第11話
第十一話「守りたい場所」
白い車は
桜の木の前に止まっていました。
スーツを着た男の人たちが
降りてきます。
ソラとサクラは
少し離れたところから見ていました。
男の人の一人が
桜を見上げました。
「大きいな」
別の人が言いました。
「でも仕方ない」
紙を見ながら言います。
「工事の予定だから」
サクラは小さくつぶやきました。
「切るの…」
ソラは桜の幹を
見上げました。
風が吹きました。
花びらが
少しだけ舞いました。
まるで桜が
不安そうに揺れているみたいでした。
ソラは小さく言いました。
「ダメだ」
サクラが振り向きます。
「え?」
ソラは桜の幹に
手を当てました。
「この木」
「守りたい」
サクラの目が
少し大きくなりました。
そのとき。
夜になりました。
月がゆっくり
空に上がってきます。
ルナが
いつものように歩いてきました。
桜の木の前で
立ち止まりました。
少し違う空気。
ルナは聞きました。
「どうしたの?」
ソラは言いました。
「桜」
「切られる」
ルナは
桜を見上げました。
しばらく
何も言いませんでした。
風が吹きました。
桜の枝が
静かに揺れました。
花びらが
一枚落ちました。
ルナは桜の幹に
そっと触れました。
そして小さく言いました。
「嫌だね」
ソラはうなずきました。
サクラも
桜を見上げました。
三人は
桜の木の下に立っていました。
ルナが言いました。
「守ろう」
ソラは少し驚きました。
「え?」
ルナは静かに言いました。
「この場所」
「必要な人いる」
ソラは笑いました。
「うん」
サクラも言いました。
「おじいちゃんの桜」
風が吹きました。
桜の花びらが
三人のまわりを舞いました。
まるで桜が
「ありがとう」
と言っているみたいでした。
その夜。
桜の木の下で
三人は
初めて約束しました。
この桜を守る。




