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クラスごと異世界転移したモブの俺、ハズレスキル【無限収納】が覚醒したので異世界で無双します  作者: よるねこ
第一章

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第45話 初めての護衛依頼を終えたと思ったら盗賊の怖さを教えられることになった件


焚き火の火が小さく揺れていた。


夜の森は静かだ。

遠くで虫の声が聞こえ、時々風が木々を揺らす。


見張りの後半。


ユウトは焚き火のそばに座りながら、森の暗闇を眺めていた。


隣ではマリナが剣を膝の上に置いたまま周囲を警戒している。


「……」


しばらく沈黙が続いたあと、ユウトがぽつりと言った。


「昨日の盗賊、思ったより普通でしたね」


マリナが少しだけ首を傾ける。


「普通?」


「なんていうか……」


ユウトは言葉を探した。


「もっと凶悪なのかと思ってました」


「命のやり取りって感じの」


マリナは小さく笑う。


「それは相手によるんでしょうね」


そのときだった。


背後から低い声がした。


「普通だから厄介なんだ」


振り向くと、ダインが立っていた。


見張りの交代時間より少し早い。


ガルドも一緒だ。


ユウトは少し驚いた。


「もう起きてたんですか」


ガルドが肩をすくめる。


「歳を取ると寝付きが浅くなる」


ダインは焚き火のそばに腰を下ろした。


「さっきの話だが」


「盗賊は大きく二種類いる」


レイナもいつの間にか起きていて、毛布にくるまったままこちらを見ていた。


「盗賊って種類あるんですか?」


ダインは頷く。


「ある」


「街道盗賊と街中盗賊だ」


ユウトは少し身を乗り出した。


「街道盗賊っていうのは、昨日のやつらですか?」


「そうだ」


ダインは短く答える。


「街道を移動しながら獲物を探す」


「拠点は持たない」


ガルドが続ける。


「馬や徒歩で移動しながらな」


「旅人や商人を見つけて襲う」


レイナが言う。


「じゃあ、昨日みたいにたまたま?」


ダイン


「そういうことだ」


「その場で獲物を決める」


ユウトは少し考える。


「それなら……」


「そんなに怖くないですね」


ダインは首を振った。


「油断するな」


「数が読めない」


ガルドが言う。


「一度襲ってダメなら別の街道に移る」


「だから捕まりにくい」


ユウトはなるほどと思った。


それからレイナが聞く。


「もう一つは?」


ダインの表情が少しだけ変わった。


「街中盗賊」


ガルドが言う。


「こっちはもっと面倒だ」


レイナ


「どう違うんです?」


ダイン


「街に拠点を持つ」


「酒場、宿、情報屋」


「そういう場所で情報を集める」


ユウトが眉を上げる。


「情報?」


ガルド


「どの商人が金を持ってるか」


「どの冒険者が依頼を受けたか」


「全部な」


レイナ


「うわ……」


ダイン


「そして」


「狙う相手を決めてから襲う」


ユウトは思わず言った。


「それは……」


「嫌ですね」


ガルド


「一度目をつけられるとしつこい」


ダイン


「逃げても追ってくる」


焚き火がぱちりと音を立てた。


しばらく誰も喋らなかった。


やがてユウトが言う。


「……じゃあ」


「新人冒険者って狙われやすいんですか?」


ダインは首を振った。


「いや」


「むしろ逆だ」


レイナが驚く。


「え?」


ガルドが薪を焚き火に入れる。


「新人冒険者は基本的に狙われにくい」


ユウト


「そうなんですか?」


ダイン


「理由は簡単だ」


指を一本立てる。


「まず」


「常に武装している」


ユウトは自分の槍を見る。


確かにその通りだった。


ダイン


「普通の旅人は武器を持っていない」


「だが冒険者は違う」


ガルド


「それだけで襲う側のリスクが上がる」


ダインは二本目の指を立てた。


「次」


「どんなスキルを持っているか分からない」


レイナ


「あ」


ガルド


「これが一番大きい」


「弱そうに見えても」


「一撃で全滅させるスキル持ちの可能性もある」


ユウトは苦笑した。


確かに。


自分のスキルも、知らなければ想像できない。


ダインが三本目の指を立てた。


「最後」


「そもそも金を持っていない」


レイナが笑う。


「それは確かに」


ユウト


「悲しいですね」


ガルド


「新人冒険者は貧乏だ」


「襲う価値が低い」


ダインが静かに言った。


「盗賊は馬鹿じゃない」


「常に考える」


ユウト


「何をです?」


ダイン


「リスクとメリット」


焚き火がまた音を立てた。


「襲う価値があるか」


「襲うのは危険か」


ガルド


「その二つだ」


レイナが腕を組む。


「つまり」


「割に合わない相手は襲わない?」


ダイン


「そういうことだ」


ユウトは少し安心した。


「じゃあ安全ですね」


しかしダインはすぐ首を振る。


「油断するな」


その声は低かった。


「油断していれば」


「普通に襲ってくる」


ガルド


「弱そうに見えたらな」


レイナ


「うわ」


ダイン


「だから冒険者の対策は単純だ」


ユウト


「対策?」


ダイン


「仲間を作る」


「相手より強くなる」


ガルドが笑った。


「それだけだ」


ユウトは少し考えたあと言う。


「……シンプルですね」


ダイン


「生き残る方法は大体シンプルだ」


しばらく沈黙。


レイナが言う。


「でも」


「私たち、仲間多いですよね」


ガルド


「それは強みだ」


ダインも頷く。


「五人パーティはそれだけで狙われにくい」


ユウトは小さく息を吐いた。


「よかった」


レイナが笑う。


「まあ」


「ユウトがいる時点で、変な意味でも目立ってますけど」


ユウト


「?」


「どういう意味?」


レイナ


「酒」


ユウト


「酒?」


マリナが即答した。


「大ありよ」


ユウトは首を傾げた。


「……?」


「何の話です?」


レイナが小さく笑う。


「覚えてないんですね」


ユウト


「?」


「何をです?」


マリナがため息をついた。


「いいわ」


「そのうち思い出すでしょう」


レイナ


「思い出さないと思います」


ユウト


「??」



翌朝。


野営を片付け、商人の馬車は再び街道を進んだ。


それから数時間後。


遠くに街の城壁が見えてきた。


商人が嬉しそうに言う。


「助かった」


「もう安全だ」


ユウトは少し安心した。


初めての護衛依頼。


思ったより気を使う仕事だった。


だが無事に終わりそうだ。


街へ戻ったあと。


レイナが言う。


「今日はお祝いですね」


ユウト


「お酒!」


ダイン


「禁止」


ガルド


「禁止」


マリナ


「禁止」


ユウト


「えぇ……」


初めての護衛依頼は、こうして無事に終わった。

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