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クラスごと異世界転移したモブの俺、ハズレスキル【無限収納】が覚醒したので異世界で無双します  作者: よるねこ
第一章

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第38話 高山薬草の採取に成功したけど思ったより危ない場所だった件


東の空がゆっくりと明るくなり始めていた。


山の朝は早い。


冷たい空気が肌を刺すように張りついてくる。

息を吐くたびに白い霧が広がった。


ユウトたちは斜面を登り続けていた。


足元は岩と土が混ざった道で、普通の街道とはまるで違う。

少しでも気を抜くと足を滑らせそうになる。


ダインが前を歩きながら言う。


「もう少しだ」


ガルドが地形を見ながら頷いた。


「この辺りのはずだ」


レイナが小さく息を吐く。


「思ったよりきついですね」


マリナも剣の柄に手を添えながら周囲を見ていた。


「高山植物ってこんな場所にあるのね」


ユウトは少し前方を見た。


岩の斜面の向こうに、小さく開けた場所が見える。


そこだけ草の色が少し違う。


朝露を受けて白く光っていた。


ガルドが言った。


「……あそこだ」


五人はゆっくり近づく。


斜面を越えると、視界が開けた。


そこには小さな草地が広がっていた。


背の低い草がまばらに生えている。


そしてその中に――


他とは違う草が混じっていた。


ユウトは足を止める。


(これだな)


見た瞬間、なんとなく分かった。


普通の草より葉が細く、先端が淡く光っている。


だが念のため。


ユウトは視線を向ける。


《完全鑑定》


頭の中に情報が浮かぶ。


【月白草】


高山に生える薬草。

解毒薬・回復薬の重要材料。


採取適正時間

日の出〜約一刻。


時間経過により薬効低下。


ユウトは小さく息を吐いた。


(間違いない)


ガルドが慎重に近づく。


「……ある」


その声は、ほんの少しだけ震えていた。


レイナもしゃがみ込む。


「これですか?」


ガルドは頷く。


「ああ」


「月白草だ」


マリナが周囲を見る。


「結構あるわね」


ダインがすぐに言う。


「急げ」


「時間は長くない」


確かにそうだ。


太陽はもうすぐ山の向こうから顔を出す。


ユウトが言った。


「採ります」


ガルドが頷いた。


「頼む」


ユウトは慎重に草へ近づく。


根元を確認する。


薬草は葉だけではなく、根も重要だ。


下手に引き抜くと傷む。


ユウトは手袋をはめて、土を軽く崩す。


静かに、丁寧に引き抜いた。


根まできれいに抜ける。


《完全鑑定》


薬効状態

良好


ユウトはすぐに収納した。


草が消える。


ガルドがそれを見て言う。


「状態は保てそうか?」


ユウトは答える。


「たぶん」


「まだ断定はできませんけど」


ガルドは頷いた。


それ以上は聞かない。


ダインが言う。


「採れるだけ採れ」


「必要数は?」


ガルドが答える。


「三本でいい」


レイナが驚く。


「三本ですか?」


「薬師が言っていた」


「それで十分だ」


だがユウトは首を振った。


「念のため多めに採ります」


ガルドが一瞬驚いた顔をした。


「……そうか」


ユウトは次々に採取していく。


鑑定。


採取。


収納。


鑑定。


採取。


収納。


流れるような作業だった。


レイナが小さく言う。


「すごいですね」


マリナも頷いた。


「見つけるのが早いわ」


ユウトは苦笑する。


「まあ」


鑑定のおかげだ。


だがそれは言わない。


ダインは周囲を警戒している。


その時だった。


ガサッ


斜面の向こうで音がした。


ダインの声が低くなる。


「止まれ」


全員が動きを止める。


レイナが小さく言った。


「何かいます?」


ガルドも弓に手をかける。


数秒。


また音。


ガサガサ。


そして岩陰から姿を見せたのは――


山羊だった。


レイナが小さく息を吐く。


「びっくりしました」


ダインは警戒を解かない。


「山にはいる」


山羊はユウトたちをちらりと見て、そのまま斜面を登っていった。


マリナが言う。


「心臓に悪いわ」


ユウトは笑った。


「確かに」


それでも採取は順調だった。


三本。


五本。


八本。


ユウトは最後の一本を収納した。


「……これで十本です」


ガルドが言う。


「十分だ」


「それ以上は持ち帰っても薬師が困る」


ユウトは頷いた。


「じゃあ帰りましょう」


ガルドが空を見上げた。


太陽が山の向こうから顔を出している。


間に合った。


その瞬間だった。


ガルドの肩の力が、少しだけ抜けた。


ユウトはそれを見て思った。


この人、ずっと緊張してたんだな。


ダインが言う。


「下りるぞ」


「街まで長い」


レイナが笑った。


「今度は下りですね」


ユウトも笑う。


「それも大変そうだ」


マリナが言った。


「でも」


「一番大事な仕事は終わったわ」


ガルドは静かに言った。


「……ああ」


そして小さく続けた。


「ありがとう」


ユウトは少し照れた。


「まだ薬ができるまで分かりませんよ」


それでも。


希望は確かにそこにあった。


五人は山を下り始めた。


ガルドの娘を助けるための薬草を、ユウトの収納の中に入れて。



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