第7話
この物語は、一本の桜の木の下から始まります。
町から少し離れた丘の上に立つ、大きな桜の木。
昼は静かで、ほとんど人の訪れない場所ですが、夜になると、なぜか悩みを抱えた人たちがこの場所へやって来ます。
そこには、夜に人の話を聞く猫耳の少女「ルナ」と、昼に困っている人を助ける犬耳の少年「ソラ」がいます。
桜の花びらは、人の心にそっと寄り添うように舞い、時には感情を映すように散っていきます。
静かな時間の中で生まれる、小さな物語をゆっくり楽しんでいただけたら嬉しいです。
第七話「嘘の吹雪」
昼の風が
桜の枝を揺らしていました。
ソラとサクラは
桜の木の下に座っていました。
花は咲いているのに
どこか元気がない。
静かな桜でした。
そのとき。
一人の男性が
ゆっくり歩いてきました。
スーツ姿。
少し疲れた顔をしています。
ソラは立ち上がりました。
「こんにちは!」
男性は少し驚きました。
「え?」
ソラは笑いました。
「どうしました?」
男性は少し迷って
それから言いました。
「別に」
「何もないんです」
その瞬間。
バサッ
桜の枝が大きく揺れました。
そして
花びらが
一気に舞い上がりました。
まるで
桜吹雪。
ソラはびっくりしました。
「うわ!」
サクラは桜を見上げました。
「……怒ってる」
男性は驚きました。
「え?」
ソラは首をかしげました。
「ほんと?」
男性は少し黙りました。
でもすぐに言いました。
「本当に大丈夫です」
その瞬間。
さらに強い桜吹雪。
花びらが
ぐるぐる舞いました。
男性は苦笑しました。
「すごいですね」
ソラは桜を見上げました。
サクラは言いました。
「嘘」
男性は静かになりました。
花びらが
少しずつ落ちてきます。
サクラは続けました。
「この桜」
「嘘きらい」
男性はしばらく
桜を見ていました。
そして小さく笑いました。
「……参ったな」
それから言いました。
「本当は」
少し空を見ました。
「ちょっと疲れてる」
その瞬間。
桜吹雪が止まりました。
花びらが
静かに落ちました。
まるで桜が
「それでいい」
と言っているみたいでした。
ソラは桜の下に座りました。
トントン。
隣を叩きます。
「どうぞ」
男性は少し驚きました。
それから
ゆっくり座りました。
桜の花びらが
やさしく落ちました。
昼の桜は
今日も
本当の気持ちを聞いていました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
「桜の木のふたり」は、桜の木の下で生まれる小さな出来事や、人の気持ちに寄り添う時間を描いた物語です。
満開の桜だけでなく、散る花びらや季節の移り変わりとともに、ルナとソラの日常や、訪れる人たちの物語を少しずつ描いていけたらと思っています。
もしこの桜の木の下の時間を気に入っていただけたら、また次のお話でもお会いできたら嬉しいです。




