら定期的に休憩を入れてくれた。


これ、貴族の女性の前でしたら及第点なんだけどな~。

これだけの気遣いを見せれば、女性たちは一瞬で落ちるのに。落ちるどころかあまりに幸せすぎて天国に召されるかもしれない。




そんなことを考えていると、前から怪しげな集団が歩いてきた。30人以上で道を塞いでいて、非常に迷惑な存在だ。だが、男たちの恐ろしい雰囲気に誰もその事を指摘する者はいない。


「ボス、あの男っす!あいつが俺を……」


そう叫んだのは、先程リエナが殴ろうとして皇帝がぶっとばした、件の男だ。皇帝に殴られた顔は痛々しく腫れており、思わず「わー、可哀想ー」などと、彼に対する憐憫の情が湧いてきたと同時に、滑稽なその顔に声を上げて笑いそうになる(完全に上から目線)。

大笑いしそうになるのを抑え、今の状況を考察してみる。恐らくこれは、自分がやられたことをボスに告げ、キレたボスが登場してくるという、何ともありがちなパターンに違いない。


「へえ、お前か?俺の部下を可愛がってくれたのは」


明らかに山賊か盗賊のお頭っぽい人だ。顔には何創もの傷があり、醜いが凄みのある顔だ。腰には実用的っぽい剣がある。彼の後ろには同様に武器を携えた手下らしき男たちが控えている。どれも顔が同じで区別がつかない。


「ナナに手を出そうとしたから、彼を止めただけだが?」


皇帝はいつもと違う色の瞳で相手を冷ややかに見つめる。今は美形ではないのでその顔から醸し出される鋭利な雰囲気はいつもより緩和されているものの、体から放つ殺気は普段と比べ物にならない。

てか、なに勝手に呼び捨てで呼んでるの?


「そうか、じゃあ今から彼女を助けたことを後悔することになるな!!」


そう言って、彼らは剣やら棍棒やら、武器を取り出してきた。応戦しようと皇帝は持っていた剣を構える。


え、私?戦わないけど?

―――――だって今は、か弱い町娘設定だし。大事な衣装を汚したくはないし。

そもそも今日は仕事中ではない。相手もちょっと悪めのおっさんたちで、命を脅かされる暗殺者や傭兵などの類いではない。

まあ、まずいと思ったら全力で逃げるとしよう。皇帝は自分の命くらい自分で守るだけの実力はあるだろう。


皇帝は次々に敵を打ち倒していく………が、いくらごろつきと言えども、数が多すぎる。皇帝はなかなか苦戦しているようだ。魔力を使えば一撃なのに。命の保証はできかねるが。………まあ、こんな雑魚に魔力を使いたくないのも理解できるけれど。


そんなこんなしているうちに、ボスがリエナに近付いてきた。


「へえ、なかなかの別嬪じゃねぇか」


無理やり頤を持ち上げられ、気持ち悪いボスの顔の方を向かされる。顎にかけられたこの手の臭さから考えると、ボスも風呂には入っていなさそうだ。さっきの雑魚と比べると、臭いもボスクラスってわけか。


ねえ、これってか弱い町娘なら怖がらないといけない場面?

あまりの臭いに鼻がもげそうで、怖がる余裕は欠片もないのだが。殺される前に臭いで死にそうなのだが。


お〜い、皇帝陛下〜。ピンチですよ〜。気付いてくださ〜い。


「彼女に手を出すな!!」


リエナの念が通じたのか、皇帝はこちらに気付き、駆け寄ろうとする。


こういう場面で「手を出すな」と言われてそれに従う奴は、低い知能しか持たない者の中にも、いくら何でもいない。いたとしたらそれは、救いようのない馬鹿だ。たいていの展開は予想がつくだろうが――――――――――。


「女を傷つけられたくなければ、剣を捨てろ」


はい、こういう展開なわけですね。

リエナは首に短剣を突きつけられる。皇帝はやむ無く剣を捨てた。


「さて、野郎共、ずらかるぞ。女も手に入れたことだし」


「な、彼女を解放してくれるんじゃなかったのか」


皇帝を見続けてきたリエナには一目で演技だとわかるが、ボスは皇帝の悔しそうな顔に満足げな表情を浮かべる。


「傷付けないと言っただけで、お前に返すとは一言も言ってない」


ボスはリエナを手に入れ皇帝より優位な立場になったのを良いことに、油断し始めた。


「さっさと帰るぞ野郎ども。今日はいいものを手に入れた………な」


その瞬間、ボスが倒れた。どうやら皇帝が油断しまくりで無防備状態のボスの隙(?)をついて攻撃したらしいので、その間に逃げる。


「ナナ、危ない!!」


振り返ると、ボスを傷つけられたことに逆上し剣を振り上げて襲ってきた相手がいた。皇帝はリエナを庇うように抱きしめ、身体を倒した。

だが、このままでは二人とも危ない。リエナは心の中で舌打ちをして、襲いかかってきた男の足を掬った。

男は見事にすっ転び、何とか剣で貫かれることは避けたのだが――――――――。


「このっ、ふざけた真似してくれやがって!!!」


――――――――これは火に油を注ぐ結果にしかならなかった。

今度こそ、もうダメかもしれない。そう思ってリエナは目を閉じる。皇帝はリエナを守ろうと、強く抱き締める。


男が剣の柄を振り上げ、突き立てようとしたとき―――――――――。


「そこまでだ!!王都警備隊だ。全員捕縛させてもらう」


王都の警備隊の者たちが駆けつけ、すぐさま彼らは男たちを捕縛していった。


怖かった…………。


皇帝は自分の命を捨ててまで、あの男たちの命を守ろうとした。絶対に魔力を使おうとはしなかった。

彼の、人を傷つけまいとする意志は堅かった。誰かを守ろうとする思いは強かった。

リエナは、いくら皇帝が国民に優しくても、いざという時は自分の命を優先するだろうと、護衛の際もどこか安心しきっていた。誰だって我が身が可愛いものだ。それに皇帝という誰よりも責任ある立場に在るのだから、そう簡単に我が身を投げ出すような真似はしない………そう、思っていた。

彼女の護衛の際の余裕は、そんな勝手な憶測によって生み出されていたにすぎないのだ。

今までの自分の行動を思い返して思わず身を震わせる。自分はなんて甘い考えだったのか、と。


「大丈夫か?」


皇帝が落ち着かせるようにぽんぽんとリエナの背中を叩く。

だが、震えは止まらず、立ち上がることもできない。自分の過ちによって失われようとしていたものの大きさを自覚し、その心は恐怖に呑まれそうになる。

今まで幾人もの人を傷付けてきた。それは、生きるためには仕方の無いことだと自分の中で割り切っていた。いつか、人を殺す覚悟もしていたつもりだったが、命というものは想像以上に重たいものだった。




前書きの「BのL……」の話は冗談です。一切そんな要素は入りません。

本当に心配された方がいたら申し訳ございません。

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